ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

文字の大きさ
上 下
24 / 91

第24回 騒めき

しおりを挟む

 翌日、俺はレベル3のまま工事現場へと向かっていた。

【クエスト簡略化】スキルのおかげでいつでもレベルを上げられるとはいえ、それでも24時間の間に一度だけだ。

 これから襲撃、事故、ダンジョンに巻き込まれる等、何があってもおかしくないし、日付が変わる直前までは報酬の全回復を温存したかったんだ。

「――お、あんちゃん、おはよう!」

「玄さん、おはようございます」

 昨晩の悪夢のことが気懸りで足取りは重かったが、何事もなく現場へ到着することができた。まあよく考えたら、ダンジョン内じゃあるまいしスレイヤーが好き勝手できるとは思えない。

 ダンジョンスレイヤーの地位を下げるようなことをすれば、ほかのスレイヤーたちから挙って命を狙われるなんてこともありえそうだしな。

 それに、羽田はあの異常な性格からして敵も多そうだ。実際、コンビニダンジョンで邪魔者が来る前に少し演説するとか言ってたし、やつと同じくらい高いレベルのスレイヤーに狙われている可能性だってある。

 それから俺たちはツルハシを手にせっせと働くことに。変な夢を見たせいで寝不足気味だったものの、体力にステータスを1ポイント振っただけで全然疲れないので驚いた。こんなに変わるもんなのか……。

 やがて休憩時間がやってきたが、ほとんど疲れもなかったのでそのまま一日中働けると思えるくらいだった。とはいえ、単調な作業に飽きてきた頃だったから助かる。

 ん……なんか向こうのほうで、玄さんを含むおっちゃんたちが集まって盛り上がってるみたいだな。なんの話をしてるんだろう?

「あー、あんちゃんが来ちゃったよ」

「なんなんですか、玄さん、まるで俺が来ちゃいけなかったみたいな反応ですが」

「それがよお、ここから最寄りの学校がダンジョン菌にやられちまったみたいでなあ」

「ええっ……!?」

 それって、俺が高校生の頃に通ってた学校じゃないか。

「あそこは確かあんちゃんの母校だろ? しかもよ、スレイヤーに憧れてるっていうから、こんな話を聞かせちまったら行きやしないかって心配になるんだよ」

「なるほど……でも大丈夫ですよ。コンビニがダンジョン化したときは巻き込まれただけですし……」

「そうか、それならいいんだけどなあ」

「…………」

 そう言いつつも、俺は内心じゃダンジョン化した学校へ行きたいと思ってしまっていた。超レアスキルの【クエスト簡略化】があるとはいえ、まだ一般人の身だっていうのに。

 母校の生徒たちは気の毒だが、スレイヤーでもない限り、そこへ行けば命を落とすだけだ。コンビニダンジョンのときは運がよかっただけだと思ったほうがいい。そのときですら裏切られて植物状態になったんだからな。

 それに、あそこは黒坂も通っていたはず。人気スレイヤーっていうくらいだし、母校がダンジョン化されるなら間違いなく突入する。やつに遭遇したら殺される可能性が高いし、あまりにも危険だ。

 俺は何度もそう自分に言い聞かせてるんだが、どうにも落ち着かない。気が付けばソワソワしてしまうんだ。

 仕事が終わったらほんの少しだけ様子を見にいこうかな? それだけなら何も起こらないし……。



 夕方になって仕事が終わり、俺は学校付近へとやってきた。周囲は既に規制線が張られていて、野次馬か、巻き込まれた生徒の家族か、人だかりもできていてなんとも物々しい、張り詰めた空気が漂っている。

 こうなったら一般人は絶対に入れてもらえないはずだし、ホッとしている自分がいるのも確かだった。

 まだ一般人の体ではダンジョン攻略なんて難しいって前回の件で思い知らされたからな。たとえあのスキルがあっても。

 いい加減に諦めろよ、俺……ん、視界の片隅にウィンドウが出てきた。これは……周辺のマップだ。なんでこんなものが出てきたのかと思ったら、すぐに答えがわかった。

 学校の位置に黄色いマーカーが表示されていたからだ。そうか、これはつまり、俺のパーティーメンバーが学校にいるってことだ。

 一瞬黒坂かと思ったが、やつは俺を裏切って攻撃するためにパーティーを抜けてるわけだし、野球帽の藤賀か爺さんの風間しか考えられない。

 どっちなのかわからないが、なんで中にいるんだ? ただ巻き込まれただけなのか、あるいはなんらかの手段でスレイヤーになって突入したのか……。

 どっちにせよ、学校ダンジョンの中に入りたいっていう気持ちがさらに強くなったのも確かだった。

 もし巻き込まれたなら、スレイヤーであれ一般人であれ俺のスキルが助けになるかもしれないからだ。ダンジョン内には虐殺者の羽田や裏切者の黒坂と違って友好的なスレイヤーたちもいるだろうし、彼らが力を貸してくれることだってありうる。

 でも、ああやって規制線が張られたら一般人じゃどうあがいたって入れないし、指を咥えて様子を見守るしかなさそうだが、俺はどうしても諦めきれなかった。何かいい方法はないものか……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志
ファンタジー
高校の入学式当日、烏丸九郎(からすまくろう)はクラス全員の集団異世界転移に巻き込まれてしまった。ザイリック239番と名乗る魔法生命体により、異世界のチームとのデスゲームを強要されてしまう。対戦相手のチームに負けたら、その時点でクラス全員が死亡する。優勝したら、1人につき26億円分の黄金のインゴットがもらえる。そんなルールだった。時間がない中、呑気に自己紹介なんか始めたクラスメート達に、「お前ら正気か。このままだと、俺達全員死ぬぞ」と烏丸は言い放った――。その後、なぜか烏丸は異世界でアイドルのプロデューサーになったり、Sランク冒険者を目指したりすることに……?(旧タイトル『クラス全員が異世界に召喚されてデスゲームに巻き込まれたけど、俺は俺の道を行く』を改題しました)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...