道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し

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四十九話 道具屋のおっさん、お手本を見せる。

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「おえぇぇええええっ!」

「ヴォエエェエエッ!」

 ――チュッドオォォォオン!

 いつものように勇者にパーティーに特製白ポーションと黄ポーションを大量に貢ぎ、最後に大きな電撃を食らわせてやる。

「羨ましいです……」

「す、凄い……」

 相も変わらずエレネがうっとりと見てるのが怖い。俺の迅雷剣の破壊力に対して、リュリアが青い顔でとんがった耳とおっぱいを震わせてるだけに、余計に。

 ちなみに、今回は戦いを挑まなかった。

 リュリアを倒してももうレベルの上がりが悪いこともあり、さぼっていたというのもあるが、どうやってやつらを倒すのか単純にわからなかったからな。特にあの魔術師アルタスが強すぎるのだ。

 だからもっと有用なカードを引くしかないという結論に至った。とはいえ残りあと3枚。しかもそのうちの一つは引いてはいけないカード。

 3枚しかないとなると、いくら運が良くても外れカードを引き当ててしまう可能性はあるだろうし、占いのカードを使って予防するという手もあるな。

 ……それでいくか。占う対象が神様のカードの中身だから効果があるかどうかは不明だが……。

 近くの駅で欠伸しつつ、馬車を待つ。……来た来た。のこのこやってきた家族をやっつけて馬車に乗り込む。

 ちなみに今回、爺さんを脅す役はリュリアに任せることにした。エレネが不満そうだったが仕方ない。こうも毎日同じことを繰り返してると新鮮味が欲しくなるんだ。

 それに、ゾクゾクするじゃないか。こういうことを正義感の強いリュリアにやらせるのは背徳感があって気持ちいいんだ。

「リュリア、やれ」

「は、はっ……」

 台詞も俺が考えてやった。

「……御者どの、早く行くのだ。さもなくば、私の大きなおっぱいで窒息死させるぞ……?」

「……お、お慈悲を……」

「「ププッ……」」

 エレネと二人で噴き出してしまった。このくだらない脅しに対してどんな反応するのか気になったが、やっぱり怯えていた。御者の爺さんもいつも通りで安心した。逆に何に対しては怯えないのか聞きたいくらいだ。

「どうだ、リュリア。悪もいいもんだろう」

「は、はい」

 罪悪感、それに加えて背徳感を覚えてるんだろう。リュリアの複雑そうな顔がなんともいい。

「リュリア、お前は女騎士だったが、今はなんだ?」

「え、えっと……」

「さっさと言え!」

「私はモルネトどのの性奴隷だ!」

「……よく言えたな」

「「ブチュ……」」

「……モルネトさん、私も……」

「はいはい」

「「ちゅうぅぅ……」」

 死んでいたエレネの目が俺の唇ですぐ生き返る。わかりやすいやつだ……。しかし、リュリアにああいうことを言わせるというのはなんとも気分がいいな。小生意気なメスガキも、今じゃ可愛い奴隷。敵が味方になるとこうも違う……ん、待てよ。そうだ。勇者パーティーに勝つためのいい方法を考えた。これならイケるッ。

 ――武器屋『インフィニティ・ウェポン』に着いたわけだが、既に爺さんは死んでいた。なんか鼻血出てるから、違う意味でも頭に血が上ったっぽいな。

 店内で覚醒カードを手放し、一時的に眠ることにする。あっという間に時間を潰せるから便利だ。ある意味未来へワープしたといえるだろう。早くもオルグが顔を出してきた。

「ただいまー」

「「おかえりなさい、ご主人様っ」」

「……な、なっ……?」

 オルグの鼻の下が見る見る伸びていく。無理もない。リュリアとエレネが全裸で迎えてくれたわけだからな。

「ういいいいっす」

「……え?」

 オルグの顔が見る見る引き攣り、恐怖の色に染まっていくのがわかる。そりゃそうか。歯茎と覚醒キノコ剥き出しの俺がいきなり飛び出してきたわけだからな。まさに天国から地獄ってわけだ。エレネとリュリアはまだ甘い。俺がメイドってやつの手本を見せてやるぜ。

「おかえりなさいませ、ご主人様♪」

「ひぎいいいいいぃぃっ!」

 逃げようとするオルグの背中を迅雷剣で突き刺す。

「ぐえぇっ……」

「もおっ、逃げるなんてご主人様のバカァーン……」

「「ププッ……」」

 エレネとリュリアには受けたみたいだが、俺は自分で言っててすげーキモかった。爺から幼女に転身した神様は偉大だと感じる。俺もまだまだだなあ。
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