A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

文字の大きさ
上 下
25 / 37

25話 伏線

しおりを挟む

「みんな、話があるんだ。聞いてくれ……」

 意を決して、俺はみんなに言葉を投げかけた。

「モ、モンド君? そんなに改まって、一体どうしたっていうんだい……?」

「さてはモンド、俺がカースフラワーの体液で負傷したのを見て、すっかり怖気づいちまったんじゃねえだろうな? それなら大丈夫だって! やつはここまで来られねえから」

「うんうん、バルダーの言う通りだよ、モンドおにーちゃん。ここなら蔓も届かないし……あ、もしかして、私たちがあの花と戦ってる間に、ほかのモンスターにやられちゃうなんて思ったの?」

「チッ……だとしたら本当に世話の焼けるやつだな、モンドは。それなら俺が戦いの合間に索敵してるから大丈夫だ」

「……」

 ラダンたちには勝手に色々と解釈されてしまってるみたいだが、俺は構わず話すことにした。

「今から俺がカースフラワーを倒してくる」

「「「「えっ……?」」」」

 俺の発言がよっぽど意外だったのか、みんな揃って呆然とした顔で固まってしまった。

「モ、モンド君……? き、君は自分が何を言っているのか、本当にわかってるのかい……?」

「モンド……お前なあ、パーティーの役に立ちたいって気持ちはわからんでもないけどよ、こんなときに寝言なんか言ってる場合かっての!」

「モンドおにーちゃん……らしくないよ。一体どうしちゃったのぉ?」

「モンド……ジョークで盛り上げようってつもりかもしれないが、無駄だ。もうどうしようもない……」

「いや、寝言でもないし冗談でもない。俺は本気で言ってるよ」

「「「「っ!?」」」」

「……」

 殴られたかのような反応を見せるラダンたち。いや、何もそこまでびっくりしなくても……。

「よかったら支援を頼む」

「……わ、わかったよ。モンド君がそんなに言うなら……」

 それでも、俺の雰囲気がいつもとまったく違うと感じたのか、しばらくして吟遊詩人のラダンが心身向上効果のある高揚の歌を演奏してくれた。助かる。

「モンドおにーちゃん、無理だけはしないでね……?」
 
 白魔導士メルルもリーダーに続けとばかり、カースフラワーに防御力と身体能力が低下するデバフをかけてくれた。

「モンド……死んじまったら絶対許さねえからなあぁ……!?」

 戦士のバルダーには気合を入れてもらった。闘気にはそんな効果もあるみたいだ。

「……よし、モンド、敵は周りにいないから安心しろ。お前がもしダメでも当たり前だから非難はしない」

 キールに至ってはこの心遣い。

 仲間たち全員からなんとも不安そうな表情で見送られる中、俺は単身で討伐対象のカースフラワーの元へと歩を進めていく。

 あのモンスターの倒し方に関しては、みんなの戦う様子を見ていたらすぐにわかった。

 俺の氷魔法は魔力が最弱なだけに、バフがあってもちょっとサイズが増した氷柱程度しか出せない。傍から見ればブーストで強化されてもあまり変わらないように見えるだろうが、俺にとってはそれがかなり大きいんだ。

 というわけで、俺は氷柱を出す代わりにそれを小さくした氷の破片を沢山飛ばし、カースフラワーの全体に棘のようにこれでもかと食い込ませてやる。

 もちろんこれだけじゃ倒せないが、戦いにおいてはミスをしないことはもちろん、いかに伏線を張れるかで決まるんだ。相手が強敵ならば二重、三重と相手に悟られないように慎重に仕掛けていく。

 俺は魔力が低くて力押しができなかったから、昔からその辺りを重点的に鍛えてきた。

『ウジュルッ……?』

 カースフラワーがこっちに向かってシュルシュルと蔓を伸ばしてきたが、まもなく止まった。

 どうやらこっちが仕掛けた伏線に気付いて棘を払おうと考えたようだが、遅かったな。知能がそこまで高くないのは植物型モンスターだから仕方がない。

 やつの全身にびっしりと刺さった氷の破片を、俺は風魔法で同時に動かし、細かく切り刻んでやった。再生することも、断末魔の悲鳴すらもあげられないほどに。凍っているから血飛沫もないというおまけつきだ。

 戦いが終わったこともあり、討伐証明用の花びらの欠片も拾っておく。

 それと、俺が戦ってる最中にもしかしたら犯人による妨害行為があるかもしれないと一応探っていたが、まったく殺気を感じなかったので意外だった。俺が力を隠していることがわかって、それで警戒心を強めたのかもしれないな。

「倒してきたよ――って、みんな、どうしたんだ……?」

「「「「……」」」」

 俺が戻ってきても、ラダンたちは揃ってポカンとした顔のまま無言だった。

 多分、どうしようもない無能キャラが普通にパーティーに貢献しちゃったもんだから、そのあまりの緩急に驚いたんだろう。力を隠していたことも当然バレただろうし。

「今まで黙っててすまなかった。これには事情が――」

「――モ、モンド君、いくらなんでも強すぎじゃないかい……!?」

「おいおい、モンド、なんだよ今の。ほぼ一瞬でやっつけてたよな? あ、ありえねええぇ……!」

「モンドおにーちゃん、急にどうしちゃったの? 凄すぎだよぉ……」

「……モンド……お前は一体何者なんだ……」

「……」

 なんだ、この状況は? 俺はラダン、バルダー、メルル、キールに質問攻めされている。

 今の戦闘がやたらと凄く見えたようだが、俺にはまったく実感が湧かなかった。こっちとしては普通に倒してみせただけだからだ。なのにラダンたちのこの異常な驚き方は、こっちのほうがびっくりするほどだった……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...