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三五話
しおりを挟む「むにゃ……ユートしゃま、わたひと一緒に、いなしゃい……」
「……ふう……」
ラビはベッドで幸せそうに俺の『アバター』を抱きしめている。こうでもしないと放してくれないからな。
さて、と……。俺は自身に【隠蔽】を使用し、【ダストボックス】を出た。そこで『アバター』をもう一体作り、『コントロール』で教室へ行かせることに。
自身の分身を生み出す魔法『アバター』は本当に便利で、何体も同時に作れる上、朝から夕方まで維持できるんだ。
また『コントロール』によって、天の声が聞こえたら本体の俺に知らせることもできるので、気軽に学校の外へも行けるようになった。
というわけで、俺は異世界を冒険するべく『ワープ』で山の麓まで飛んだ。周囲には、霧がかかった草原が広がっている。そうそう、ここでプリンやホルンと別れたんだよな。今頃元気にやってるといいが。
そんなことを考えつつ、当てもなく徒歩でフラフラと彷徨い始める。霧で視界が悪いので、『フライ』の魔法で高く飛びながら一気に次の町まで進もうかとも思ったが、それだと小さなイベントとか見逃しそうだしな。
「――ぐっ……ぐぐっ……!」
お、向こうのほうから誰かの呻き声が聞こえてきたぞ。空を飛んでいたらおそらく聞き逃していたはず。早速様子を見に行くとするか……。
「「「「「ゲヘヘッ……」」」」」
「…………」
妙な声は聞こえてきたが、いまいちよく見えないな……。
ってなわけで、俺は『クリア』の魔法を作って視界を良化しつつ前を見据えた。
すると、斧を持った十匹ほどのトカゲ人間たちを相手に、四人パーティーが戦っている様子がはっきりとわかった。
ただ、大きな盾と剣を持った男が奮闘しつつも、ほかの三人の仲間たちは苦し気にうずくまっており、防戦一方になっている。これじゃ全滅するのも時間の問題だからなんとかしないと。
ってなわけで、俺はまず【慧眼】スキルをリザードマンに使う。【魔法反射】とか持ってる可能性もあるからだ。
__________________________
名前 イモータルモニター
種族 リザード族
HP 60000/60000
MP 500/500
攻撃力 320
防御力 740
命中力 315
魔法力 500
所持能力
『超再生』『アックスブーメラン』
ランク 超高級
__________________________
やたらとHPがある点と、『超再生』というのが気になるが、さほど脅威には見えない。
俺はまず相手の気を引くべく一気に前へ出ると、挑発する効果の『プロボーク』という魔法を作ってやつらに使用する。
「「「「「ウッ……ウオオオオオオォッ!」」」」」
よし、成功したようだ。大きなトカゲどもが体色を赤く染め、怒り狂った様子で俺のほうに斧を投げつつ駆け寄ってくる。
斧を回避したところで『エターナルスノーデス』の詠唱が終わり、やつらは俺の目前で一斉に凍結した。これが『フローズン』や『ストップ』だと発動は早いが一体ずつになるからな。
さて、あとはなんらかの攻撃魔法を使ってとどめを刺してやるとするか――
「――いっ、今のうちに逃げろっ、そこのあんた……!」
「えっ……?」
盾を持っていた男が苦し気に声を張り上げてくる。
「そ、そいつらは不死身で、灰になっても復活できる……! だ、だから、早く逃げるんだ……ぐぐっ……」
「それ以上はもう喋らないほうがいい。よくわかった。こいつらは俺が倒す」
「なっ……?」
男は俺の返しに驚いた様子だったが、こっちには勝算があった。
灰になっても復活できるっていうなら、別の手段を使えばいいってことで、俺は『バニッシュ』という魔法を作成して詠唱してみせると、およそ十秒後に凍ったリザードマンの群れは跡形もなく消失した。
灰になっても復活するなら、灰さえも残さなきゃいい。
「す、すげえ……」
「すごぉい……」
「神じゃ……」
「信じられない、わ……」
そんな言葉を残し、四人パーティーは気を失ったのか次々と倒れた。あんなに傷だらけなのにみんなよく耐えてたもんだ。
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