道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し

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十二話 道具屋のおっさん、神様の親友になる。

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 しばらく歩いてると濃厚な霧が出てきた。よし、神様の居場所に確実に近づいてるぞ。例の灯りも見えてきて俺は思わず小躍りしそうになった。

「――来たようだの」

「来たよ。神様ちゃん」

「神様にちゃんづけやめいっ」

 見えてきたのは、裏返しになったカード群の前に座る小汚いローブの爺さん。神様だと知ってるせいか本当に神々しく見える。

「神々しい? 調子のいいもんだの。最初はホームレスくらいに思っとったくせに……」

「まぁまぁ、そんなちっちぇーことはいいじゃん。あんた神様なんだし」

「まあの……」

「え、えええっ!?」

 エレネが露骨にびっくりしてるな。

「本当に神様、なんですか?」

「うむ、そうじゃよ」

「た、助けてええぇ!」

「お、おいおい……なんじゃ、どうした?」

 うわ、エレネのやつ……神様の背後に隠れやがった。おのれ……こんの女狐めが……。

「おいエレネ……戻ってこい。こんなことしてタダで済むと思ってんのか……?」

「お願いです、神様。助けてください。このモルネトという凶悪な男に刃物で脅されてここまで連れてこられたんです。どうか罰を与えてください……」

「こいつ……言わせておけばぁぁ……」

「ひ、ひぃぃ。兄もこの男に酷いことをされたんです。お願いです、助けてください神様……」

「ふむふむ。それはそれは酷い男じゃのぉ……」

「うう、ぐすっ……」

「よしよし……」

「……」

 なんてことだ。神様に嘘をつけるわけないしどう考えても詰んでる。連れてくるべきじゃなかったのか? でも、それだとループの輪に彼女が入らなくなる可能性があるわけで……。

「神様、まさかエレネの味方をするつもりか?」

「お願いです、神様、私の味方に……」

 このクソブタ、ふざけやがって……。

「すまん、エレネ。わしは誰の味方でもない」

「……え、ええ? 神様?」

 ざまーみろエレネのやつ、明らかに動揺した顔になってる。

「わしは誰も罰しない。エレネよ、モルネトを罰したいなら自分の力でやりなさい」

「そ、そんな。酷い……」

「それを含めての神様なんじゃよ」

「うぅ……」

「わかっただろ、エレネ。神様はな、お前の家族でもなんでもねえんだよ! 世話を焼かせるな!」

「うむ。だが、エレネよ、このカードなら――むぐっ!?」

 あぶねえ。咄嗟に神様の口を塞いだ。エレネにカードを引かせるつもりだったか。

「神様……ここで俺を裏切るならもうこんなところに来ねえぞ。それでいいのかよ? ああ?」

「……わ、わかった。モルネトよ。お前が来てくれないとわしも寂しいしな……」

「……爺さんの姿でデレられてもな……」

「ホッホッホ」

「あの、神様……カードって?」

「「なんでもない!」」

 俺と神様の声が被った瞬間だった。さすが、相性抜群!

「エレネ、見ての通り俺は神様と親友関係マブダチなんだよ。つまり俺に逆らうってことはよ、神に逆らうってことだ。わかるか?」

「……え?」

「お、おい、わしはそんなこと一言も……」

「……ん?」

「わかったわい……。エレネよ、わしはモルネトのマブダチなのじゃっ」

「……え、え? そんな、神様……」

「恩に着るぜ神様。おいエレネ、わかったか?」

「わかりました……」

「よし。じゃあ、ケツだせカス」

「……え?」

「ケツ出せっていってんだろうがこのゴミブタァ!」

「……はい」

 素直にパンツを脱ぐエレネ。女の子はこうでなくっちゃな。

「歯アァ、食い縛れッッ! 豚のように鳴け! 喚けえぇっ!」

「――プギイイイイイィィィィィッ!」

 憎い雌畜生の尻目がけ、叩く、叩く、叩く!

 ……ふぅ。真っ赤になっていい感じだ。ガキのケツってのは、叩けば叩くほど磨きがかかるもんだからな。

「……ぐすっ。もう、二度と逆らいません……」

 エレネのやつ、さすがに心が折れた感じだな。まあ俺が神様のお墨付きを貰った形だしぐうの音も出ないか。

「はい、エレネの大好きなチューだよ」

「ちゅー……」

 神様の御前でエレネとのラブラブなキスをお披露目する。俺って割と罪なやつかもしれない……。

「さあ、もう終わったかの。カードを引こうか」

「……神様、なんか怒ってない?」

「んや? 別に?」

「いや、その冷たい言い方、絶対怒ってるだろ! なんで……」

「そりゃ……言えん」

「実はホモとかいうのやめてくれよ……」

「神様にホモもクソもないわい! 年齢、性別、見た目なんかいつでも変えられるしのー」

「へえ、そうなのか……」

「うむ……。さあ、変なことを考える前にとっととカード引かんかい」

「オッケー、神様、愛してるよ!」

「調子のいいやつじゃ……。んじゃこのカードで」

 適当に選んでおいた。

「あの……私も引いていいんですか?」

「ダメダメ! ね、神様」

「そうそう。モルネトだけじゃっ」

「は、はい……」

 エレネに引かせた結果、もし俺より強いカードだったらやばいからな……。

「モルネト、はよ引け。もうすぐ零時だぞ!」

 あ、そうなのか。そこまで時間が経過してたとはな。じゃあ早く引かないと……。

「んじゃ、今日はこれにしよう」

 神様の右ひざの前にあったカードを拾うと、裏返して見せた。

「――どれどれ……。こ、これは……また良いものを引いたのう!」

 神様の目がぎょっと見開かれるのがわかった。

「もう時間がないから手短に説明する。これをおでこにつければ……」

 神様の説明中に視界が見る見る変わっていく……。おい! おでこにつければなんなんだよ!
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