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四十三話 道具屋のおっさん、名言を吐く。

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「「……」」

 待てども待てどもやつは来ない……。緊張しているせいか、やたらと時間が長く感じてるだけなのかもしれんが。

 今度は失敗は許されない。なんせ俺は神に近い男だからな。何度も何度も失敗してきた善人モルネトにはわからない感覚だろうよ。

「あ、あの、モルネトさん……」

「ん? どうした」

「占いのカードで、今のままで勝てるかどうか見てみましょうか?」

「んー……」

 エレネの提案に対してそれいいなと一瞬思ったが、やっぱりダメだ。

「いや、それじゃ面白くねぇし、オラも勝てる自信あっからよ。心配いらねぇって」

「はぃ……」

「それよりエレネ、おめぇここ正常に戻ったのか?」

「……え?」

 エレネのやつ、きょとんとしてる。

「おめぇ、アレを頭にぶっかけたんだぞ……。臭くねぇのか?」

「……いい匂いですよ」

「えっ……」

 時間が経過したアレは、プーンという擬音がよく似合うほどの激臭だが。

「とってもいい匂いです……」

「うぇ……」

 エレネは爽やかに笑っている。天然の清純ビッチみたいで、演技をしているという感じではない。こいつにとっては本当にいい匂いなのかもしれない。

「ま、またかけたいのか?」

「はい、是非っ……」

「……」

 軽く殴られたような感覚があった。これが底なしのドエムってやつか。さすがは勇者の末裔。まだ13歳だってのに、末恐ろしいな。オラ、ビクビクしてきたぞ……。



 ※※※



 ――来たっ……。例のメスガキが挑発するかのように大きな胸を揺らしながら店頭に現れた。

「エレネッ」

「はいっ」

 エレネが氷結剣をリュリアに向かって振る。

「……なっ……?」

 ここまでは前回と同じ……。だが、凍ってるのはリュリアの下半身のみだ。当然動けないし、凍ってない上半身は電撃によるダメージもよく通る。

「き、貴様ら刺客か……うっ!?」

 さらにこの特上ポーションをぶっかけてやる。電気を通しやすくするためというより、色んな意味でショックを与えるという意味合いのほうが強いが……。

「いいなぁ……」

「……」

 エレネ、指を咥えながら羨ましそうにリュリアを見つめちゃって、もう戦闘どころじゃないな。けど、もうこいつの役目は終わったし問題ない……。

「ぶはっ……な、何だこれは……臭いっ!」

「臭いだと? ジーク・モルネトの聖水だぞ!? お仕置きだあぁ!」

「ぎぃやああああぁぁぁっ!」

 レベル2026、魔法攻撃力3728(うろ覚え)を誇る俺の迅雷剣が雷を解き放つ。何度も、何度も……。濡れた避雷針となったリュリアにはもう、俺に歯向かう術は残っていなかった……。

「……うぐっ……」

 氷が溶けたあとも、うずくまったまま立ち上がれない様子のリュリア。最早頭を上げる力すら残ってないようだ。

「……参ったと言いなさい……」

 リュリアの首を迅雷剣の切っ先で起こす。

「くっ……殺せ!」

「くっ殺せ来た! 得意技! クッコロ来たよー!」

 正直感動した。言いそうではあったが、本当に言いやがった。しかも胸をプルルンと揺らしながらこっちにお尻を向けて。実に可愛いもんだ……。

「ふ、ふざけているのか、貴様。早く殺せ……」

「んー、どうしよっかなあ……」

「……もったいぶらずに早くやれ。期待を持たせようとしても無駄だ。お前たちが王都グロムヘルからの刺客であることはもうわかっている。全国民の敵である私を殺し、首だけにして持ち帰るがいい……」

「今度は、俺が守るさ」

「……え?」

「俺にはやらなきゃいけないことがある。極悪非道な勇者パーティーを殲滅することだ。そのためにはお前の力も必要なんだ。ついてきてくれるか?」

「……な、なっ……?」

 リュリア、信じられないといった様子で顔を震わせている。俺は親指を自分に向けて、歯茎剥き出しで笑ってみせた。

「黙ってオラについてくりゃいいんだよ。詳しいことはあとで話してやっから。この、ジーク・モルネトの仲間になれー!」

「……は、はい……!」

 こうして、ハーフエルフの少女メスガキであるリュリアはめでたく俺の仲間ペットとなった……。
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