A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

文字の大きさ
上 下
11 / 37

11話 報酬

しおりを挟む

 コカトリス討伐の依頼を完了した俺たちは、あれから無事に冒険者ギルドへと戻ってきたところだった。

「も、もう攻略なされたんですか!?」

 証明用のコカトリスの爪を見て、受付嬢イリスがびっくりした顔を見せるのも当然か。

 なんせ、五日以内にこなしてほしいって言われてるC級の依頼を、二日もかからずに攻略してしまったんだから。

「さすがモンド様、お疲れ様です、やっぱり私が見込んだ通りでしたねっ!」

「いやいや、イリス。俺の力だけじゃここまでできなかったよ」

「あ、G級パーティー……い、いえっ、【深紅の絆】のご一行様もお疲れ様でした!」

「ハッハッハ! 受付嬢よ、貴様、いくらなんでも私たちのほうにお疲れ様を言うのが遅いぞ!?」

「まあ、グロリア、そうは言うけどよ、モンドとその他って感じの貢献度だったんだししょうがねえよ」

「まさしく、その通りですね。僕たちは最後の最後までモンドさんに頼り切りでしたし」

「ガムラン、ワドル、貴様らなあぁ……私もまったく同感だ!」

「「「ハハハッ……」」」

 なんとも気まずそうな笑い声を上げるグロリアたち。

「フフッ、面白い方々なんですね!」

「……あぁ、正直かなり心配してたんだけど、【深紅の絆】はほとんどなんの問題もなかったよ」

「モンド、貴様も、追放されたくせに中々言うな!」

「まったくだぜ。やっちまえ!」

「これはお仕置きが必要ですねえ」

「ぐ、ぐるしいっ……」

 グロリアに後ろから腕で首を絞められ、俺はイリスと苦い笑みを向け合う。

【深紅の絆】パーティーは実力的にもあまり問題はなかったし、素行に問題があるどころか、追放された俺の助言を聞き入れてくれる寛容さや素直さがあった。正直、ここで別れてしまうのが惜しいと思えるくらいだ。

「それでは、これが今回の報酬の銀貨12枚です。それと、【深紅の絆】ご一行様は、G級からC級へと格上げとなります!」

「「「「えぇっ!?」」」」

 これには俺も驚かされた。依頼攻略によってパーティーランクをどれくらい上げるのかは受付嬢の判断に委ねられるわけだが、G級からC級まで一気に上がるなんて今まで聞いたことがない。しかもたった一回の依頼攻略で。

「この卓越した依頼達成速度はA級並みですし、全員が怪我一つ見られないというクオリティに加え、【深紅の絆】パーティーに助けてもらったという報告も入っておりますので、妥当な昇格と思われます!」

「「「「なるほど……」」」」

 そういえばそんなこともあったな。それも含めて冷静になって考えてみると、グロリアたちはもっと上を目指せるパーティーだと思うし、確かにイリスの言う通り妥当な気がしてきた。

「モ、モンドオォ! これも全部貴様のおかげだ! 報酬は全部もらってくれ! ガムランもワドルも異論はないな!?」

「あぁ、それくらいの働きをしてくれたぜ、モンドは……」

「本当に、これじゃ足りないくらいですよ。モンドさん、是非受け取ってください」

「い、いや、さすがに――」

「「「――頼む、受け取ってくれ!」」」

「……じゃあ、こうしよう。報酬の銀貨は一人3枚ずつとして、コカトリスの爪を貰ってもいいかな?」

 銀貨3枚でもすっかり無一文になった俺にとっては大きいし、コカトリスの爪を貰えるだけで充分なんだ。

「なっ!? そ、そんなもので本当にいいというのか……?」

「こっちとしては全然かまわねえっていうかむしろありがてえんだけどよ、それって高く見積もっても銅貨10枚くらいの価値しかねえんじゃ?」

「確かに、何に使うんですかっていうレベルですし、銅貨10枚でも買い取ってくれるところがあるかどうか……」

「いや、それでも銀貨1枚分になるわけだからありがたいよ。珍しいものを収集してる知り合いがいるんだ。昔世話になってたから恩を返しておきたい」

 そういうわけで、俺はコカトリスの爪を譲ってもらったあと、このベグリムの都からすぐに発つ予定のグロリアたちを見送ることに。

 これはついさっき知ったことなんだが、バゼリアというここからそう遠くない都で、黒魔導士のジンらしき男を見たという目撃証言があったらしい。

「それじゃ、また機会があったら……」

「うむ、モンドよ、貴様とはほんの短い間だったが……だ、だ、だのじがっだぞおぉ……!」

「「「……」」」

 グロリアが俺の両手を握りしめて、片方の目から涙をボロボロこぼしながら言うのでなんとも気まずかった。

「俺もだ。正直、ただの臨時メンバーとは思えなかったぜ。モンド、お前みたいに強くて優しいやつが追放されるなんて、世も末だな」

「僕も同感です……。それとここだけの話、グロリアさんだけでなく、ガムランさんも時々鼻をすするくらい、モンドさんとの別れを惜しんでたんですよ」

「お、おいワドル、余計なこと言うんじゃねえ! そういうお前だって目が赤いぞ?」

「こ、これは目にゴミが入っただけでして……」

「みんな、ありがとう。今までのことはきっと忘れない。ジンと会えるといいな。それじゃ……」

 馬車に乗り込んだグロリアたちは俺から少しずつ遠ざかりながらも、ずっとこっちに手を振り続けていた。あれ、なんだか視界がぼやけてきたな……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...