ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

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第11回 多数決

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 どう考えても無理ゲーと思えた【コンビニの虐殺者クエスト】を俺は無事クリアし、超レアスキル【クエスト簡略化】をゲットした。その代わり、虐殺者の羽田京志郎と命懸けの賭けをすることになったが……。

 ボスを倒せば全員生還できるものの、倒せなければ羽田によって皆殺しにされるから責任重大だが、黙っていれば間違いなく全員死ぬわけだしこれでよかった。

「羽田、あんたにもう一つ、お願いがあるんだが」

「なんだ? 佐嶋ぁ」

 お、羽田が俺のことを律義に名前で呼んでくれてる。同等とまではいかないが、一目置いたってことなんだろう。

「俺一人でもいいんだが、どうせなら今までと同じ面子で戦いたい」

「……そんなことか。お前の好きにすればいい」

「ありがたい」

 よしよし、これは地味に大きい。俺が思うに、あのメンバーは一人も死ななかったし強運を持っているはず。だからそれにあやかりたかったんだ。

 高レベルスレイヤーの羽田はボスの強さを熟知していると思うし、レベル1の俺とレベル0の仲間たちじゃどうしようもないと踏んでいるんだろう。



 それから少し経って、俺たちはボスを探すべく歩き始めたわけだが、すぐに【クエスト簡略化】スキルの恩恵を受けることになった。

 通路の方向に矢印が示され、その下にボスがいる方向だと表示されていたからだ。

 このコンビニダンジョンは一方通行だから、方向についてはあまり関係ないとはいえ、ボスが間近に迫ったなら知らせてくれるだろうし、これから大いに役立ってくれる効果であることは間違いない。

「な、なあ、佐嶋、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ……」

「ん? どうした、黒坂」

 歩き始めてからしばらくして、女子高生の黒坂が若干怯んだ様子で話しかけてきた。

「……ネ、ネクロフィリアってマジなのか……?」

「おいおい、そんなの、わかってるだろ……」

 黒坂の質問に対する俺の回答は、どっちでもとれるから問題ないはず。なんせ羽田が後ろからボスとの戦いを見物するべくついてきてるだけに、否定したくても真っ向からはできないんだ。

「そ、そうだよな……」

 彼女はどう解釈したのか微妙な表情を浮かべたものの、多分察してくれたと思う。どう考えてもドン引きされる趣味だし俺自身がそう思いたいだけだが。

「最近の若いモンの趣味は凄いな……」

「…………」

 風間の発言には反応し辛いのでスルーしておいた。

「ま、まあまあ、そのおかげで自分らは助かったんですから……」

 山室の台詞に関してもなんも言えねえ。

「てか、俺は工事帽の趣味なんてどうでもいい。なんでこいつの無謀なボス討伐に付き合わされなきゃならないんだ」

 野球帽の藤賀は相変わらずだな。唯一名前呼びしたくないやつだ。野球帽にとっても同じ気持ちなんだろうが。

「じゃあ、野球帽。あのまま黙って死にたいのか?」

「はあ? バカなのか、お前。その間にほかのスレイヤーが助けにきてくれるかもしれないだろ」

「ふむう……確かに、わしも藤賀とやらの言い分のほうが正しいように思う……」

 風間も野球帽の意見に賛成らしい。

「いや、あたしは佐嶋のほうが正しいって思うけどな。だって、待ってる間にモンスターに襲われるかもしれねえだろ? トラックの運ちゃん……いや、山室さん、あんたはどう思う?」

「んー……正直迷うところですけど、自分も佐嶋さんや黒坂さんのように積極的に行くべきだと思いますね」

 黒坂と山室は今のところ俺の意見に賛同してくれているようだ。

「んじゃ、三対二だから多数決で俺の勝ちってことで」

「チッ……!」

 俺の結論に対する野球帽の舌打ちが、今回だけは心地よかった。



「――あっ……」

 あれから通路を挟んでコンビニルームを十三か所回った頃、俺は思わず声を上げてしまった。

「さ、佐嶋、どうしたんだ……!?」

「佐嶋さん?」

「な、何かあったのか、佐嶋よ……?」

「は、早く言えよ、工事帽」

「いや……なんでもないんだ。ただ、なんとなくボスが近いような気がしてな……」

 こうは言ったものの、俺はダンジョンのボスが間近であることを確信していた。

【クエスト簡略化】スキルの効果により、次のコンビニルームにボスがいることが提示されたんだ。

 このスキルに関しては、虐殺者の羽田もいるし公言しないほうがいいような気がしていた。

 なんせ超レアスキルっていうくらいだし、知られると今後厄介な存在になりそうってことで命を狙われることも充分に考えられるからな……。
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