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十一話
しおりを挟む気絶したラビを『アウェイク』の魔法で起こしたあと、俺は彼女と二人で紅茶を飲みつつ楽しく語り合うことに。まずは自分の世界のことを色々と彼女に話した。
いじめの話はさすがに空気が重くなりそうってことで、異世界にはないであろう遊園地とか映画館とか。
「へえー、ユートさまの故郷、とっても楽しそうですし、私もいつかは行ってみたいですね。てか、連れていきなさい!」
「ははっ、行けたらね」
「はぁい」
実は『ワープ』で既に試してみたけど、次元が違いますと表示されてダメだったんだよな。そういう効果の魔法を作っても、おそらく同じメッセージが流れるだろう。帰る方法については、いつかまたなんらかの方法を試してみたいもんだ。
「ズズッ……んじゃ、次はラビの番ね」
「ズズッ……ふぁい、お任せください! 実は私、人に貢献する仕事があると誘われ、気付いたらここにいたのです……」
「えっ……」
それってどう考えても人身売〇じゃないか? 結構ヤバめの話だが、彼女はあっけらかんとしている。
「でも、嬉しかったんです。それまで、私は上から目線だと周りから罵られ、孤立していたので……」
「そ、そうなのか」
「はい。私って、昔からどうしても嬉しいとのぼせてしまい、何々しなさいと命令してしまう癖がありまして……てへっ」
「な、なるほど……」
まあ命令といっても、一緒にいなさいとかなら可愛いもんだ。
「私、とっても寂しがりやですけど、それでもいいなら……是非私と一緒にいてください、いや、側にいなさい!」
「ははあ」
「あ、あうう」
ひざまずいた俺を見下ろすラビは、片方の兎耳をぴくぴくと痙攣させて凄く嬉しそうだった。確かに変わってるかもな。
「うふふ。私って変わり者でしょう? でも、捨てないでくださいね!」
「いや、捨てないし、俺も変わり者だから同類だよ」
「え、ええ? そんな風には見えませんが?」
「隠してるだけだから」
「じゃあ、今すぐユートさまの本性を出してみなさいっ」
「よーし、わかったよ。俺の本性、見せてやるよ……」
「は、はわわ……」
俺はニヤリと笑いつつ立ち上がり、ラビを見下ろしてやった。
「あのなあ……兎ってのはあ、そもそもモフモフじゃないとダメなんだよ。モフモフしない兎なんて、俺は断じて認めないぜ……!」
「え、えぇぇ。そ、それなら、こういうのはどうでしょう!?」
「うっ……ひゃひゃっ……」
ラビが悪そうな顔をして兎耳を俺の頬に当ててくるが、これじゃくすぐったいだけだ。
「こ、これはモフモフではない。体中でモフモフを感じることこそ、真のモフモフなのだよ!」
「うー! それなら、私の体温だけでも……!」
「え……いやいや、脱がなくていいから!」
しかも下着から脱いでたし、早とちりさんだなあ。
俺たちは、それからも会話を弾ませて楽しく過ごしたわけだが、気が付けば夕方になっていた。【ダストボックス】に入ったのが確か朝の9時頃だったのにもうこんなに経ったのか。楽しいと時間が過ぎるのって本当にあっという間なんだな……。
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