全て逆にするスキルで人生逆転します。~勇者パーティーから追放された賢者の成り上がり~

名無し

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18.獣

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「凄い……。まさか一日で最高ランクの冒険者になれるなんて……! オルド様には一生頭が上がりません!」

 ライレルは至って興奮気味だった。まるで元パーティー『漆黒の刃』にやり返したことがおまけ程度であったかのように。

 そりゃ、最高のスキル【逆転】を手にした賢者の俺、巨大な狼フェンリルや九尾の狐を人化したフェリルやクオン、それに最強の剣士ライレルがいるパーティーなんだしスタートラインからして違う。

「それより、ライレルはこれからどうしたいんだ?」
「んー……」

 俺が言うと、ライレルは両手の指を絡ませてまごついた。生まれついての女の子より女の子っぽいな。ずっと女の子になりたがっていただけある。

「これ以上望むのは、なんだか贅沢な気が……」
「遠慮するな。今日一日はお前の願いをなんでもかなえる日なんだからな」
「……じゃ、じゃあ剣術道場を作ってもらえないでしょうか……」
「お、いいな。集落の自衛力を強化することにもつながる」
「ですよね。あと……」
「ん?」

 なんだ、ライレルのやつ、顔が赤いがまさか……。

「……ぼ、僕をオルド様の愛人にしてもらえないかなって……」
「……お、おいおい……」

 奴隷の次は愛人か……。

「えへへっ……一応、心だけじゃなくて体もおかげさまで女の子になれたので……」
「そ、それはそうだが……」
「なんでもかなえるって言いましたよね?」
「……」

 ライレルの表情がとても強い。やはりそこは男の子だ。そうだな、そういうのも……まあ、ありか?

「わ、わかった。愛人にしてやろう」
「やったあ! 子供は二人くらいでお願いします!」
「グルルァ、調子に乗るでない、ライレルよ」
「ウミュァアッ、クオンも怒りますよ?」
「てへっ……あくまでも僕はオルド様の愛人の一人ってことにするので、ご心配なく……」
「「「……」」」

 まったく、調子がいいもんだ。欲望に真っすぐな子なのかもな……。

「オルドよ……少々気になったのだが、もしや我もハーレム要員の一人なのか……?」
「クオンもですか?」
「うーん……」

 難しい質問だな。伝説の魔物たちをそんな扱いにしていいのかとも思うが、否定すれば女の子として見てないと思われるかもしれない。

「オルドの側にはいたいが、我は人間と同じ扱いなんぞごめんだ」
「クオンもです」
「……じゃあ、ハーレムっていうよりペットかな?」
「グルルゥ、なるほど、ペットか……ところでペットってなんなのだ?」
「なんなのですか?」
「ご主人様に凄く愛される存在だよ」
「うむ、それなら問題ないな」
「ないです」
「……」

 ハーレムの意味は知っているのにペットの意味は知らなかったらしい。冗談のつもりだったが、まあいっか……。



 ◇ ◇ ◇



(ついに……ついに明日だ……)

 勇者アレクの目は今日も真っ赤に充血していた。気が付けばオルドのことを考えてしまい、怒りによって目が冴えるせいでほとんど眠れずにいたのだ。

(次は……次こそは、最低でも土下座させたあげくオルドのやつに俺の靴を舐めさせてやる。死ぬまでボコるのはそれからだ。見てろ……この俺にここまでの無礼を働いたこと、死ぬ寸前まで後悔させてやるからなあぁぁ……)

 アレクは心の中で何度も何度もオルドを殴打する光景を思い浮かべていたが、どれだけ想像しても満足できなかった。ケダモノ同然まで貶めたはずの相手に侮辱されたことで、昔オルドに抱いていた惨めな劣等感が鮮やかに蘇ってきて、妄想では物足りなくなっていたのだ。

(今思えば……あのとき殺しておけばよかった。やつのような生まれながらの卑しいケダモノは、存在自体が高級貴族の俺にとって害悪なんだからなぁぁ……。畜生、畜生畜生畜生畜生めが……!)

「――うっ……?」

 アレクは苛立ちの余り部屋を右往左往する際、ベッドの角に足の指を勢いよくぶつけてしまった。

「いっ……いっだああああぁぁぁぁっ!」

 足を抱えて倒れ込むアレク。ただの自業自得だが、オルドに対する恨みは増すばかりだった。

「ぶち殺す……必ずオルドをぶち殺す……いでえぇっ!」
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