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五六話
しおりを挟む「「「「「――きっ……来たぞおぉぉぉっ!」」」」」
「…………」
正午に近付いてきた頃、生徒たちの悲鳴に似た声が響き渡る。
そうなるのも当然で、廊下の窓から見上げると空が真っ黒になっているのがわかった。おいおい、どれだけいるんだ。
百匹とかいうレベルじゃないぞ。これは……10000匹はいるんじゃないか? 早速【慧眼】でステータスを確認することに。
__________________________
名前 オークデビル
種族 オーク族
HP 6000/6000
MP 100/100
攻撃力 220
防御力 520
命中力 155
魔法力 100
ランク 高級
__________________________
見た感じだと所持能力もないし、ランクも大したことがないが、このHPと防御力を見てもわかるように、かなりしぶといタイプだ。
っと、悠長に解説してる暇はなかった。俺は【ダストボックス】に入ると例の仮面を装着し、待機中のラビを連れて2年1組の教室前へ戻ってきた。既に周囲はバリケードだらけだ。
「ひっく……ユートしゃま、その仮面姿も格好いいでしゅ……」
「ラビ、そんなことより、あのモンスター、見えるか?」
「あ、ひゃい。見えましゅよぉ。真っ黒でしゅうぅ」
「ここで待機して、もしやつらが教室へ侵入しようとしたら一匹残らずやっつけてほしい」
「ひゃーい!」
喋り方は心許ないが、都を滅ぼせるくらいだからやってくれるだろう。
ん、廊下にいる生徒たちの視線が今度はこっちに集まってきた。
「お、おい見ろ、あそこにいるのは仮面の英雄だぜ!」
「よっしゃ、これで勝つるな!」
「仮面の英雄さま、頑張ってください!」
「期待してますから!」
「「「「「逃げろおおぉぉぉっ!」」」」」
「「……」」
一目散に逃げ出す生徒たちを前にして、俺はラビと呆れた顔を見合わせる。まあみんな死にたくないだろうし、こんなもんだろう。
さて、と。派手に暴れてやるとするかな。
そういうわけで、俺は『フライ』の魔法を使って外へ飛び出すと、真っ暗な空を見上げた。やつらは獲物を前にして興奮しているのか、もうかなり迫っているのがわかる。
よーし、ここは急いで片付けたほうがいいだろうってことで、『ヘルファイヤ』で燃やし尽くしてやる。
「「「「「ブギイイィィィィッ!」」」」」
オークデビルの大群が、炎の槍によって次々と串刺しとなり、激しく燃えながら落ちていく。絶影剣の剣風による攻撃でも、一振りするたびに面白いように死骸が降ってきた上、《オークスレイヤー》とかいうオーク族に強くなる称号も得た。
「ちょっ……」
至って効率よく倒してるつもりだったが、やつらの一部が学校の屋上に降下してしまった。いくらなんでも数が多すぎる……。
こうなると『ヘルファイヤ』を使ってしまえば、火事になるから被害が拡大してしまうってことで、『バニッシュ』でしらみつぶしに消していく。
「「「「「ブヒイイィィィッ!」」」」」
「くっ……」
今度は上のほうからオークデビルたちがひっきりなしに迫ってきて、もう目の前の敵を処理するくらいしか余裕がなかった。
一部、屋上や窓から矢やら魔法やらで援護射撃してくれる生徒たちはいたが、最早焼け石に水状態。このモンスター、雑魚のくせに数とHPが多すぎるんだ。
しかも、やつらは仲間の死骸を掴んで盾にしつつ降下するという鬼畜っぷり。こんなやつらが学校に侵入したら、繁殖力も凄そうだし非常にまずいことになる。
「――お前たち、そこから避難しろ!」
「「「「「了解っ!」」」」」
俺は屋上にいる生徒に避難を呼びかけると、前回作ったばかりの魔法『ニューエクスプロージョン』を使った。これなら威力を抑えた上で、かなりの広範囲に渡って敵を殲滅できる。
「「「「「ブヒャアアアアァァッ!」」」」」
屋上付近で光球が爆発し、オークデビルたちの断末魔の悲鳴がこだまする。よしよし、いい感じだ。
ただ、それでも既に数十匹、窓から侵入してることもあり、俺は『ワープ』で2年1組の教室前まで飛んだ。不良グループどころか、担任も含めてあいつら全員、まだ死なれたら困るからな。
「――うさああああああぁぁっ!」
「「「「「ボギャアアアァァァッ!」」」」」
「「「「「……」」」」」
俺を含め、その様子を見ていた生徒たちはみんな呆然としていた。
廊下ではオークデビルたちが次々とラビに突き飛ばされ、窓から落ちたり壁に激突したりして息絶えていたからだ。いやあ、これは強い。まさに人外レベルの怪力だ。心配して損した……。
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