53 / 62
五三話
しおりを挟む「や、やべえよ……」
「す、凄すぎい……」
「あ、ありえん……」
「な、なんなの……」
ファグたちはみんな魂が抜けたようになってる。
まあしょうがない。商人オルネトが超威力の『エクスプロージョン』を何発もこっちに放ってきて、それだけでも相当に肝を冷やしたはずだからな。
だが、そのたびに俺は『ディスペル』で打ち消してやった。【魔法作成】のレベルも上がってるので1秒ほどで魔法の無効化が発動するんだ。
そのあと、商人の魔法を参考にして作った、威力抑え気味で詠唱時間を短縮した『ニューエクスプロージョン』が炸裂し、オルネトは馬車ごと消滅した。これなら周りに被害も出にくい。
そういう意味じゃ『バニッシュ』でもよかったんだが、苦痛がないんじゃ制裁にはならないしな。
ちなみに、やつの恐怖をより増長させるために『テレパシー』も作って使用したから効果覿面だったはずだ。
やがて周囲が暗くなってきたこともあり、俺たちは茂みの中でテントを張ることになった。
一晩ここで過ごすってことで、俺はオルネトの魔法『バリアー』を参考に、一度限りならダメージを軽減できる『セーフティバリアー』を作った。
よーし、早速これがどれくらいダメージを抑えるのか『アナライズ』で調べてみるか。
そういうわけで、俺はみんなが寝静まったのを見届けたのち、『ワープ』で焦土化した場所へ戻った。
まず、結界を張ってない状態の分身に剣風を当てると20000くらいで、直接斬りつけたら50000ほどのダメージが出た。『ニューエクスプロージョン』に至ってはおよそ15000だ。
『セーフティバリアー』を分身に使ってもう一度試してみたら、剣風が大体2000ダメージってことで十分の一しか出なかった。
焦土化した場所を分析したらデストロイの自爆ダメージは18752だったが、『セーフティバリアー』で十分の一にしたら1831だし、食らったとしてもファグたちでも充分耐えられるだろう。
さて、明日は学校にオークデビルの大群が攻めて来る日だってことで、俺はテントへと舞い戻った。
よしよし、みんな寝てるな。モンスターの討伐が終わったら、いよいよ不良グループの虎野たちの誰かを処刑することになる。
重要なイベントが続くなあ……って、もぞもぞすると思ったら、リズがいつの間にか俺の横で寝ていた。胸元が開いてるし、これはまさか、誘惑してるのか……?
「…………」
なのに手を出さないのは失礼だろうか? そんなことを考えていると、彼女に手を握られてしまった。
「……みんな寝てるから大丈夫よ。ねえユート、あたしのことどう思う……?」
「……え、え、えっと、リズは美人、かな……」
「あら、ありがとう。ふふっ、震えちゃって可愛いわ。ユートって、そんなに強いのにウブなのねえ」
「そ、そりゃ、まだ高校生だし……」
「高校生?」
「あ、えっと、学生ってこと!」
「学生……アカデミーみたいなものかしら。こっちだと王族や貴族、商人の中でも一部のお金持ちくらいしか行けないところよ」
「へえ……」
「さあ、世間話なんていつでもできるんだし、もういいでしょ。焦らさないで頂戴」
「……ごくりっ……」
これは、観念するしかないかな……そう思ったとき、左手を誰かに握られるのがわかった。
「ユート、そんなの相手にしなくていいよ」
「……ミ、ミア……」
「何よ、ミア。あんたお子様のくせにまだ起きてたの?」
「お、お子様……!? 僕、もう子供じゃないもん。リズなんかにユートは渡さないんだから!」
「あら、あたしと喧嘩する気?」
「やってもいいよお!?」
「「このおぉっ……!」」
「ちょっ……」
テント内でリズとミアの喧嘩が勃発してしまった。
「ふわあぁ……なんじゃ。やらんのか。いつおっぱじめるかと密かに期待しとったのに……」
「ふわあ……まったくだぜ……」
「…………」
なんだよ、キーンとファグも起きてたのか……っていうか、そんなの楽しみにするなと突っ込みたいし、一歩間違ってたらとんでもないところを見られてたんだな……。
65
お気に入りに追加
1,436
あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる