上 下
26 / 62

二六話

しおりを挟む

『え、えっと……生徒の皆さま、遅れて申し訳ありません、寝坊しちゃいました……てへっ』

 おっ……かなり遅れて天の声がしたと思ったら、寝坊しちゃったんだな、納得。

 まあ昨晩はモンスターが攻めてきたわけで、学校中が混乱したせいで遅くまで起きてたんだろうし仕方ないか。俺たちを召喚したこの人も、多分どこかで救世主を探し回ってたはずだし。

『昨夜、仮面をつけて学校を救ってくださった方、本当にありがとうございます! とっても素敵でしたっ……! それと、この方のように勇敢に戦い、消火作業に協力してくださった方々にも、深く感謝いたします!』

「…………」

 いやー、照れちゃうな。天の声の人にも見られてたか。

「「「「「ぐぐっ……」」」」」

 不良グループのほうをちらっと一瞥すると、連中が嫌いな仮面の英雄が褒められたせいか、揃って顔をしかめていて今にもブチキレ寸前といった感じだった。

『これからも、この学校を何かが襲ってくる気配があればお知らせいたします。ところで、現在不足していると思われる食料については、近いうちに補充を考えておりますが、そんなに沢山あるわけではないので、どうか節約をお願いしますねっ!』

 ん、天の声も食料について言及してきたな。どうやら影山の言っていたことは本当だったらしい。

 というか、前回食料が配布されてそんなに間がないのにそんな状況になってるってことは、学校にいる誰かが独り占めしてるってことだよな。よーし、いっちょ調べてみるか。

 ってなわけで、俺は【隠蔽】スキルを自身に使い、自分のところ以外の新校舎の教室や職員室を見て回ることにした。

「――うう、お腹すいた……」

「……め、飯が欲しい。誰か、一口だけでもいいから、恵んでくれ……」

「……はあ、死にそう……もうダメかも……」

 そこでわかったのは、まともに食べてないのか顔色が悪くて元気のない生徒がかなり多かったということ。

 姿を隠したまま職員室に入ると、一人の女子生徒が教師たちに向かって食べ物について相談している様子。

「お願いです、具合が悪くなっている人もいるので、少しだけ恵んでもらえないでしょうか……!?」

 中々立派な生徒もいるもんだなあ……って、このお下げ髪の女の子、どっかで見たことがあるような。気のせいだろうか。

「ダメだダメだっ! 帰れっ! 私たちを飢え死にさせるつもりか!?」

「そうだぞ、分をわきまえたまえ。たかが生徒が」

「そうよ。大体、こっちが飢え死にする可能性だってあるんだから、自分たちでなんとかしなさい」

 おいおい。反田を筆頭にしたクズ教師陣に一蹴されてて俺はドン引きした。

 もちろん『タライ』+『ラージスモール』で大きめのタライを落として制裁してやったが。

「「「「「ぶへっ!?」」」」」

 特に反田は怒っていて、『悪戯した生徒はどこにいる、出てこい、殺してやる』と怒鳴っていた。教師が言っていいことか? いずれはお前の遺影を作ってやるよ。

 さて、食糧不足になっているのは明らかってことでなんとかしないとな。

 正直、そこまでやる気があるわけじゃないんだが、これをスルーするなら仮面の英雄というよりもだ。ただ、悪というのは常に存在するはずだし、細かいものまで潰してもきりがない。

 ってなわけで、俺は聞き込みする無駄を省くため、【魔法作成】スキルによって『ガイド』という魔法を作り出して使用し、食料を独占している大悪党がどこにいるのか案内してもらうことに。

 お、早速矢印が出てきたから、こっちに進めばいいんだな。犯人を見つけたら、独り占めした理由を直接問いただしたあとで始末するつもりなので、俺は【隠蔽】スキルを解除しておいた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...