外れスキル【釣り】で大物が釣れた件。

名無し

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36話 急所

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「――それ、今だ、コレット!」
「はい、カレルさんっ!」

 俺が弓矢を当てつつ大量に釣ってきた、重そうに岩を担いだゾンビ姿のエンシェントワーカーの行列に対して、助走をつけていたコレットが勢いよく槍を突き刺した。

『『『グギギッ……!』』』

 ただでさえ鈍いやつらが串刺し状態になって動けなくなり、徐々に消えていく。

 モンスターにはいずれも属性や弱点、さらには急所があり、こいつの場合は闇属性だから光属性攻撃を浴びせるのが一番なんだが、それがない場合は急所を突くのが効果的なんだ。エンシェントワーカーの場合は腰がそれにあたる部分で、コレットが上手く槍で腰を突いてくれたのでこうしてすぐ倒せたというわけだった。

「なんか串刺しにするとゾンビでも食い物みたいだな」
「……うぅ、その割に全然美味しくなさそうです……」

 食いしん坊のコレットもさすがにお手上げの様子。とにかくこれで三十匹倒したので討伐数のノルマを達成できた。スピードはなくともタフだというモンスターの中でも一番弱くてすぐ死ぬらしいから楽ではあったが、これからどんどん難しくなっていくんだろう。

 それでも、初級ダンジョンは全てのモンスターの攻略法が既に広く出回っていて、俺もリーダーから聞いていたこともあり、戦いに慣れ始めると実際にあっさり倒せるもんだから、今や重圧より楽しさのほうが上回っていた。外れスキル持ちは弱いからダンジョンに通う資格なんてないんだと勝手に決めつけていたが、スキルに頼らなくても充分にいけるとわかって緊張感も大分解れてきたんだ。これが中級、上級ダンジョンだとそうはいかないんだろうけどな……。

「あ、なんか落ちてますよ、カレルさん!」
「おっ……」

 コレットが何かを拾った様子で、嬉々とした顔で駆け寄ってきた。彼女の両手の中を覗くと、ぼんやりと赤く光る小石があるのがわかる。

「これ、なんでしょう?」
「……多分、魔想石ってやつじゃ?」
「魔想石?」
「ああ。確かパーティーリングとかがこれで作られてるみたいだ」
「へえー、カレルさんは詳しいですね! さすが学長の息子さん!」
「……覚えてたのか。そんなの関係ない関係ない」
「ツンデレさんですね!」
「……」

 俺が学長の息子であることはまったく関係ない。興味もあったしダンジョンに関する知識は割と持ってるんだ。忘れてることも多いが……。

「これ、どうしましょう?」
「滅多にドロップしないらしいし大事にしろよ」
「えっ、貰えるんですか?」
「売ったら結構なお金になるみたいだけど、今の俺達には必要ないし……コレットにやるよ」
「わーい! ありがとうですっ!」
「……」

 コレットが飛び跳ねて喜び始めたもんだから、ちょっと可愛いと思ってしまった自分が悔しい……。



『……ガァァ……』

 次に俺たちが狙う標的はスケルプリズナーだ。右手と左足にそれぞれ血塗られた鉄球と足枷をつけたスケルトンで、全体的な動きはエンシェントワーカーよりは速いが、鉄球を振り上げる攻撃動作もぎこちないし、集めすぎなければ余裕で処理できるレベルだった。たまに立ち止まって急所である口を開くため、そのタイミングで矢か槍を口内に命中させるだけで倒すことができた。ノルマの二十匹討伐も完了し、その上青い魔想石までドロップしたのでホクホクだ。

「……あうっ!」

 それもコレットにプレゼントしたらやはり飛び跳ねて喜んだわけだが、その際に足首を痛めたっぽいので休憩場所を探すことにした。

「全然大丈夫ですってばー!」
「一応だ一応。悪化したら大変だろ? それに、俺も少し疲れたしな」
「……本当ですか?」
「本当本当」
「怪しい……」
「……」

 まあコレットは本当に軽傷っぽいが、俺も疲れ気味であることは確かだしちょうどいい。それに今の俺たちは別に強いってわけでもなんでもないんだし、大袈裟だとしてもちょっとした綻びすら見逃さないようにしないと、それが大きくなって致命傷になることだってあるかもしれないからな。命は俺たちが何より大事にしなければならないものだ。

「――お……」

 広い場所の脇にある細い道をしばらく歩いてたら、横に大きな部屋があって奥には水溜まりができていた。確か水場近くにはモンスターが発生しないそうだからいい休憩場所になりそうだ。
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