学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し

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五八話

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「…………」

 転がっていたサイコロが完全に止まり、処刑するターゲットが遂に決まった。

 何が出たのかというと、5だ。つまり、永川をこの世から抹殺することになる。

「わぁいっ、5が出ましたぁー!」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて無邪気に喜ぶラビ。これから処刑されるやつを決める儀式だったとは夢にも思うまい。

「あれれ、ユートさま、顔が赤いですよ……?」

「あ、あぁ、ラビが可愛いと思って」

「はうー」

 処刑が迫っていると思うとなんだか興奮してきたので、俺は『クール』の魔法を自分にかけることに。ここは冷静にならないと、大して苦痛を与えることもなく一気に殺してしまうからだ。

 っと、そうだ、教室へ行く前にファグたちの様子を見にいくか。夜更けまで騒いでたとはいえ、もう昼を過ぎてるわけで、とっくに起きてる頃だろうしな。

「ちょっと出かけてくる」

「はぁい。すぐに帰ってきなさい!」

「ははあ、できるだけ早く帰るよ、ラビさま」

「あ、あうぅ……」

 ラビの痙攣する兎耳と恍惚とした顔をたっぷりと堪能したあと、俺は『ワープ』でファグたちの元まで飛んだ。

 ――あれ? テント内には俺の『アバター』だけが横たわっていて、ほかには誰もいなかった。

 まさか、一向に起きない俺の分身に呆れて先に行ってしまったかと思いきや、外から話し声が聞こえてきた。『アバター』を消して聞き耳を立ててみるか。

「さっきから開き直ってるけど、リズがああいうことをしたせいでユートが逃げ出しちゃうかもなんだよ!?」

 ミアの声だ。かなり興奮してるのがわかる。

「あたしは誘っただけだから問題ないでしょ。ユートの強さは人間離れしてるけど、男女の関係に関しては純粋っぽいし、今後のことを考えてもそういう既成事実を作っておいたほうがいいに決まってるわ」

「…………」

 リズ、計算尽くの行動だったか。まあそりゃそうだよな。

「最低……。普通、そういうのは本当に好きな人とやるもんでしょ!」

「あら、あたしはユートのこと、好きよ? 強い男は大好き。そりゃ、いきなり愛してるなんていうレベルはありえないけれど、情なんてあとから生まれるものなのよ。ミアだって、尻軽女だって思われちゃってるかもよ?」

「ぼっ、僕は違うもん! ユートのことは頼りになるお兄さんだと思って慕ってるし、リズみたいな《魔性の女》から守りたいだけなんだからっ!」

「はいはい。そんなこと言って、色々と下心が透けて見えちゃってるわよ」

「はあっ……!?」

 激しく言い争うリズとミアを、ファグとキーンが戦々恐々の表情で見守っているといった様相だった。

「ま、まあまあ、二人ともそう熱くなるなって。そんなにヒートアップしたらよ、折角ユートがゆっくり休んでるのに起きるかもしれねえだろ?」

「そうじゃそうじゃ。リズもミアも、ひとまずわしのツルツル頭でも見て落ち着くことじゃ――」

「「――邪魔しないでっ!」」

「「ひいぃっ!」」

「…………」

 こりゃ埒が明かないなってことで、俺は普通に起きたように見せかけてその場に現れることに。

「やあ、みんな。おはよう」

「「「「っ!?」」」」

 そんなに驚いた顔をしなくても……。まるで『テラー』をかけたみたいな反応だ。

「いい朝だな。そろそろ出発しようか?」

「そ、そうね、ユートの言う通り、出発しましょ」

「う、うん。ユートが起きたんだから、怖いものなしだしねっ」

「も、もちろん、ユートがいりゃあ負ける気しねえぜ!」

「う、うむっ。ユートバンザイじゃっ!」

「…………」

 みんな、それまでの険悪な空気を隠そうとしたのか、少し芝居がかってたのが可笑しかった。
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