上 下
20 / 32

20.実力者たち

しおりを挟む

「バッ……バカなっ……そんなはずはっ……! やつが生きているはずはない……!」

「そっ……そうだよぉ……! これはあれだよっ! いわゆる、断末魔の悲鳴みたいなものに決まってるんだからぁっ……!」

「……グッ……グルルァッ……!」

 あれはもうこの世に存在しない、存在するはずがない……そう主張するようにその場を動こうとしないエギルたちだったが、まもなく大きな何かが炎を纏いながらゆっくりと現れることになる。それは紛れもなく、炎上するカフェの中に取り残されていたオーガだった。

「熱い、熱い、なんてことしてくれるんだい……」

「と……ととっ、とどめだっ……!」

 エギルが剣を振り被り、オーガ目がけて駆け寄るとともに振り下ろすも、片手で受け止められた挙句、真ん中からぐにゃりと折り曲げられてしまった。

「ひっ……ひいいぃいっ!」

「にっ、逃げるよぉっ、グルドッ!」

「オオォオン!」

「ス、ステファー、グルド! ま、待つのだっ!」

「ほらほらっ、こいつを忘れてるよ、持って帰りなっ……!」

 オーガが倒れたビスケスを持ち上げて放り投げると、それは小石のように軽々と飛んでいくのであった……。



 ◇◇◇



「「……」」

 ダミーとして作っておいたカフェの様子を、少し離れた場所から覗いてたわけなんだけど、本当に凄い戦闘能力だから見応えがあった。さすがオーガ子だね……。

 元々オーガは火にそこそこ強いこともあって、彼女に関連掘りをすることによって出した【火耐性】スキルがあったおかげで、そこがさらに強化された格好なんだ。だからあれだけ燃え盛っても平気でいることができる。

「オーガ子さん、お疲れ!」

「お疲れ。よくやってくれたわね、オーガ子――」

「――フーッ」

「「ゴホッ、ゴホッ……!?」」

 僕とアリシアはオーガ子からいきなり煙草の煙を吐きかけられた。上機嫌そうに見えたのに……。

「アハハッ……! 正直、炎に包まれたときはヤバッって思ったけど、あんたから貰ったスキルのおかげで助かったよ」

「そ、それはよかった……。でも、これで終わりじゃないと思う。あいつらってしつこいから、絶対リベンジしてくるよ」

「だったら追い返してやるだけの話さ」

「頼もしい……ね、アリシア」

「ま、まあ、ちょっとはね……」

「ただ……前も言ったと思うけど、あたいのことを完全な味方だとは思わないことだね。同盟関係ってことで今は協力してやってるけども、こっちとしてはなるべく自由な身でいたいからさ……隙があったら襲いかかって、生きたまま食ってやるから、そのつもりでいなっ!」

「ひっ……! わ、わわっ、わかったよ、オーガ子さん。でも、ありがとう。あいつらを追い払ってくれただけじゃなくて、忠告までしてくれて」

「わざわざご忠告ありがとね、オーガ子……」

 僕とアリシアの感謝の言葉に、オーガ子はなんとも苦々しい笑みを浮かべてみせた。

「フンッ……なんか期待されまくってるのがわかるから、人間如きが勘違いしないように念押ししてるってだけの話しさ。じゃなきゃ、居心地が悪いったらありゃしないからねえ……」

「「あはは……」」

 こりゃ、アリシア以上のツンデレキャラだね。デレたら違う意味で怖そうだけど……。

「ただいまあっ!」

「あ、司祭様、おかえりなさい!」

「司祭様、おかえりー」

「ふふっ……お二人ともお利口さんにしてましたかあ……って、はぁ、おかえりって言っていただけないんですかぁ――?」

「――フーッ……!」

「「……」」

 うわぁ……オーガ子が司祭様に近付いたかと思うと、大量の煙を吐きかけてしまった。これはさすがに大ダメージだろうね……。

「はっ、勘違いすんじゃないよ、このタコ」

「ふふっ……」

「「「えっ!?」」」

 僕たちはオーガ子を含めて驚いていた。なんと、司祭様はあれだけの煙にまみれたのにノーダメージだったのだ。もしかしたら、薪とかよくくべってるのを見るし、それで慣れてるのかも……。

「おいたはメーですよぉっ。ではではっ、お風呂とお食事の準備をしてきますねぇ……」

「「「……」」」

 なんていうか、司祭様もオーガ子並……いや、それ以上のボス的存在なんだと、僕はそのとき確信したのだった……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。

名無し
ファンタジー
 ある日、勇者パーティーを追放された召喚術師ディル。  彼の召喚術は途轍もなく強いが一風変わっていた。何が飛び出すかは蓋を開けてみないとわからないというガチャ的なもので、思わず脱力してしまうほど変なものを召喚することもあるため、仲間から舐められていたのである。  ディルは居場所を失っただけでなく、性格が狂暴だから追放されたことを記す貼り紙を勇者パーティーに公開されて苦境に立たされるが、とある底辺パーティーに拾われる。  そこは横暴なリーダーに捨てられたばかりのパーティーで、どんな仕打ちにも耐えられる自信があるという。ディルは自身が凶悪な人物だと勘違いされているのを上手く利用し、底辺パーティーとともに成り上がっていく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

処理中です...