全て逆にするスキルで人生逆転します。~勇者パーティーから追放された賢者の成り上がり~

名無し

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85.矜持

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「はははっ……あっはっはっは!」

 謁見の間に、王の場違いな笑い声がこだます。

「お……王様、笑ってる場合では……。早くここから逃げませぬと――」
「――その必要はない、大臣! わしはな、これでも長い歴史を持つこの国の王なのだ。逃げも隠れもせぬわっ!」
「へえ……」

 ソムニアに対してよっぽどトラウマがあるのか兵士たちも逃げてしまって、謁見の間には王と大臣のほかに俺とソムニアがいるくらいだ。しかし、やつらにしてみたら絶望的な状況なのに中々勇敢なことを言う王様だな。病気が治ったせいか声もよく出ていて張りがある。

「王様らしく大層ご立派な言い分だが、俺と自由になった狂戦士を前にいつまで強がって笑ってられるんだろうなあ……?」
「馬鹿めが……強がってるのは平民のお前であろうっ!」
「……ん?」
「どうせその者の兄の仇を取りにきたのだろうが、殺したいならさっさと殺せばよかろう! だがな……それからどうする? 誰がこの国を治めるというのだ……? まさか平民のお前か!? 国民が従うはずなどなかろうが! 王を殺した罰当たりな男を……反逆者に過ぎない卑しい平民のお前を誰が信じるというのだ……!? お前のちっぽけで愉快な反逆者の村人どもだけだろう!」

 偉く興奮した様子で捲し立てる王。よく頑張ったな。とはいえ、あまりにもお粗末な言い分ったので心には響かなかった。

「……馬鹿だなあ。ここまで愚かな王だったとは。俺の予想を遥かに超えていた」
「何ぃ……? どうしてそう言い切れるのだ! それがただの悪口ならば、まさに泥臭い平民らしき幼稚さと無教養さを曝け出しているだけだぞっ!」
「ソムニアの兄は俺が生き返らせるつもりだ」
「……え?」
「死と生を逆にするだけでいいからな。正直、生死関連ではこのスキルを使いたくないが……その要領で村人たちも蘇らせた。だから仇を取る必要なんてないんだよ」
「……で、では……何故ここに来たのだ……」
「一応、王様だから魔王退治の報告をしにきたっていうのと、重病を治すために。それと、ソムニアに見せてやりたかったんだ。あんたの見苦しい姿を、な……」
「……オ、オルド……賢者オルド……」
「……ん?」
「今からでも遅くはない……。貴族になるがいい。ここに平民は初めからいなかったのだ。それから、わしのお主に対する憎しみも逆にしてくれ。できればお前とやり合った記憶もな。それならみんなハッピーであろう……?」
「……」

 哀れな王だ。ここまで俺にコケにされた以上、平民としての俺を抹殺することしかプライドを保てそうにないってことなんだろう。

「悪いが断る。俺は貴族なんかより平民でいたいんでな。妙なプライドとかそういうのに固執したくないし、途轍もなく見苦しい今のあんたを見れば尚更。それじゃ、ごきげんよう……。行こう、ソムニア、ブラックス」
「うんっ」
『ウムッ』
「このっ……無礼者めがああぁっ!」

 王が投げてきた王冠を、俺は背中を向けた状態でキャッチしてみせた。もう能力を隠す必要もないからな。

「王冠、くれるのか? でもこんな汗臭いのいらないし気持ちだけ受け取っておくかな。あ、お礼にこれやるよ」

 俺は王の足元に向かってナイフを転がしてやる。

「死ぬのが怖くないのなら、卑しい平民の俺に何度も助けられたのは最高に屈辱的だろうし、自決をお勧めするよ、王様」
「……ぬ……ぬううぅっ……!」
「……」

 視線を逆にしてみると、王はそれを俺に向かって投げようとする仕草をしたが考え直したのか自身のほうに向け、しばらく経ってから足元に落とし嗚咽を上げ始めた。ようやく負けを認めたか。これからも彼には末永く王様でいてほしいものだ。

「くれぐれも無能な働き者にならないように、じっとそこに鎮座していてくれ。そのほうが俺たち平民は助かるんだからな」

 俺の投げかけた言葉に対し、王はただすすり泣くような声にならない声で返してきた。死を覚悟している人間に対して感情的になって楽に死なせてやるより、こういうやり方のほうがよっぽど屈辱的だし苦痛も味わえるだろう。これで少しは平民に対する考えを改めてくれたらいいんだがな……。
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