道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し

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十五話 道具屋のおっさん、ハーフエルフと出会う。

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 さあ、あとは迅雷剣を奪還するだけだ。

 ということで、俺はエレネと一緒にこいつの兄であるオルグが経営する武器屋『インフィニティ・ウェポン』に向かう。

 歩いて向かうのが面倒なので、途中でまた駅馬車を立ち塞がる形で止めてぶんどってやった。いつものファミリーが乗ってたからついでに昨日のオスガキをまた殴り倒してやったんだが、いちいちおもしれえ悲鳴上げるし家族が拾いにいくしで大いに笑った。裕福な家庭で育ったせいかブクブク太ってたし理不尽にぶん殴られるくらいがちょうどいいんだよ。

 ――お、もう着いたか。馬車は楽だし速いしでいいなあ。

「いいか、御者の爺さん。今日あったことをもし誰かにバラしたら、この少女の首を切断してお前の家の玄関に飾ってやるからな。お前もお前の家族もみんな木っ端微塵にしてやる」
「だ、誰にもばらしません。どうか、ご慈悲を……」

 御者が青い顔でブルブル震えながら駅馬車を発車させる。昨日と大体似たような展開だ。ってことは、あいつはまだ来てないのか。

 店内に駆け込み、迅雷剣が展示されていた箇所に向かうも、何もなかった。

「おいエレネ、何もないぞ」

「……あれ。確かにここに置いたのに……」

「鍵は掛けたのか?」

「鍵の在処は兄さんしかわからないんです……」

「……」

 ってことは……。

「盗まれたってことか?」

「……そうみたいですねぇ」

「そうみたいですねぇ、じゃねえよオラァ!」

「おごぉっ!」

 がら空きのエレネの華奢なボディーに拳をめり込ませる、文字通りの腹パンが綺麗に決まった瞬間だった。

「ご、ごえっ……おぼぉ……」

 あー、また吐いてる。これじゃしばらくチューは無理だな……。

「鍵も掛けずにお前、店の看板武器を展示してたら盗まれるに決まってんだろうがボケ! 死ね、今すぐ死んで償え! この武器一つほどの価値もないお前が!」

「ず、ずびばせん……コホッ、コホッ……急いでて……」

「だったらよー、これでやることあんだろうがこのクソムシが」

 エレネの頭に足を置き、占いのカードで頬をビンタする。

「はひ、占いまひゅっ……」

 カードをおでこに当てるエレネ。30分っていう短い時間でわかればいいがな……。

「……あ……」

「何かわかったのか?」

「はい。常連さんというか、いつも大体同じ時間帯に武器を見に来るだけの人がいるんですけど、その方が……」

「……なるほどな。その泥棒はどっちの方向に逃げたかわかるか?」

「えっと、こっちです!」

 エレネが店から飛び出すと左方向を指差した。

「よし、取り返しに行くぞ!」

「はい!」

「ちなみに、相手はどんなやつだ!?」

「女の子です!」

「……え。何歳くらいの?」

「私よりほんの少し年上くらいだと思います!」

「……」

 マジかよ。そんなやつが迅雷剣で何しようっていうんだ。まあいずれにせよ豚に真珠だな。これなら簡単に奪還できそうだ。

 ん、誰か見えてきた。腰まである銀髪の少女。ハーフエルフなのか耳が尖っていて、おっぱいとお尻が大きいくらいで、背格好はエレネと同じくらい……って、その手にはしっかり迅雷剣を握られている。あんなガキが盗んだのかよ。楽勝だなこりゃ……。

「おいこらああああああぁぁぁ!」

 可愛いが三十発くらいぶん殴らないと気が済まない。そのあと全裸にして土下座させてやる。もちろんそのあとはムフフタイムだ。いかん早速勃起してきた。

「な、何事……?」

「盗んだ剣返せやこんのクソガキがあああああぁぁぁぁ!」

「……くっ、すまぬ。これはまだ返せぬのだ……」

「……え?」

 俺の拳がやつの小奇麗な面にめり込もうとした寸前、体中に電撃が走った。

「ぼわあああああああぁぁぁぁっ!」

 ……ちょ、待てよ。なんだよこの桁外れの威力……ぐはっ……。



 ※※※



「……あ……」

 気が付くと俺は自分の部屋にいた。どうやらあの迅雷剣から放たれた電撃で死に戻りしたらしい。隣にはエレネもぼんやりとした顔で立っていた。

「お、おいエレネ、お前もやられたのか?」

「はい……」

「そうか……しかし眠いな」

「ですね……って、きゃっ。なんで脱がした上に縛っちゃうんですか……? エッチなことなら朝起きてからでも……」

「逃げられないようにするためだ」

「逃げないですよ。私、モルネトさんのこと大好きですから。信じてください!」

「チュー」

「ちゅー……」

「よし、それなら信じ……るわきゃねえだろクソガキ! お前逃げる気満々なのわかってるから!」

「うぅ……」

 というわけで、全裸のエレネをベッドに括り付けたあと、俺も安心してそこに覆いかぶさった。もちろん全裸という正装で。

 このクソガキは本当に油断できないからな。俺たちを殺しやがったあのハーフエルフのクソガキもだが、こいつもこれからガンガン躾けないといかん。骨の髄まで俺の濃厚なホワイトポーションを塗りつけるくらいじゃないとダメだ。

「さて、運動するか」

「……はい」

 ん……修行するぞ修行するぞ修行するぞぉぉ! 

 ――来る来るクルクル、来た来たキタキタ……エクトプラズム大発生!
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