28 / 66
二十八話 道具屋のおっさん、手応えを得る。
しおりを挟む「おいおい、おめぇたち、この剣が何か知らねぇのか? かー、遅れてんなぁ……」
「「「へ?」」」
迅雷剣を見せびらかしてやると、やつら全員きょとんとした顔を見せた。なんだよこの示し合わせたかのような同じ反応。顔は似てないがマジで兄弟かなんかか?
「おめぇらよぉ……迅雷剣って知らねぇのか? これすんごく強力な剣でよぉ、オラが振るだけで強力な雷が出ちまうんだ……」
「「「ひっ!」」」
やつら、怯えた顔で抱き合ったかと思うと、一人がはっとした様子でエレネにナイフをあてがった。遅い遅い。電撃を食らわせようと思えばできていたぞ。
「は、はったりだ……! 俺はそんな剣なんか知らんぞぉ……!」
「そ、そうだぁ。兄貴の言う通り、言う通りなんだぁ。うぅっ」
「う、撃てるもんなら撃ってみやがれカマ野郎! おいら、こいつが死んじまっても知らねえからなあ!?」
三人ともガタガタと震えながらナイフをエレネに向けてる。なのにエレネのやつニヤニヤしてるんだから凄い。こいつらの慌てぶりが面白いんだろう。
「そっか。じゃあ死んでくれや」
「「「ひぃ!」」」
やつら、俺が笑みを浮かべながら迅雷剣を振りかぶると、自分だけは死にたくないと思ったのか散り散りになった。
「エレネ、戻ってこい」
「はーい」
「……ほら、おめえら早く逃げろよ。三人ってことで三秒だけ待ってやっからよ。いーち、にいぃ……」
「「「――ぎゃああああああああぁぁ!」」」
あいつらが全員背中を向けたところで、迅雷剣を振って即死させてやった。焦げくせぇなあ……。
「……もしもし……」
「……へ?」
すぐ後ろにあのハーフエルフが立っていた。お、おいおい、いつの間に……。物欲しそうに迅雷剣を見つめてるかと思うとひざまずいてきた。
「是非……是非その剣を私にお譲り頂きたい。私にできることであればなんでもするゆえ……」
「そう言われてもなあ……」
とりあえず、大きく実った二つの果実を両手で揉む。今までの恨みの分だ。
「ん、んう……こ、これだけでいいのだろうか……」
「んー、これだけじゃちょっと足りないかなあ。できれば、お尻も……」
「で、では、どうぞ……」
素直にお尻を向けてくるところがちょっと可愛かった。しかしなんとも良い形をしているな。何度触っても飽きそうにない。エレネを見るとつんとした顔で視線を逸らされた。ウサビッチの嫉妬か。可愛いもんだ……。とりあえず今はこいつに集中だ。
「なでなで、なでなで……」
「……うっ、く……」
感度いいなあ。さすがはハーフエルフ。そういうところもレベルが高いんだろう。
「……も、もうそろそろよいだろうか……」
「ん? ああ。でもなんでこの剣を欲しいのか聞きたいかなぁ。股間の剣ならいつでもやれるが……」
「……それなら、場所を変えてもよろしいだろうか」
「あ、ああ」
まあ夜まで時間あるからいいか。っと、その前に迅雷剣で試し撃ちさせてもらおう。痴漢に夢中になりすぎてて本来の目的を忘れてしまっていた……。
「おっとっと!」
「ぬう?」
派手に転ぶ振りをして、ハーフエルフに向かって迅雷剣を振った。
「……ぬぅ。だ、大丈夫か?」
「あ、ああ」
俺に手を差し伸べてるが、若干顔をしかめてる。少しは効いたようだな……。エレネもうなずいていた。この調子でレベルを上げていけば近いうちに降参(クッコロ)させることができそうだ。
※※※
「この辺に家が?」
「……」
このハーフエルフのメスガキ、歩くのに夢中なのか俺の声にすら反応せずどんどん前に行くし、それがやたらと速いしでこっちは追いつくのに必死だった。お尻振り振りして歩いてるところは魅力的だが、なかなか追いつけないから腹立つなあ。あー早く触りたい……。
「――到着した」
やつは蔦まみれの邸宅前で急に立ち止まったが、俺がわざと覆いかぶさってもびくともしなかった。もちろんどさくさに紛れて尻と乳を揉むことも忘れない。
「う……あ、あの、到着……ん……」
「あ、わりーわりー。ついつい……」
「……お、お気になさらぬよう」
こいつ、満更でもなさそうだしエレネ同様絶対ビッチの素質あるな……。
「も、モルネトさん、私ちゅーしたいです……早くちゅーください……」
「……ちっ、しょうがねえなあ。ブチュッ」
「ちゅー……んう……」
エレネがしゃがみこんでいじけてたから仕方なく口づけしてやった。さらにデェエキも注いでやる。凄く満足そうにしてるな。充電してやったからこれでしばらく大丈夫だろう。
「お二人とも、お入りを」
「「あ……」」
錆びた鉄柵越しにハーフエルフに手招きされて中に入ったわけだが、室内はそこそこ広いものの本当に住めるのかどうかすら怪しい廃屋みたいなところだった。
「こんなところに住んでるのか……」
「ちょっとボロボロですね……」
いや、エレネ。ちょっとどころじゃないぞ。天井には幾つも亀裂が入ってるし、床は歩くたびに軋むし、壁に掛かった絵画やシャンデリアさえ大きく傾いてるし、今にも崩れそうなボロ屋敷だ……。
「こちらへ……」
ハーフエルフが燭台を手に、ロビーの床の一部を開けた。なんだ、地下室があるのか……。
――説明を聞いてみたんだが、誰も住んでない廃屋のように見えるのは防犯のためのカモフラージュで、地下にこいつの本当の部屋があるらしい。要するに隠れ家ってわけだ。こんだけ強いなら襲われても大丈夫そうだけどな。妙に用心深いやつだ……。
しかもすぐ部屋に辿り着けるわけじゃなくて、そこから長ったらしい階段を下りる必要があった。
「ずいぶん用心深いんだな」
「……」
な、なんだ。俺の声に反応したのか振り返ってきたんだが、蝋燭の灯りに照らされたハーフエルフの顔、まるで生気がなかった。
「ど、どうしたんだ?」
「……ここが私の部屋だ……」
お、ようやく着いたのか。重厚な扉が軋みを上げて開かれていく……。
……って、な、なんだこの部屋……。
1
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~
名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる
名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。
冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。
味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。
死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。
名無し
ファンタジー
ある日、勇者パーティーを追放された召喚術師ディル。
彼の召喚術は途轍もなく強いが一風変わっていた。何が飛び出すかは蓋を開けてみないとわからないというガチャ的なもので、思わず脱力してしまうほど変なものを召喚することもあるため、仲間から舐められていたのである。
ディルは居場所を失っただけでなく、性格が狂暴だから追放されたことを記す貼り紙を勇者パーティーに公開されて苦境に立たされるが、とある底辺パーティーに拾われる。
そこは横暴なリーダーに捨てられたばかりのパーティーで、どんな仕打ちにも耐えられる自信があるという。ディルは自身が凶悪な人物だと勘違いされているのを上手く利用し、底辺パーティーとともに成り上がっていく。

転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる