全て逆にするスキルで人生逆転します。~勇者パーティーから追放された賢者の成り上がり~

名無し

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78.分かれ道

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「オ……オルドどの……は、話をしたい……」

 明らかな変化はすぐ訪れた。エスティルの怖気づいたような台詞から、それまで勇敢に攻撃してきた勇者パーティーは綻びを見せ始めたのだ。

「ん? 話があるのに手は出してくるのか? 矛盾してるよなあ?」
「「「「……っ」」」」

 やつらが一斉にはっとした顔で攻撃を中止して後退するが、それでも隙あらば何か仕掛けてやるという姿勢は崩さなかった。交渉を持ちかけている風に見せかけて、あわよくば倒そうとしてるのが丸わかりで気に食わないがまあいいだろう。

「じっ……実は、全部王様から命じられてやったことなのですぅ。魔王を退治したらオルドを殺せ、と……」
「……そうか。本当なのか? マゼッタ」
「嘘ですぅ。……あ、あれっ!?」

 久々に本音と建て前を逆にしてやった。まあ嘘なのは知ってたが、王からの命令というのもあながち嘘じゃないんだろう。平民出身のくせに成り上がったってことで俺を毛嫌いしてるからな。

「な……なあ、オルド、もうさ、忘れようぜ……?」

 勇者アレクが妙なことを言い出した。

「忘れようだと? ここまで酷いことをしておいて、俺に何を忘れろっていうんだ?」
「そ、そりゃあ俺たち、色々あったけどよ……もういい大人じゃん? なのに、いつまでもガキみてえにやり合うとかさあ……よく考えたら馬鹿みてえだろ?」
「……」

 呆れて物も言えないとはこのことだ。ガキがどうの、どの口が言うんだか……。

「そ、そうよ、オ、オルド。子供っぽい真似はもうやめにして、全て忘れましょう? 幼馴染としては残念だけれど、私たち……別々の道を歩むべきだと思うの……」
「ロクリア」
「なっ、なあに……?」
「よく頑張ったな」
「……へっ?」
「俺の名前を言うのも嫌だっただろうに。だから頑張ったって褒めてやったんだよ。うん、確かに別々の道を歩むべきだ。アレクの言う通り、俺たちはいい大人なんだからな。ま、お前らが相手だと喧嘩しようにも弱すぎるし、嫌がらせしかしようがないっていうのもあるが……。それじゃ――」

 俺は挑発するように涼しい笑みを投げかけたあと、やつらに背中を向けてゆっくりと歩き出す。

「――クソオルドオオオォォッ!」

 間髪入れず後ろからアレクが飛び掛かってくるのがわかる。お、火事場の馬鹿力ってやつか、物凄いスピードだ。やるな……。



 ◇ ◇ ◇



「クソオルドオオオォォッ!」

【勇壮】スキルを使ったアレクの渾身の一振りが、オルドの体を頭上から真っ二つに両断する。

「……バッ、馬鹿、な……」

 オルドの無念そうな声とともに体が左右に分かれて大量の血が噴き出る中、アレクは飛び回って大喜びした。

「やった……ついにやったぞおおおおぉぉっ! クソオルドを倒したっ! やっつけたんだ! 俺が、この俺がなっ! これでっ……これで俺が名実ともにナンバーワンだっ! ヒャッハー!」

 興奮のあまり喚き散らすアレクだったが、ロクリアたちが呆然としていることに気付く。

「……お、おい、どうしたんだよ、みんな! なんでそんな顔してんだよ! クソオルドをぶっ殺してやったってのに――」
「――誰をぶっ殺したって?」
「……え?」

 アレクが信じられないといった顔で後退する。オルドの遺体は消え、声まで聞こえてきたと思ったらすぐ目の前に立っていたからだ。

「……なっ……なっ……?」
「どうしてこうなったのか知りたいか、アレク? 俺の【逆転】スキルで、お前の都合のいい妄想のクオリティを逆にしたんだ。だから、ただの妄想だと思ってるものが現実のように見えたってわけだ」
「「「「【逆転】スキル……?」」」」
「ああ。それでなーんでも逆にできるんだ。覚えがないか……?」
「「「「……あっ……」」」」

 何かを察したのか、ロクリアたちの体が打ち震える。

「それじゃ、元気でな。もう会うことはないだろうが……あ、フェリル、クオン、お前たちはこっちに来いよ」
「うむ、ずっとこんな卑劣な連中の味方の振りをするのは正直苦痛だった」
「クオンもです」
「「「「……」」」」

 オルドたちはいずれも晴れやかな笑顔で、生気を失ったロクリアたちに手を振って別れるのだった。
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