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21.復活
しおりを挟む「何!? 魔王がもう復活しただと? バカな……。やつを退治してからまだそんなに経っていないというのに……!」
謁見の間にて大臣から聞かされた言葉に対し、王が驚愕した様子で立ち上がった。
「……残念ながら、異界へ通じる狭間地帯がバルドリア地方に出現したという多数の目撃証言からも、ほぼ間違いないかと……」
「バ、バルドリア地方だと!? ここからそう遠くない場所ではないか! むう……このままではまたモンスターで溢れ返るぞ! 大至急、ここへ勇者パーティーを呼ぶのだ!」
「……既に呼んでおります。直に来るかと」
「おおっ、さすがに話が早いな」
「ところで、お言葉ですが王様……」
「む、なんだ? 申してみよ」
「……まだ声はかけておりませんが、賢者オルドも召集の対象でございますか……?」
「……バ、バカを言うな! やつは不敬罪で追放したにもかかわらず、今も身分不相応な態度で勇者たちに姑息な嫌がらせを続けていると聞く! 今すぐひっ捕らえて八つ裂きにしてやりたいくらいだというのに……」
顔を真っ赤にして興奮した様子で捲し立てる王に対し、大臣は呆れ顔で首を小さく左右に振った。
「……しかし王様、あの男がいなければ魔王を倒すことは到底不可能だと思われます……」
「何? どういうことだ?」
「魔王は復活するたびに以前よりずっと強化されるため、オルド抜きでは太刀打ちできない可能性が高いのであります……」
「……うぬう。では、またあの卑しい者の力を借りねばならんということか……。だが、そんなに都合よくいくものなのかね……」
急に小声になるも言葉を続ける王。
「やつはこの国を、勇者パーティーを恨んでおるだろう。そんなやつに再び力を与えれば、魔王より先にこっちが滅ぼされかね――」
「――それならご心配には及びません、王様」
そこに現れたのは、僧侶ロクリアを始めとする勇者パーティーの面々だった。
「こちらに良い考えがございます……」
◇ ◇ ◇
「グルルァ、聞いたか? オルドよ」
「ウミュァアッ、聞きました? オルド様」
「どうした? フェリル、クオン。そんなに血相を変えて。こんなに目覚めのいい朝だっていうのに……」
被追放者の集落は目に見えて人の数が増えてきたと感じている。それだけ住みよい環境になってきて噂が広まりつつあるということだろう。
「確かに良い朝だ……って、それどころではない。魔王が復活したのだぞ?」
「大変なのですよ?」
「それなら知ってる」
「「ええっ?」」
「気配でなんとなくわかるし、こういうのも届いてるからな」
俺は、王都の広場でばら撒かれていたチラシを二人に見せてやった。
『オルドという者を捜している。かの者の名誉回復及び魔法力を半分返却等、条件次第で検討するゆえ、拝見した場合は是非返答を頂きたい』
「グルルァ……なんと都合のいい……」
「ウミュァ……これは完全に罠ですね。不幸の臭いがします」
「あぁ、多分そうだろうな。ただ、魔王の件があるから俺を捕まえたところで下手に手出しはできまい。俺がいなきゃ倒せないのは明白なんだし……」
魔王は復活するたびに格段に強くなるらしいからな。おそらく、復活が異例の速さだったのはロクリアが魔王にかけたバフが原因だろう。魂までも強化してしまったというわけだ。
「しかし、向こうはどんなスキルを用意しているかわからぬ。このままでは魔法力も半分にされてしまうし、うかつに飛び込めばオルドとはいえ危険が及ぶかもしれんぞ」
「クオンもそう思います」
「……二人とも心配性だな。俺には例のスキルもあるだろ? やつらの考えてる通りにはさせない。その裏をかいてやるんだよ」
「ふむぅ」
「ウミュゥ」
正直、このまま勇者アレクを弄り倒すのもマンネリ気味だったしちょうどいい機会だ。というか、やつはもう手紙を何度出しても広場に来ないからな。どうやら先日俺がやつにやったことが相当効いたらしい。
多くの野次馬の前でアレクが服を着た状態や隠そうとする行為、さらには小声と台詞の内容を逆にしてやった結果、やつは全裸になった上に大事なところを隠そうともせず、『どうかみんなで俺を見てくれ!』と大声で叫んでたから、爆笑の渦の中でとうとう精神が壊れてしまったようだ。
とにかくこれから先、同じような嫌がらせを続けてたらいずれロクリアたちに俺が何か力を持ってるとバレそうだし、むしろこの新展開は好都合だ。多少相手が調子に乗ってくれないと堕とし甲斐ってもんがないからな……。
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