60 / 66
六十話 道具屋のおっさん、良いことをする。
しおりを挟む
「おっ……」
ダメ元で待ってたんだが、駅に馬車がやってきた。ん、窓のところが焼け落ちてるな。例の家族が降りてくるも、いつもと全然違ってどんよりしている。
「吾輩の可愛いリューク、しっかりするんだ……!」
「わたくしのリューク、しっかりするザマス……」
「……う、うぅ……」
どうやらデブガキが重傷の様子。包帯で頭をぐるぐる巻きにしてるし、多分アルタスの放った火の玉に巻き込まれた形なんだろう。
今まで散々殲滅しといてあれだが、そこそこ愛着も湧いたからな。たまには助けてやるか……。
「ミヤレスカ、デブガキに特別なヒールをしておやりなさい」
「あ、はいですわ! エクストラヒールッ!」
「――う? とーちゃん、かーちゃん……」
「「おおっ」」
デブガキが目覚めて両親が喜んでいる。
「吾輩の息子を治していただいてありがとうございます……って、あなたはよく見たら僧侶ミヤレスカ様ではないですか!?」
「ほ、本当ザマスか!?」
シルクハットと片眼鏡がよく似合う父親と、化粧の濃い縦ロールヘアの母親がミヤレスカに顔を近付けている。二人とも視力が滅法悪そうだな……。
「ですわよー」
「「では勇者様ご一行!?」」
「ああ、そうだ」
まあいいや。俺たちが勇者パーティーってことでなんの問題もないだろう。そもそもクリスたちだって偽勇者パーティーだったわけだからな……。
「おっす、オラが勇者クリス、そこのハーフエルフが戦士ライラ、んでちょっとガキっぽい兎耳の子が魔術師アルタス、最後にみんなのアイドル僧侶ミヤレスカってわけだ」
「「「おおおっ……」」」
家族三人、目を輝かせてる。こいつらを見てるとつい殲滅したくなるが我慢我慢……。
歯軋りしながらやつらを見送ったあと、俺たちは馬車に乗り込んだ。最後の最後までしつこく手を振ってくるから、しまいにゃ殺そうかと思ったが、もうループしないから我慢してやったんだ。
「おい御者の爺さん、武器屋『インフィニティ・ウェポン』へ急げ! あと、これ飲め!」
エリクサーを爺さんに無理矢理飲ませる。ループから外れるからこれ一回きりだが、どうせこんなの持ってたって使わないしな。
「ごくっごくっ……! う……うおおおおぉぉぉぉおおおお! ハイヤアアアァァァァアアアアアアッ!」
相変わらず良い飛ばしっぷりだ。
「今日のモルネトさん、なんだか優しいですね。善人さんです……」
「あぁ? 善人だと……? ファッキュー、ぶち殺すぞウサビッチ……」
「ご、ごめんなしゃいっ……」
俺が拳をゆっくり頬にめり込ませてやると、エレネは途端に目をトロンとさせた。こっちも好きでやってるわけじゃないからな。たまには善行をしとかないと、また善人モルネトが騒ぎ始める可能性もある……。
「モルネトどのには何か深い考えがおありなのだ、エレネどの……」
「はぃ、リュリアさん……」
「ああ、リュリアはちゃんとわかってるな」
「「ちゅうぅ……」」
「うぅ……」
リュリアとのキスをエレネがじっと羨ましそうに見てる。これも教育の一環なのだ。
「ほら、ミヤレスカ。お前にも俺の唇をやろう」
「嬉しいですわ……」
「「ちゅー……」」
「ぐすっ。ひっく……」
とうとうエレネが泣き始めた。
「酷いです……モルネトさん……私も欲しいです……」
「しゃあねえなあ。じゃあやるよ」
「……はぃ」
「「ちゅううぅぅぅうう……」」
エレネのやつが放してくれない。まったく、とんだウサビッチだ……。
「――着きましたじゃ!」
「お、さすが早いな」
「元気ムンムンですじゃああぁぁ!」
……御者の爺さん、見事に勃起してるな。ズボンが破れそうだ。
「おい、お前ら、爺さんの頬にキスしてやれ」
「「「ちゅっ!」」」
「ふぉ、フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッ! みなぎってきたあぁああああ! ナンパしてきますじゃあああああぁぁあぁぁぁぁああぁあ!」
「……」
爺さん、鼻血を噴き出したかと思うと、辛抱堪らんといった様子で馬車を出したわけだが、元気いいなあ……。
ダメ元で待ってたんだが、駅に馬車がやってきた。ん、窓のところが焼け落ちてるな。例の家族が降りてくるも、いつもと全然違ってどんよりしている。
「吾輩の可愛いリューク、しっかりするんだ……!」
「わたくしのリューク、しっかりするザマス……」
「……う、うぅ……」
どうやらデブガキが重傷の様子。包帯で頭をぐるぐる巻きにしてるし、多分アルタスの放った火の玉に巻き込まれた形なんだろう。
今まで散々殲滅しといてあれだが、そこそこ愛着も湧いたからな。たまには助けてやるか……。
「ミヤレスカ、デブガキに特別なヒールをしておやりなさい」
「あ、はいですわ! エクストラヒールッ!」
「――う? とーちゃん、かーちゃん……」
「「おおっ」」
デブガキが目覚めて両親が喜んでいる。
「吾輩の息子を治していただいてありがとうございます……って、あなたはよく見たら僧侶ミヤレスカ様ではないですか!?」
「ほ、本当ザマスか!?」
シルクハットと片眼鏡がよく似合う父親と、化粧の濃い縦ロールヘアの母親がミヤレスカに顔を近付けている。二人とも視力が滅法悪そうだな……。
「ですわよー」
「「では勇者様ご一行!?」」
「ああ、そうだ」
まあいいや。俺たちが勇者パーティーってことでなんの問題もないだろう。そもそもクリスたちだって偽勇者パーティーだったわけだからな……。
「おっす、オラが勇者クリス、そこのハーフエルフが戦士ライラ、んでちょっとガキっぽい兎耳の子が魔術師アルタス、最後にみんなのアイドル僧侶ミヤレスカってわけだ」
「「「おおおっ……」」」
家族三人、目を輝かせてる。こいつらを見てるとつい殲滅したくなるが我慢我慢……。
歯軋りしながらやつらを見送ったあと、俺たちは馬車に乗り込んだ。最後の最後までしつこく手を振ってくるから、しまいにゃ殺そうかと思ったが、もうループしないから我慢してやったんだ。
「おい御者の爺さん、武器屋『インフィニティ・ウェポン』へ急げ! あと、これ飲め!」
エリクサーを爺さんに無理矢理飲ませる。ループから外れるからこれ一回きりだが、どうせこんなの持ってたって使わないしな。
「ごくっごくっ……! う……うおおおおぉぉぉぉおおおお! ハイヤアアアァァァァアアアアアアッ!」
相変わらず良い飛ばしっぷりだ。
「今日のモルネトさん、なんだか優しいですね。善人さんです……」
「あぁ? 善人だと……? ファッキュー、ぶち殺すぞウサビッチ……」
「ご、ごめんなしゃいっ……」
俺が拳をゆっくり頬にめり込ませてやると、エレネは途端に目をトロンとさせた。こっちも好きでやってるわけじゃないからな。たまには善行をしとかないと、また善人モルネトが騒ぎ始める可能性もある……。
「モルネトどのには何か深い考えがおありなのだ、エレネどの……」
「はぃ、リュリアさん……」
「ああ、リュリアはちゃんとわかってるな」
「「ちゅうぅ……」」
「うぅ……」
リュリアとのキスをエレネがじっと羨ましそうに見てる。これも教育の一環なのだ。
「ほら、ミヤレスカ。お前にも俺の唇をやろう」
「嬉しいですわ……」
「「ちゅー……」」
「ぐすっ。ひっく……」
とうとうエレネが泣き始めた。
「酷いです……モルネトさん……私も欲しいです……」
「しゃあねえなあ。じゃあやるよ」
「……はぃ」
「「ちゅううぅぅぅうう……」」
エレネのやつが放してくれない。まったく、とんだウサビッチだ……。
「――着きましたじゃ!」
「お、さすが早いな」
「元気ムンムンですじゃああぁぁ!」
……御者の爺さん、見事に勃起してるな。ズボンが破れそうだ。
「おい、お前ら、爺さんの頬にキスしてやれ」
「「「ちゅっ!」」」
「ふぉ、フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォッ! みなぎってきたあぁああああ! ナンパしてきますじゃあああああぁぁあぁぁぁぁああぁあ!」
「……」
爺さん、鼻血を噴き出したかと思うと、辛抱堪らんといった様子で馬車を出したわけだが、元気いいなあ……。
1
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

外れスキル【転送】が最強だった件
名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。
意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。
失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。
そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~
名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~
名無し
ファンタジー
突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

勇者パーティーを追放された召喚術師、美少女揃いのパーティーに拾われて鬼神の如く崇められる。
名無し
ファンタジー
ある日、勇者パーティーを追放された召喚術師ディル。
彼の召喚術は途轍もなく強いが一風変わっていた。何が飛び出すかは蓋を開けてみないとわからないというガチャ的なもので、思わず脱力してしまうほど変なものを召喚することもあるため、仲間から舐められていたのである。
ディルは居場所を失っただけでなく、性格が狂暴だから追放されたことを記す貼り紙を勇者パーティーに公開されて苦境に立たされるが、とある底辺パーティーに拾われる。
そこは横暴なリーダーに捨てられたばかりのパーティーで、どんな仕打ちにも耐えられる自信があるという。ディルは自身が凶悪な人物だと勘違いされているのを上手く利用し、底辺パーティーとともに成り上がっていく。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる
名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。
冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。
味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。
死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す
名無し
ファンタジー
アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。
だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。
それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる