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四十二話 道具屋のおっさん、鼻が曲がる。
しおりを挟む「おえぇええええええええ!」
「ヴォエェェエッ!」
いつものように特製白ポーションや黄ポーションを勇者クリスと戦士ライラに貢いだあと、魔術師アルタスと僧侶ミヤレスカが店に入ったところで、氷結剣で道具屋全体を凍らせてやつらを閉じ込めてやった。あいつらすぐ燃やそうとするからな。どうせ灰にされるにしても嫌がらせにはなる。
本当は迅雷剣で前のようにしてやりたかったが、今回は手元にないから仕方ない。
「あの、モルネトしゃん、見ててくらさい……」
「へ?」
エレネのやつ、いつの間にか裸になってたのはいいんだが、特製白ポーションと黄色ポーションを同時に自分の頭にぶっかけやがった。ヒエッ……。
「はぁう……幸せれす……」
しかもエレネ、恍惚としちゃってるし、半分くらい残ったものを飲み始めた。さ、さすがにこれは……。顔を殴りすぎたことで頭がおかしくなっちゃったのかな?
「美味しい……」
「き、汚いからしばらくちゅーはお預けな」
「うぅ……」
エレネはチューしたそうだが、仕方ない。しかし、自分の身から出したものとはいえ、それを全身に浴びてるだけあって臭いがきついな。オエッ。しかもエレネ、その状態で嬉しそうに服を着てるし凄い、凄いよ……。
「……じー……」
「はっ……これはダメだ。使うもんだからな」
俺は慌てて超特製ポーションを背中に隠した。これは特製白ポーションと黄ポーションとドエキの組み合わせて作った唯一無二のものだ。
「うー……」
「残念ながら、これはエレネに飲ませるためのものじゃないんだ。今日の戦いで必ず役に立つアイテムになるはずだ……」
「そ、そうなんれすねー……」
「今度直に飲ませてやるから」
「わぁい……」
「「ちゅー……」」
はっ……ついつい勢いでキスしてしまった。おええええぇっ……!
――例の家族が馬車から下りてきたところで氷漬けにしてやり、そのまま乗り込む。
「おい爺さん、『インフィニティ・ウェポン』に急げ!」
「は、はいですじゃ! ハイヤアァァッ!」
氷結剣を御者の首元に当てて脅すと、馬車は面白いように加速していった。おいおい、いくらなんでも飛ばしすぎだろ、少しは自重しろと思うくらいだ。まさに年寄りの冷や水だな……。
「「ちゅっちゅ……」」
……エレネ、凄く可愛いんだがとても臭い……。
「うげっ……」
馬車の揺れも相俟って吐き気を催したが、必死に我慢した。今の俺は2026レベルなんだ。容易に見苦しい姿を見せるはずもない……ウプッ……。
「――つ、着きましたじゃ……」
御者の爺さん、武器屋に着いた途端がっくりと項垂れてしまった。くたばったっぽいな。よく頑張った……。感動をくれたお礼として、腐らないように氷漬けにしておいてやろう。
「どこかにあるはずだ……おっ……」
迅雷剣を取り出すための鍵を獲得するべく店の奥に入ると、片隅に暗号式の鍵が掛かった倉庫があるのがわかった。数字を順番に入れて開くタイプの珍しい鍵だ。オルグの言ってることが正しいなら、あのおぞましい台詞で開くはず……。
確か、『オルグ兄さん大好き』だったか。一生口に出したくない言葉だ……。多分暗号はこんな感じだろう。歯軋りしつつ『009230149』と入力する。
「――お、開いたっ」
「わぁっ……」
中から見覚えのある鍵が出てきた。
よしっ……もう吸盤カードがあるし、二度とこういうことをしなくて済むと思うと気が楽になるな。もちろん、あの男にはキモイ暗号を入れさせた罪として極刑を執行するつもりだが……。
久々に迅雷剣を手に取って震えるような感動があった。氷結剣もいいがやはり俺にはこれだ。ジーク・モルネトはこの剣によって愚民たちに天罰を下さなければならない……。
「エレネ、わかってるな」
「はい……」
エレネが打ち合わせ通りやってくれれば、今回は120%リュリアに勝てる。勝てるんだ……。
「「ちゅー……」」
……臭いのにまた勢いでやってしまった。もう慣れたが……。
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