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三十二話 道具屋のおっさん、パーティーを組む。
しおりを挟むループの輪のスタート地点である深夜零時の道具屋寝室、パーティーカードをおでこにつけて俺とエレネの名前を念じてみると、四つある人形の胴体のうち、二つにハートマークが表示されて手をつないだ状態で前に並ぶ形になった。
これで俺たちはめでたくパーティーメンバーってわけだ。
「エレネ、これでお前もレベルを上げられるな」
「ですね、嬉しいです……」
「「ちゅー……」」
レベルが上がれば体力も上がる。つまりエレネの大好きな暴力プレイだってもっと楽しめるってわけだ。
「あの……」
エレネのやつ、いつの間にか全部脱いでやがった。もじもしして誘ってやがる。相変わらずドスケベだなあ。
「あ、そういやオーダー入ってたな」
「はぃ……」
「俺レベルかなり上がってるから死ぬかもしれないけど、いいか?」
「……お願いします。いっぱい固い拳をください。頬にもお腹にも……」
エレネ、目が潤んでる。そんなに欲しいのか、ドMのウサビッチめ……。まあスタート地点だし死んだらまたやり直せばいいだけだしな。
「オラオラオラオラロアラオラオラオラオロラオラオラオラオラロアオララオラオララロオラアッ!」
「……」
あれ? エレネ、無傷できょとんとしている。思いっきりではないが、かなり強めに殴ったはずなのに、何故……。
多少手加減しているとはいえ、レベル175の俺がレベル5のエレネに殴りかかっているんだ。なのにこれはどう考えたっておかしい……。
「あのっ、モルネトさん、もしかしたら……」
「ん?」
「私たち、パーティーメンバーになったからではないでしょうか……」
「……あ……」
そうだ、そうに違いない。誤爆対策なのかお互いを攻撃できなくなるんだな。パーティーから抜けるにはどうしたら……。
……そういや、占いのカードやステータスカードもそうだが裏返しにすると効果が変わるんだよな。やってみるか。
パーティーカードを裏返しにしてエレネと念じてみる。
……おおっ、ハートマークが一つ消えてる。人形の中で俺だけが前に出ている形だ。
「これでヤれるな」
「ですねぇ……」
「「ちゅうぅ……」」
熱いキスを交わしたあと、俺は全裸で震えるエレネに向かって握りこぶしを作った。
「行くぞ、覚悟しろよウサビッチ。殴り殺してやる……」
「い、いやあぁんっ……」
「オラオラエロアエロアロアロロアオラオラオラオラオオラオラオロアロアロアオラオラオラオラオラオロアロアオラオラオラオロアロアオラオラロアオラオラオラオロアオロオラローラッ!」
「ぶええええぇええええええええぇっぇぇぇぇええぇええええぇぇぇぇぇえぇえっ!」
……気付いたときには、もうエレネは息をしていなかった。ただの兎の肉塊が完成していた。さて、嫁が死んだし俺も脱いでから自害するか……。
「がはあっ……」
喉を突き、全裸でエレネの死体に覆いかぶさる。俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ……。
※※※
ひとしきり暴力プレイを楽しんだあと、俺たちはまたパーティーを組んだ。夜のフィールドへ繰り出すためだ。
あの見回り兵士はザコだが殺すと面倒なことになりそうなので避けるルートで行く。
「――着いた。行くぞ、エレネッ!」
「はーいっ」
175レベルとはいえ、相手は夜の強力なモンスター。正直通用するかどうか不安な気持ちもあったが、思い切ってエレネとフィールドの闇に飛び込み、迅雷剣を振りまくった。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえええぇえええええ!」
「モルネトさん、頑張ってください……」
「おう、オラからのご褒美だ」
「「ちゅむちゅむ……」」
……気分爽快だった。
夜のフィールドなのにエレネとキスをする余裕が今の俺にはあるんだからな。
気が付けばブルースライムどもが体中にくっついていたが、俺は全身が焼けつくような痛みに耐えながらも剣を振っていた。普通ならこんなの耐えられるはずもないが、今の俺は以前とは全然違うからな。
よし、倒せてる感触もある。レベルUPの感覚も。イケるっ、これはイケるぞっ……。
……あ。
何か足元に転がってきたと思ったらエレネの首だった。
アハハッ、やられちまったかあ。そろそろ俺も意識が途絶えそうだ。だが、こんなしょうもないやつらにこのジーク・モルネトがやられるわけにはいかん……ってわけで、最後は迅雷剣を飲み込んでやった。ぐはっ……。
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