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二十一話 道具屋のおっさん、色々知る。
しおりを挟むエレネと二人で道具屋のベッドに戻ってきた俺は、早速神様から貰った新カードを見てみることにする。
ん……なんだこのカード……眼鏡のマークが描かれている。二つ並んだ丸の中にはSという文字。これは一体何を意味してるんだ……?
「眼鏡だから、掛けちゃいましょうか」
「あ……」
横から興味深そうに覗き込んできたエレネに盗られてしまった。眼鏡のマークをこっちに向ける形で目に当てている。
「……あ」
「ん、どうした、エレネ」
「えっと……モルネトさんのレベル、3だそうです」
「……え。それで俺のレベルがわかるのか」
「はい。目の前に浮かんできました」
ってことは……ステータスが見られるカードなのか。Sはその頭文字だったわけだな。しかしただの道具屋のおっさんである俺が3もあるとは思わなかった。どうせ1だとばかり……。
いつの間にどこで上げたんだろう? 夜のフィールドじゃ全然モンスター倒せなかったし、多分見回り兵士を殺したことで経験値を稼いだんだろうな。
「ほかにも、色んなの見えますよ。モルネトさんの腕力とか身長とか、あと年齢とか……うわっ……」
エレネが声を上ずらせた。なんだ? まさかこいつ、俺の変な情報まで覗いてるんじゃないだろうな。
「お、おい、エレネ。勝手に人の情報を覗くな!」
「ご、ごめんなさい……」
エレネがステータスカードを返してきたが、頬を赤らめてる。一体何を見たんだか……。
「何を見たのか正直に言えば許してやる」
「……えっと、その……イツデモキノコの大きさ……」
「……」
そんなものまで見られるのか、このカードは……。
「エレネって本当にスケベなんだな……」
「……うぅ、意地悪。モルネトさんのせいですよ……」
「何か言ったか?」
「いえっ」
自分で自分のステータスを見るにはどうすりゃいいんだろ? 裏返しにして目に当ててみるか。
……お、出てきた出てきた。
名前:モルネト
レベル:3
身長:168
体重:75
……おいおい、身長や体重までわかるのか。
魔法攻撃力:2
魔法耐性:1
……魔法攻撃力2か。俺にはまだ迅雷剣を使いこなせそうにないな。まあレベル自体3なんだし仕方ない。しかし俺の電撃であそこまでダメージを受けるオルグやあの正義マンの兵士はどれだけ雑魚なんだ……。
イツデモキノコ:通常時7cm 覚醒時15cm
……念じるとこんな情報まで出てくるのか……。
あ、そうだ。いいことを思い付いた……と思ったときにはエレネがいなかった。俺と常に一緒にいるから危険察知能力も高まったようだな。
「おい、エレネ、いるんだろ!」
「……いますけど、お願いです。それを私に使わないでください……」
声だけ近くから聞こえてくる。ってことはもうあそこしかないな。
「――みーつけた……」
「……うぅ……」
俺の思った通り、エレネはベッドの下でうずくまっていた。
「お願いです……私の体重だけはそれで調べるのをやめてください……」
「……体重?」
「はい……」
「……」
あんなに軽いのに。
……さてはこいつ、ほかに隠したいものがあるからそれでごまかそうってか。狡賢いエレネの考えそうなことだ。だが、その手には乗らんぞ。
「エレネ、わかった。体重はやめとくよ」
「……えっ……」
何気にショックを受けてそうな反応だった。やっぱりなあ。
「その代わり、オラおめーのクォウモンの皺の数を調べてやっからよ……」
「ひいぃ……」
カードをひっくり返して青い顔のエレネのほうに向けると、14本と出た。
「14本だって。この数字、ホントかなあ? 試しに見せてくれ」
「……うぅ。絶対言うと思ってました……」
なるほど……。エレネ、これを恐れてたんだな。観念したのか、ベッドの下から出てくると大人しく脱ぎ始めた。実際に確認したところ、その通りだった。凄いな、このカード……。
「もう、なんでも調べちゃってください。私は全部モルネトさんのものです……」
エレネのやつうっとりしやがって。俺以上の変態だな。ついでにこいつのレベル等を見てみたんだが、5もあった。
「おいおい、エレネ……お前5レベルもあるぞ。どこで上げたんだ?」
「ええっ? レベルなんて上げてませんよ。でも、いつも馬車を使わずに歩くようにはしてます」
「……あれか。ダイエットのためか?」
「それと、足腰を鍛えるためです」
「……なるほどなあ。それであんなに体力があって打たれ強いのか……」
「……はい」
レベルが5になるくらいだから、相当な距離を毎日歩いてたんだろうな。オルグの武器屋からこの道具屋は結構距離があるし……。
てかなんだこいつ、もじもじしやがって……あ、そうか。いじめてほしいんだな。
「エレネ、殴ってほしいのか?」
「……す、少し……」
「なら、久しぶりにたっぷり甚振ってやる。歯ァ食い縛れ! オラオラオラオラオラオラロアラオラオラオラオラオラオラオララロオラロアララッ!」
「ぶええぇえええええええぇぇえぇぇえっ!」
エレネの断末魔の悲鳴が周囲にこだました。ループのスタート地点に戻ったばかりだし、死んでも安心だ。
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