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二十話 道具屋のおっさん、デレツン幼女と出会う。
しおりを挟む「ただい――ぎゃああぁぁっ!」
エレネの兄、オルグの断末魔の悲鳴が武器屋内にこだまする。
即退場してもらったのは、もう人質作戦も飽きたし迅雷剣はこっちにあるからだ。何よりこいつの声は聞くのも癪だから、もっと早く電撃を食らわせるべきだったと後悔したくらいだ。
兵士を殺したことで俺のレベルも少しは上がったのか、前より効いてるっぽい。やたらと焦げ臭いし息も絶え絶えだ。とはいえ、こいつが即死するくらいじゃないとあのハーフエルフを相手にするのは厳しそうだ。
「さあ、エレネ、行こうか」
「はいっ」
エレネと仲良く手をつないで神様のところに出発だ。今日はあの爺さんからどんなカードが貰えるのかなあ。
……あ、そうだ。神様、俺のために美少女になってくれるんだっけ? 一体どんな子かなあ。実に楽しみだ……。
「あ、あの、モルネトさん……」
「……あ?」
「ちゅーは……」
「したいのか? 兄があんな状態になったってのに、お前というやつは……」
「う、うぅ……」
とうとうエレネのほうからキスのおねだりだ。ライバルが増えることに対する不安を敏感に感じ取ったのかもな。さすがは年頃の女の子といったところか。
「ど……どうせループして兄は元に戻りますしっ」
「まあな。エレネ、俺とキスしたいならお前のほうから来い!」
「……は、はい……」
エレネのやつ、思いっ切り背伸びしちゃって。そんなに俺とチューしたいのか。よし、少しだけ屈んでやろう……。
「「――ちゅー……」」
汚っさんとのキスなのにうっとりしてやがる。ハッハッハ……人生、こんなものなのだよ。善人モルネトのままだったらこんなことはありえなかっただろう……。
いつもの時間、いつもの道、深い霧の中を俺とエレネは歩いていた。ちなみにもう手はつないでない。神様が嫉妬すると面倒だからな……。
――お、見えてきた見えてきた。いつもの灯りが……。
「うっす、神様ー、カード……いや、会いにきたよ!」
「神様、こんばんは!」
「……おう、よく来たの」
「「なっ!?」」
並べられたカードの前にいたのは、青い長髪の美少女……いや、幼女だった。
確かに可愛いが……幼すぎるし、いつもと同じ小汚い恰好だった。ホームレスの爺さんからそのままあどけない女の子に変わった感じだ。
「どうじゃ? 早速わしに惚れたか? 変態モルネトよ!」
「……」
「な、なんじゃ? 何か不満そうだの……」
「……」
「……そ、そうか。ドがつくほど変態じゃから、わしの裸が見たいんじゃな。それなら見せてやるぞい!」
ためらいもなく全裸になる神様。
「どうじゃ! お主の好きそうなツルペタというやつじゃ! わしはこう見えて勉強熱心でな、色々と研究しておる。興奮してヤろうと思ってもまだ入らんぞ!? ホッホッホ!」
「……」
「……な、なんなんじゃ。モルネト、その冷たい眼差しは……。わしの何が不満だというんじゃ……」
「神様……そこは、もっと恥ずかしがるべきだろ……なあ、エレネ?」
「そ、そうですねっ。神様、女の子は恥じらいも大事ですよ」
「……う、うーむ。変態を少々あなどっておったか……」
裸になればいいってもんじゃないし、いくらなんでも見た目が幼すぎるだろう。神様のくせにわかってないなあ……。
「聞こえとるぞ、モルネト……。わしだって知らぬこともあるわい……」
「あ……」
ぷくっと頬を膨らませる神様。そうだ、心が読めるんだったな。なんせ見た目がこれだし……。
「神様ってツンデレっぽいから、ツインテールの髪型にしたほうがいいな」
「ふむ? ツンデレはギリギリわかったが……ツインテールとはなんじゃ?」
「エレネ、頼む」
「はい、神様、じっとしててくださいね」
「わ、わかったのじゃ……」
……お、大分様になってきたな。
「そ、そうか。照れるのっ」
「いちいち心を読むんじゃねえぞ」
「め、メンゴ……」
……頬なんか染めちゃって。既にデレデレかもしれない。
「あ、そうだ。神様、時間がない。カードを……」
「……ふんっ。カードカードって、どうせ最初からわし目当てじゃなくカード目的なんじゃろ! バカッ!」
ここでツンかよ……。じゃあデレツンだな。
「神様、頼むよ。そこは、空気読んで……」
「知らないのじゃっ。とっとと引けばいいんじゃ……!」
「「……」」
エレネと向かい合って苦笑する。
「とりあえず時間もないし引こうか」
「そうですね、次はどんなカードでしょう……」
「……エレネ、どさくさに紛れて先に引こうとするなって」
「ふ、ふふ……」
まったく、エレネは油断も隙もない。
「神様神様っ、引いたよ!」
神様にカードを向ける。説明を聞かないと困るからな。
「……いいんじゃいいんじゃ、わしなんか。ただのカードの売り子か説明係なんじゃ。バカァ……!」
背中向けて座り込んで……地面を指で弄ってすっかりいじけちゃってる。人間臭い神様だな。
「人間臭くて悪かったのっ。わしは昔から人間観察が好きじゃから……おっ、それは……なかなかのもんじゃの……」
振り返った神様の反応から判断するに、悪いカードじゃなさそうだな。
……って、視界が切り替わっていく。結局説明は聞けずじまいだったが、まあいいか……。
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