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第1話

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「来い来い来い来い……」

 ぼっちで派遣社員の僕は、今日も一人で自宅に籠もってスマホゲームにのめり込んでいた。

 あーくそ、また10連ガチャが外れたか。本当にあの武器は出るのか? 細工されてるんじゃないか? 画面を睨みつけながらそう疑っていた矢先、ようやく望みのものが出た!

「来たっ! よーし! これで無双できるぞ……」

 と思ったら、まばゆい光に包まれた。な、なんだ……⁉

「うあっ……?」

 気付けばそこは神殿の廃墟跡みたいなところで、周囲には広大な緑が広がっていた。え、何ここ……。しかも僕以外にも大勢の人たちがいるし。ざっと見ても数百人はいる。

 さすがに夢だよなあって思うも全然覚める気配がないし、僕みたいに周りをキョロキョロと見回してるのが多い。

 試しにスマホでネットを閲覧しようとしたらできなかった。電話しても圏外だ。

 これって、もしかして異世界転移ってやつなのかな……? ライトノベルでよく見る定番のものだけど、まさかそれが本当に起こるなんて……。

「えー、召喚された皆さん、突然のことに困惑しているでしょうが、とりあえず何も言わず、私の前に並んでください。一人ずつ、スキルを付与しますので」

 いかにも神父さんらしい格好の人が、そんなことを宣言したもんだから、肩がビクッとなるほど周囲は一層どよめいた。

「お前たちを召喚した理由なら、あとで教えてやる。いいか、ちゃんと神父の前に並べよ。並ばなきゃスキルは貰えないからな」

 その隣には長身の貴族っぽい男性がいた。格好的にはどう見ても異世界人で、腕組みしながら僕たちに向かって不敵な笑みを浮かべている。あの高圧的な感じの人が僕たちを召喚したんだな。

 僕たちを召喚した理由はあとで教えてくれるらしい。どうして今じゃダメなんだろうか。怖くて聞けないけど。

 神父さんは何故か顔色が悪くて浮かない顔だったけど、そんなことは知ったことかとばかりみんな神父さんの前に並び始める。当然、僕もその中の一人だ。

 本当に異世界へ来たのなら、スキルの当たり外れが今後の運命を握るだろうね。そう思うと急に胸のあたりが締め付けられるかのようだった。普段からゲームでもガチャを外しまくってるだけに、不安しかない……。

「すげー」

「ここって異世界なんだろ?」

「オタクがよく見てる、ライトノベルっていうの?」

「そーそー」

「異世界召喚なら、魔王討伐のためなのかしら?」

「じゃあ、スキルだけじゃなくてステータスとかレベルとかもあるのかな? 楽しみ!」

「……」

 次第に慣れてきたのか、僕の前後にいる人たちが興奮気味に喋り始めた。

「ねーねー、神父さーん、スキルって一人一個ずつもらえるんですかー?」

 誰かが手を上げて質問すると、神父さんは男の顔色を窺ってからこちらを向いた。どうやら権限をかなり制限されてるっぽい。何か弱みでも握られてるんだろうか?

「えーとですね、一人一個の可能性もありますが、場合によっては二つ以上貰える可能性もあります。その人のです」

「わお」

「二つもかよ、それはすげーな!」

「俺はレアスキルを貰い、この異世界で生きていく!」

「わははっ!」

「……」

 みんなよくあんなに喋れるなあ。僕なんて緊張しっ放しで一言も話せそうにないのに。

「でもさぁ、もし貰えるスキルが一個だけだったらどうするー?」

「むしろ、一個でもレア度が高ければいいんだけどな」

「それな!」

「笑う門には福来る。よって、陽キャにはレアスキル。陰キャには外れスキル!」

「そこにいる、いかにも陰キャっぽいやつのことかー⁉」

「ギャハハ!」

「……」

 多分僕のことだろうなって思うけど、見たら『おいお前、睨んだな』って絡まれそうだから見ないでおく。

 なんかもう、現実世界の人気店に行列してるみたいな空気になっちゃってるね。

 あと、知り合い同士で転移した連中も多いようだ。

 そう考えると心細くなるけど、僕はぼっちだからどうしようもない。っていうか、べ、別に一人でも構わないしね! こんなところまできて陰キャだとバカにされるのは癪だけどさ。

「よっしゃー、スーパーレア来たー!」

「げげげー、ノーマルスキル二個かよぉー⁉」

「私、レアスキル一個だけ……」

「……」

 神父さんからスキルを受け取って歓声を上げる者、ガッツポーズする者、落胆する者、まさに十人十色だ。

 全部で数百人はいるっぽいけど、スキルの付与はサクサク終了し、とうとう自分の出番が回ってきた。

 つ、遂に僕の出番だ。あー、緊張しまくりだ。どんなスキルを貰えるんだろう? 深呼吸しないと。すーはー、すーはー……。

「あなたのお名前はなんですか?」

「……ぼ、ぼ、僕は、く、来栖海翔《くるすかいと》です……!」

「わかりました……。クルスさん、たった今付与しましたよ。あなたのスキルは、スーパーレアスキルの【互換】と、レアスキルの【HP100】です」

「……ど、どどっ、どうも……!」

 あっけなくスキル付与が終わってホッとする。スーパーレアのほうはそこそこの当たりかも? もう一方のほうはただのレアだからいまいちっぽいけど。

「『ステータスオープン』と唱えることで、自分の情報を見られますよ」

「ど、どうも……!」

 神父さんに笑顔で言われて、僕はそこでようやく少しだけ緊張が解れた気がした。やっぱりその呪文なんだなって。

「ス、ステータス、オーペン」

 なんか微妙に間違っちゃったけど、その途端透明な窓が出てきた。


 変動ステータス

 名前:来栖 海翔
 性別:男
 レベル:1

 HP:100/100
 SP:5/5
 腕力:1
 俊敏:1
 器用:1
 知力:1
 魔力:1

 固定ステータス

 才能:B
 人柄:A
 容姿:C
 運勢:B
 因果:C

 スキル:【互換】【HP100】


 なんだこりゃ? 変動ステータスと固定ステータスってのが出てきた。ほかのはなんとなくわかるけど、因果ってのはなんだろう? 詳細が知りたいと思ってると説明が出てきた。おっ? ってことは、【互換】っていうのはは鑑定系スキルなのかな。

 因果:前世や過去に自身が行ったことの報いを、現在において良い意味でも悪い意味でもどれだけ受けるかを意味する。

 なるほど。要するにってやつね。この調子で二つのスキルを調べてみよう。

【互換】:SRスーパーレアスキル。1.鑑定ができる。2.ステータスを一種類のみ入れ替えることができる(レベルは除く)。

【HP100】:レアスキル。HPが100になる。

「……」

 ふむふむ、なるほど……ん、待てよ、ステータスを入れ替えるだって? 一種類のみってことだけど、これって使いようによっては物凄いことになりそうな。いや、僕の気のせいかもしれないけど……。
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