道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し

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三十八話 道具屋のおっさん、またビビる。

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「おはようです、愛しいモルネトさんっ」

「おはよー、愛しいエレネッ」

「「ちゅううぅぅっ」」

 エレネ、眠ったことで元通りになったようだな。いつもより長めのおはようのキスでご満悦の様子。

「それより見ろ、エレネ」

「わぁ……」

 俺が見せたのは、エレネの頭がおかしくなっている間にせっせと作った特製白ポーションのコレクションだ。全部で300個ある。

 それに加えて新鮮な黄ポーションも150個。それもみんな満タンだからな。賢者タイムなんて1分もしないうちに終わるんだから精製するのも早かった。これが2026レベルの精力なのだ。正直、よくこんなに作ったもんだと自分でも怖くなるほどだ。

「凄いです。でも、そんなに作ってどうするんですか?」

 エレネの言いたいことはよくわかる。勇者クリスと戦士ライラが口にするのは精々一、二本。それも少量だ。

 だが、そこはジーク・モルネト。これらを全て有効活用できる方法を思いついたってわけだ……。

「まあ見てな」

「は、はい。あの……じゅるっ……」

「ん?」

「白ポーションと黄ポーション、一個ずつください……」

「しょうがねえなあ」

「――ゴクッゴクッ……プハッ……」

「味はどうだ?」

「両方とも濃厚で、とっても美味しかったです……」

「……」

 エレネ、最後の一滴までうっとりした顔で飲んでる。こんのウサビッチめ……。

「さあ、そろそろ行くぞ。勇者パーティーが来る」

「あ、はい。あとでまた飲ませてくださいねっ」

「わかったわかった」

「「ちゅうぅー……」」

 まったく、贅沢なやつだ。キスしたあと気付いたが、若干俺の味がした……オ、オエエッ……。



 ――よしよし……まず勇者クリスと戦士ライラが道具屋に入っていった。

 さあ、存分に聞かせてくれ。お前たちの美声を……。

「おええぇぇえええええっ!」

「ヴォエェェエッ!」

「ウププッ……」

 まだだ。まだこれは悲劇の序章に過ぎない。

「吐くなんてとんでもないです。あんなに美味しいのに」

「……」

 真顔で言うエレネに俺はビビっていた。本当に美味しく感じてそうだな。あの味と臭いを思い出すだけで吐きそうなんだが。

 ……っと、魔術師アルタスと僧侶ミヤレスカも店に入った。よし、今だ。俺は迅雷剣を振り、2026レベルの特大の稲妻をプレゼントしてやった。

 ドガアアアアンという轟音とともに道具屋は煙を上げて木っ端微塵になる。

 わお、すげえ破壊力。まさか自分の手で大事な道具屋を破壊することになるなんて夢にも思わなかった。もちろん、この程度で中にいる勇者パーティーが死ぬなんて思ってない。というかやつらのレベルからすれば無傷に近いだろう。

「も、モルネトさん、まさか……」

「ああ。エレネ、想像できるな?」

「……はい……」

 うっとりとした顔のエレネが全てを物語っている。中にあるポーション瓶が全部割れて、あいつらは俺の汁まみれってわけだ……。

「――ひいいいぃぃ!」

 おおぅ、崩壊した道具屋から最初に飛び出してきたのは僧侶ミヤレスカだ。服はボロボロでびっしょりと濡れてるな。あー、いい気味……。

「嫌、嫌、嫌あぁぁあっ! うえぇ、くさっ、臭いっ! 死ぬっ、これ死ぬやつ! ヒール! ヒルヒルヒルヒルッ、ヒールウウゥッ!」

「プププッ……」

 実に面白いもんを見た。ミヤレスカのやつ、気が動転してるのはわかるがヒール連打なんかで汚れが取れるかよ……。

「うえええぇっ! チッキショー!」

「ああああぁっ!」

 ほかのやつらも一斉に瓦礫の中から出てきたが、怒声を上げて踊るクリスや斧を振り回しながら奇声を上げるライラと違って、魔術師アルタスだけは白濁液まみれなのにまったく平気そうだった。しかもあいつ、欠伸までしてやがる。さすがに頭おかしいだろ……。

「……わ、私、あの人たちが羨ましいです……」

「……」

 やつらを羨望の眼差しで見ながらもじもじするエレネはもっと変だった。もしかしてオラ、とんでもなくやべえの育てちまったんじゃねえだろうな。
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