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第53回 お守り

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その頃、神崎の方は一人森の中を彷徨っていた。

誰も居ないし、ここがどこなのかもわからない。
一応食料はあるが、これで何日過ごさなければなら
ないのかもわからない。

不用意に食べて、食糧が底を尽きるのが一番困る。

クラスメイト達もこの世界に来たのだろうか?
もし、会ったら……。

いや、今会っても見た目も全く違うのだからバレる
事はないだろう。

それに年齢も結構若い。
12歳の青年の身体は結構動ける。
力はどうだろう。

ストレージから剣を出すと、振り回してみる。

それほど重くはない。

「う~ん、一回何かを切ってみればわかるかな~」

ガサガサッと音がするとそこに野生のウサギが飛び
出て来た。

「お肉!待てぇ~!」

神崎が走り出すと、ウサギはすぐに逃げ出してしま
った。
追いかけるように森の中へと入っていく。

すると、ちょうど開けた場所にでた。
ウサギは!と探すと目の前に大きな熊の手の中に捕
まっていた。

弱肉強食とはそう言うものなのだろう。
だが、これはまずい。

神崎は狩る側か、それとも狩られる側か?

「えーっと……失礼しました~」

後ずさろうとしたが、もう遅い。
ウサギを地面に落とすと、熊と目があう。

あきらかに獲物を狩る視線だ。

神崎も覚悟を決めなければならないのだろうか?
まずは相手のレベルを知るべきだろう。
相手を鑑定するとレベル20!?

「これ、無理だろ……」

地面に転がったウサギのがレベルが高い。
まだ死んでいないのか僅かな息遣いが聞こえる。

すると、目に前に『パーティーを組みますか?』と
文字がでた。

もう、なんでもいい。
そう思い、『はい』を押していた。

「嘘だろ、ウサギに何が出来るんだよぉ~!何か使
 えるものは……」

目の前に自分の出来る事といえば……シールドを張る。

「シールド!でて来てくれっーーー!」

叫ぶと、薄い膜が目の前に出て来た。
熊の爪が目の前まで迫って来てる。

ガキンッと爪が止まると、何度も引っ掻いてくる。
一応助かった……。

が、このシールドが切れた時が、死ぬ時。
そう思うと、どうしたらいいかわからなかった。

熊の後ろにいたウサギがこちらにぴょんぴょん飛ん
できていた。

「おい、こっち来んなって!お前死ぬぞ!」

すると、再び目の前に画面がでた。

『ラビットの身体強化をしますか?』

「はい!なんでもする!するからっ!」

ピコンッと音がすると、さっきのウサギがいきなり消
えた。
消えた瞬間、熊の真上に飛び上がっていた。

可愛い顔が一気に牙を剥き爪が伸びる。
顔に飛びつくと目を潰していた。

グォォォオオオオオーーーーー

熊の叫び声に周りの木々を薙ぎ倒し始めた。
もう無差別に攻撃し始めたのだった。

そろそろと後ずさる神崎の目の前では意外な戦いが繰り
広げられていたのだった。


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