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三八話
しおりを挟む【隠蔽】スキルを使った俺が『ワープ』で教室へ戻ると、周囲は耳を澄まそうとしているのか異様に静まり返っていた。やはり天の声がしたらしい。
『オークデビルというモンスターの大群がこちらへ向かっているようです。翼を持った身体能力の高いオークです』
オークデビル……オークと悪魔を合わせた感じか。翼を持ってるし、崖の下にあるこの学校に狙いを定めたってわけだな。
『個体の力に関しましては前回のレッドドラゴンよりも劣りますが、空を埋め尽くすほど大量にいるので注意してください。何よりオークデビルは残虐です。男性を食料にし、女性をお……犯し、赤ちゃんがお腹を食い破って出てくるそうなんです……お、おえっ……』
「…………」
天の声の人、自分で言ってて気持ち悪くなったらしい。大丈夫かな……。
それにしても、今回は攻めてくるモンスターの正体がわかったんだな。前回は風邪を引いてたせいか正体を掴めなかったようだ。
『……はぁ、はぁ……し、失礼いたしましたっ……! 私が言いたいのは、今回の敵も、とても恐ろしいということです……。襲来する時間は、明後日の昼頃になるかと思います。なので、皆さま、武器を持って勇敢に戦いましょう。それではっ……おえっ……』
天の声が終わって、周囲の生徒たちがざわつき始める。慣れもあるのか前回ほどの悲愴感は見られなかったが、それでもやはり動揺は隠せない様子だった。
不良グループはどうしてるかと思ったら、いつもの如く教室の後方でふんぞり返っていた。
「ふむ。今度はオークデビルが相手か。だが、俺様の敵ではない。お前たちもそう思うだろう?」
「へい、ボスウ。おいらたちが八つ裂きにしてやるぜえぇ」
「そうそう、如月君みたいな足軽たちに戦わせて弱らせたあとで、ね」
「キングの虎野さんとクイーンの浅井さんに前線で戦わせるわけにはいかねぇしな……」
「ですねえ。今回も僕たち王族は高みの見物といきましょう! ウヒャヒャヒャヒャッ!」
「…………」
虎野たちは相変わらずゴミクズで安心した。何がキングとクイーンだ、王族だ。
俺は黒板に向かって『グラフィティ』を使い、彼らに相応しい悪口を目立つように書いてやった。チキンの虎野、カスの近藤、ビッチの浅井、ザコの影山、パシリの永川、ゴミクズの反田憲明といった具合だ。
「「「「「っ!?」」」」」
ただの落書きではなく魔法によるものなので、一日くらいはキープできるってわけだ。早くも周りから失笑が上がり始めて、虎野たちは見る見る顔を赤くして消しにいったが、どうしたって消えないもんだからそれが余計に可笑しかった。
さて……そろそろこいつらのうち、誰かを始末する頃合いだな。オークデビルたちが攻めてきたら、それを片付けたあとで一匹葬ってやろう。
っと、効果が切れかかってるのか、席に座っている俺の『アバター』が薄くなってきたので、『コントロール』で立ち上がらせて廊下へと退場させた。
もう一人の分身もそろそろ消えそうだってことで、俺は【ダストボックス】へ入り込む。
「ユートさまあ? 夕ご飯、もうすぐできますからねぇ。それを食べたら、きっと元気も出ますよう……」
なっ……。ラビは俺の分身を背負いつつ料理していた。おいおい、俺は赤子か。
それに『アバター』だけでなく、なんだかラビの目の光も弱くなってるような。なんせ放置された分身だし、ずっと反応がなかったからだろうか。
「必ず、私がユートさまの病気を治してみせます……うしゃしゃっ……」
なんかいつの間にか病気ってことにされてるが、俺にはラビのほうが病んでるように見える。
すぐにでもファグたちのところへ戻ろうかと思っていたものの、これ以上彼女が変な風になると困るし【隠蔽】を解除してしばらく側にいてやるか。あと、ここには分身を置いていかないほうがよさそうだな……。
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