異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し

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第29話

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 ※ガリュウ視点



「……」

 オルトン村にある冒険者ギルド。両手に握り拳を作って窓の外を見やるのは、ギルドマスターで召喚士のガリュウだ。

(おのれ……何故だ……何故やつらは未だに見つからん……?)

 様々な計画を同時に進める中、クルスとユイの二人を取り逃したことで、彼はその行方に関する情報を集めることに余念がなかった。

 だが、喫緊の課題であるにもかかわらず、未だに彼らの手がかりさえろくに掴めず、完璧主義者であるガリュウの焦りや憤りは増すばかりだったのだ。

 そんな切迫感に包まれる状況の中、彼の部屋の扉がノックされる。

「ん、誰だ……?」

「ガリュウ様、お話が」

「おぉ、なんだ、ソフィアか!」

 それまでとは打って変わり、嬉々とした表情でドアを開けるガリュウ。そこには、すらっとしたポニーテールの女性が書類を手に立っていた。

「それで、どうした? やつらが見つかったのか?」

「それが……例の者たちではなく、がいるという情報が」

「……何? やつらではなく怪しい者がいるだと?」

「はい、ガリュウ様、クラインの町で、短時間でEランクからBランクになった猛者が複数いたそうで。この書類に詳しいことが……」

「どれ、見せてみろ」

 ガリュウは女から書類を受け取り、中身を確認する。まもなく、眉間に深い皺を寄せた。

「報告書には二人組ではなく三人組とあるが、この異常な成績はやつらで間違いないな。そうか……どこに潜伏しているのかと思ったら、偽装してクラインの町にいたというわけか……」

「ガリュウ様、彼らの目的は一体なんなのでしょう?」

「それは俺にもわからんが、左列の癖にあれだけの能力を持ったやつらだ。もしエルフの国へ行かれると厄介なことになる」

「つまり、鬼に金棒というやつですか」

「まあそんなところだ。ただ、あの高飛車で純血主義なエルフどもが人間の言うことを素直に聞くとは思えん。もしエメリアのやつが跡継ぎになれば怖いが、万が一にもありえないことだ」

「エメリアとは?」

「この国の王族の血とエルフの血を受け継いでいる少女のことだ。身の毛もよだつような恐ろしい力を持っている。しかし、やつはエルフも人間も同様に激しく憎悪している。やつの心を誰かが開かせることができれば脅威だが、それはまずありえないだろう」

「なるほど。そういえば、ガリュウ様も……あ、いや、失言でした」

「いや、については確かになるべく触れてほしくはないが、お前なら許せる」

「あ、ありがとうございます……。それで、どういたしましょう?」

「そうだな……。万が一のこともある。逃した魚は大きいという言葉もあるように、このまま見逃すわけにもいかん。やつらが我々の力にならないというのであれば、エルフたちの国へ辿り着く前になんとしてでも消すべきだ」

 召喚士ガリュウが強い表情で書類を握りしめる。

「そうなのですね。では、刺客については誰を向かわせましょうか? それとも、私が行きますか?」

「いや、ソフィア。お前はなるべく私の手元に置いておきたい。右列のトップといえるものはもうほとんど売り渡しているのだからな。何かあっても困る」

「……ガリュウ様は、右列を信頼しておられないのですか?」

「そりゃもちろん、信頼などするものか。所詮、やつらは俺にとって都合のいい駒に過ぎない。欲望に忠実だからニンジンをぶら下げて動かすのには便利だが、いつ裏切るかもわからない連中だ。だが、ソフィア。お前は違う。能力もあり、忠誠心も強い」

「……ガリュウ様、照れます」

 言葉とは裏腹に終始無表情のソフィア。

「そうだな。に行かせるか。確か、ちょうどあいつらもクラインの町にいたはずだ」

「あの男女ですか。彼らならばやり遂げるかもしれませんね」

「ソフィア、お前もそう思うか。スキル自体、そこまでではないが、あれほど悪辣な連中はそうはいない。左列を壊滅同然の状態に追いやったのは、ゴブリンなどではなく、あいつらなのだからな……」

 ガリュウの右の口角が僅かに吊り上がった。



 ※ユイ視点



「うう、怖ぁ……」

 クラインの町を発って、しばらく進んだあとのこと。私たちは深い深い森の中へと入ることに。

 ここは、リザードマンを狩りにいったところにある森とはまた別の森なんだ。

 この森をまっすぐ抜けたところにエルフの国があるみたいだけど、普通の森林と違ってとても異様な感じがして、なんか森全体が生きてるっぽい。

 木々の背丈もみんな物凄く高くて、昼下がりなのに夜みたいな薄暗さだから尚更不気味。

 クルスさんが町で道を尋ねるときに私も知ったけど、この先のエルフの国へ向かうのに徒歩だったら十日以上はかかるんだって。

 どれだけ広大な森なの、ここ……。もしウィングブーツがなかったらと思うとゾッとする。

「ヒャアアアァァッ」

「ひゃっ……⁉」

 しかも、時々悲鳴みたいな声(風の音?)がどこからともなく聞こえてくるし、盾のペンダントの効果の半透明の結界が定期的に発動してるし……。

 一体何に反応してるのかって思ったら、よく見ると植物が種で攻撃してるのがわかってびっくりした。

 まるで弾丸みたいに勢いよく飛んでくる。うわぁ、当たったら痛そう――

「――いたっ……!」

 って、早速自分のお尻に当たってるし! もー、なんで私ばっかりこんな目に遭うの……? こういうのって今に始まったことじゃないけど……。

「ユイ、大丈夫?」

「ユイ、大丈夫か?」

「……だ、大丈夫です。なんか、にぶつかっちゃったみたいで……!」

 なんか気まずかったので、私は虫に当たったってことにしてごまかした。

 種自体そんなに頻繁に飛び交ってるわけじゃないし、当たってもそんなに痛くなかったから。

 自分のステータスを見たら、ダメージだってHPが1ポイント減ってるだけだったけど、盾のペンダントの効果がなかったらやばかったかも……。

【観察眼】で周囲を調べてみると、木々や植物たちの中にモンスターが紛れてて、枝やツルがうねうね動いてて死ぬほど不気味だった。気持ち悪いのに何故か見ちゃう。

 種で獲物を攻撃して弱らせたあと、ツルを伸ばして捕まえて栄養を取るみたい。

「……ひ、ひいぃっ……」

 好奇心で目線をちょっと下にずらしてみると、私は軽く悲鳴を漏らしてしまった。白骨死体が幾つも見えるから怖すぎ。

 なので、私はクルスさんの背中を追うのに必死だった。半径2メートル以内じゃないと盾のペンダントの恩恵にあやかれないし、それに……。

 サクラさん、クルスさんの隣でずっとべったりだし、何かひそひそと笑顔で喋ってるし、悔しい。私も負けてられない!

 っていうか、いつの間に飛行するのがあんなに上手になっててるの。なんで? どうして? これが才能の違いってやつかな……?
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