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二十三話 道具屋のおっさん、耳を疑う。
しおりを挟む「ういいいいいいいいぃぃっす!」
「た、助けてぇ……」
「「「出てきたぞ!」」」
道具屋から陽気に出たきた俺にどよめく様子の兵士たち。
まあ、歯茎剥き出しの笑顔でエレネの首に迅雷剣をあてがってるわけだからな。このメスガキにしても悲しそうな顔を作ってはいるが、頬を紅潮させていて人質にされることを楽しんでる感じだ。俺よりイカれてんじゃねえのか、真性マゾめが……。
「ふ、副隊長、人質が……」
兵士たちの中心で偉そうに腕組みした髭もじゃの兵士に対し、部下らしき男がひざまずいている。あの髭野郎が副隊長か。なんか小物っぽいな……。
「……構わん、やれ!」
「で、ですが……。あれはやはりどう見ても伝説の武器の一つ、迅雷剣。ここは一旦退いて、団長が来るのを待ってからでも……」
「たわけえぇ! だからこそやるのだ! 我々だけで事件を解決し、団長の鼻を明かしてやれば出世も夢ではない。お前もな! だから早く人質ごと道具屋のおっさんを殺して迅雷剣を奪い取れ!」
「は、はっ……」
「全員、突撃いぃぃ!」
無謀だし、鬼畜すぎるだろ、あの髭野郎。ま、勇者パーティーや俺には及ばんが……。
「「「「「うおおおおおお!」」」」」
兵士どもが槍を持って突撃してくるが、分厚い鎧を着ているせいか遅いな……っと、いかん。後ろで弓を構えてるやつらがいる。というわけで臨時休業の看板を盾にしつつ、エレネと一緒に塀の後ろに飛び込んで迅雷剣を振った。
「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」
剣を振り下ろすたび、心地よい悲鳴のハーモニーが辺りを包み込むもんだから脳汁が止まらない。
「ほぉ……見てみろエレネ! 人がゴミみてぇだ!」
「……綺麗……」
「ああ、綺麗だ……」
あっちこっちにほとばしる青い稲妻が俺たちを魅了する。レベルが4になったことで魔法攻撃力も2から5になったし大分効いてる印象だ。死亡一歩手前ってところだな。あの髭野郎には重点的に食らわせておいたから既に昇天してるが。
もちろん、生き残ったやつらに電撃を与えてとどめを刺すことも忘れない。殺していると、たまに力が湧いてくる感覚がある。これがレベルUPの瞬間なんだろう……。
「参ったか馬鹿ども! あっはっは! はっはっは!」
「「「ぎいぃやああああああぁぁぁっ!」」」
俺の笑い声とやつらの悲鳴が交錯する中、青い光に包まれてどんどん散っていく兵士たち。こいつらは俺のレベルを上げるために産まれてきたようなもんだ。
「す、凄いですっ、モルネトさん、もうレベル10ですよっ……」
エレネが俺をステータスカードで見ながらぴょんぴょん飛び跳ねている。最早この兎は俺の片腕だ。
「おー、大分上がったな! 魔法攻撃力は?」
「15です」
「おおっ……」
15ってのがどれほどのものかはわからないが、向かってくる兵士どもを大体一発で殺せるようになってきたから相当なもんだろう。
「「「な、なんだ!?」」」
お、近くに住む野次馬どもが起きてきたか。まあ深夜とはいえこんだけバカ騒ぎしてりゃなあ……。
「ま、まさかモルネトさん……」
「ああ、エレネ、見てろ。あいつらも腹ん中じゃ道具屋の俺を見下してたんだ。同じ穴の狢、愚民どもを成敗する!」
「「「うぎゃあああっ!」」」
俺から放たれた怒りの稲妻がやつらの脳天に突き刺さる。魚屋もパン屋も防具屋もどいつもこいつも皆殺しにしてやるってんだよ。皆死ね矢ああぁぁっ!
「――そこまでだ! 愚か者!」
な、なんだ、この凛々しくて透き通った美声は……。てか、どこかで聞いたことあるような……。
大量の兵士や民衆たちの死骸の中、こっちに向かって歩いてくるやつがいた。ん……あ、あいつは……。気付けば迅雷剣を持つ手が震えてしまっていた。
ハーフエルフのメスガキじゃねえか……。本当に女騎士だったのかよ。それも団長っぽい。
だ、だが、今の俺は前より強くなっている。少しは対抗できるはずだ……。とはいえ、何か妙に不安になる。それだけ圧倒的なオーラを放ってるというか……。いつもと空気がまったく違うんだ。
「エレネ、あいつのレベルを見てくれ」
「は……はい!」
エレネも微妙に声が上擦ってたな。やっぱりあいつの放つ恐ろしい気配がわかるのか……。
「……2756レベル……」
「……は?」
一瞬耳を疑った。
「も、もう一回……」
「2756……」
「……」
こんなの勝てるわけないだろ……と思いつつも、どれくらい効くか試したくて電撃を食らわせてみた。お、歩くのを止めたぞ。効いたのか……?
「……この程度か、愚か者……。その人質を離すのだ……」
……ダメだ。まったく効いていない……。
「「……」」
俺はエレネと呆然と顔を見合わせたあと、彼女のアソコから脳天にかけて迅雷剣で突き刺し、それから服を全部脱いだ。これで歯茎と陰茎がセットになったってわけだ。
「き、貴様、何を……!」
人質が死んだしもう殺せると思ったのか、やつが猛然と走ってくるのがわかる。
「ジーク! モルネトォォ!」
俺は全裸で叫びながら自分の喉笛を突いた。けっ、ざまあみやが……ぐはっ……。
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