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50話 罰
しおりを挟むあれから俺たちは宿舎へと戻り、食卓に集まっていたみんなの前でリーダーのジラルドに今までの経緯を全てを伝えた。
かなり緊張するかと思ったが、そうでもなかった。みんな特に驚いた様子もなく、うなずきつつ淡々と聞いてくれて、こうなることを初めからわかっていたかのようだったからだ。ごまかせてたつもりだったが、薄々気付かれてたのかもな。
とはいえ、マブカを除いてはいつもと比べると表情が暗い感じだから、おそらく話が終わったあとパーティーからの追放を言い渡されるのだろう。仮にそうなっても文句は言えない。認識の甘さが大火事につながってしまったわけだから……。
「――カレル……正直、僕たちは君が何かを隠していることを知っていた」
「……」
やっぱり知ってたんだな。なのに、隠そうとするなんて愚かだった。ジラルドはいつもの温和そうな表情だったが、口調は重々しくて冷たいものだった。温厚な彼がこうなるわけだから、相当に怒ってるんだろう……。
「誰かに暴行を受けたこととか、怪我の具合なんか見なくても表情で察することができるんだ」
さすが、彼は上級パーティーのリーダーなだけある。もっと側にいて色々学びたかったが、追放されても感謝の言葉は忘れないつもりだ。
「私も、なんとなく察してたわっ」
「ファリム、嘘つくんじゃないよ。コレットと喧嘩したんじゃないかとか言って、チャンスとか抜かしてたくせにさ」
ん……? またファリムとルーネの喧嘩が始まってしまったようだ。
「ちょっと! それ言っちゃうわけ……? ルーネだって、カレルが悪いもんでも食べたんじゃないかって見当違いなこと言ってたくせに!」
「そ……それは、メンバーとして純粋にカレルを心配してたからさ! あんたみたいに隙あらば横取りしようとする腹黒チビと一緒にするんじゃないよ!」
「はあ!? 豚の発想が的外れだったからってキレないでよ!」
「「ムキイッ!」」
「……」
あれれ。なんかいつもと同じ空気になってきたと思ったら、ジラルドがやれやれといった表情で頬を掻いた。
「まったく……ちょっとは引き締めようと思ってたのに、続かないなあ……。まあ、カレルもコレットも反省したと思うし、これくらいでいっか……」
「「えっ?」」
俺とコレットの上擦った声が重なる。
「リーダー……重大なコンプライアンス違反の罰は……?」
「ないんですか……?」
「それでしたら、もうこの薄暗い雰囲気の中にいることで充分受けていると思われます」
マブカの一言ではっとなる。まさか、それでこんな重めの空気だったのか……。
「今回、カレルたちがほかのパーティーとの揉め事を隠したのも、僕たちのパーティーに迷惑をかけたくないっていう気持ちがあったからだろうしね。それでも、今度同じことをしたら許さないけど……」
「「はい……」」
俺たちはリーダーとメンバーに向かって深く頭を下げる。
「申し訳ありませんでした……」
「ごめんなさい……」
「あははっ。ほかのメンバーもこれくらいしおらしかったらいいのに……って、冗談冗談! そんなに睨まないでえっ!」
「……」
相変わらず既存のメンバーには頭が上がらない様子のジラルド。
「それにしても、カレルの話に出てた幼馴染たちは許せないわね。広告で嫌がらせするとか、陰湿極まりないわ……」
ファリムがむっとした顔で頬を膨らませている。まあ、あいつらがここまでやるとは思わなかったけど、追い出したやつが格上パーティーの《ゼロスターズ》に所属してるってことがそれだけ許せなかったのかもな。
「だったらさ、こっちも広告でやり返してやろうじゃないのさ。目には目を、だよ!」
「わたくしは外道と同じレベルに落ちるのは納得できません」
「う……」
マブカの鋭い発言でルーネが青くなり、ファリムとリーダーが苦笑していた。
「んー……生意気かもしれないけど、俺の意見を言ってもいいかな?」
俺の言葉に対し、この場にいる全員がうなずいた。これから俺が説明する復讐方法なら、みんなもきっと納得してくれるはずだ……。
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