外れスキル【転送】が最強だった件

名無し

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第四七話 決戦

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「久々ですね、シルウ……!」
「あらあら。あの目立たない子が……」
「黙れっ!」

 カトリーヌがシルウに斬りかかっていて俺は内心ヒヤッとしたが、危なげなくかわしていて驚いた。結構鍛えられてるんだな。美しい……って、それどころじゃない。あれならカトリーヌを止めるチャンスはいくらでもありそうだし、その前に全部終わらせておこう。

 俺はミケの前に立ち、エルフィと対峙していた。

「ごめんミケ、遅くなった!」
「……うふふ……遅すぎますわよ……」
「……」

 ん? なんか口調がおかしいが気のせいか? しかも男が無理して甲高い声を出したような不自然なものだった気が……。まあいいや、脳が疲れてるんだろう。

「そこをどけ、愚か者……」
「愚か者はお前だよ、エルフィ。俺たちの罠にかかったんだからな」
「笑止」

 だからどうしたと言わんばかりにエルフィが大きな手を伸ばして攻撃してくる。ゆっくりに見えてとても速い独特な動きだ。さすが、体術をほぼ極めているだけあって余計な力みを感じさせない。

 遅いようで実は速いというのは本当に厄介で、対応するには高度な慣れが必要になるわけだが、既にカトリーヌと特訓することで対策済みだ。それに加えて剣術鍛錬が10なので、俺たちだけでなく周りの動きまで気配によって手に取るようにわかるのだ。

「まずロン毛、てめえから仕留めるぜえ……」
「そんなもの僕に当たると思うのか! 雑魚!」

 お、あのロンとかいうやつがルザークの投げる短剣を本でことごとく受け流していた。あれはただの本じゃないんだな。盾代わりにもなるのかもしれないし、あの硬さなら殴れば武器にもなりそうだ……って、ブーメランのように時々投げてるし……。ただ、ルザークのほうが笑みを浮かべてて余裕があるらしく、徐々にロンを追い詰めているのがわかった。

「へへっ……軟弱野郎めが。俺のナイフで切り刻んでやるぜえ……」
「……」

 忘れてたがルザークって悪党だったな、そういや……。

「エリンはここなのだっ。あっかんべー!」
「なっ……舐めるんじゃないよ! クソッ! どこだい!?」

 ボーンコレクターのマガレットのやつ、【空気】スキルで消えたエリン苦戦してるな。どうやら挑発合戦はエリンのほうに軍配が上がってるらしい。生意気さでもエリンはマガレットにまったく負けてないだろうしなあ。

「うっ!」

 シルウが痛そうに肩を押さえてる。範囲回復魔法を出しながら戦っているとはいえ、あれじゃやられるのは時間の問題だろう。急いでこっちのことを終わらせないとな……。

「お前も逃げるだけか、愚か者……」
「……どうかなあ?」

 確かにスピードじゃエルフィにはかなわないが、こっちには磨き抜かれた余りあるパワーがある。

「――すうぅぅぅ、はあぁぁぁ……せいっ!」

 俺は深呼吸で自分を落ち着かせたあと、剣をエルフィに向かってぶん投げて驚かせてやった。

 この意外性のある行動こそ、相手を軽く思考停止にさせて膠着状態を打開する鍵になるのだ。実は突然の深呼吸からその流れはできているわけで、ある種の連続攻撃ともいえるだろう。さらにわざと隙を作ってエルフィの拳を受けると、それを手繰り寄せるようにして素手で【一閃】を放った。

「ぬがっ!?」

 エルフィが勢いよく背中から壁にぶつかって地面に落ちる。完全に意識もダウンしてるな、ありゃ。

「……はぁ、はぁ……」

 俺もやつの拳を腹部に受けたことで正直意識が飛びそうだがなんとか堪える。かなりのダメージはあったが難敵のエルフィを倒せた。これぞ肉を切らせて骨を断つ、だ。

「おらおらおらおらあっ!」
「ひいぃっ! た、助け……」

 壁際まで追い込まれたロンが、ルザークの無慈悲な短剣の嵐を前に白目を剥いて失神していた。ギリギリで当たってないがありゃ怖い……。

「……はっ……?」

 周りをきょろきょろしていたマガレットの後ろに小さな火の玉が浮かぶ。あれはどう見てもエリンの魔法だ。

「騙されないよおおぉっ!」

 振り返ったマガレットだったが、そこから逆に髑髏の杖を後方に振り下ろした。見透かしたつもりなんだろうけど馬鹿だなあ。エリンがどこにいようが、彼女のスキル【空気】は存在そのものがなくなるから一応効果中は無敵なんだよ。

「違った!? じゃ、じゃあここかい!? このっ、このおぉっ!」
「ブブー、ハズレなのだー!」
「そこかい! くたばりなっ!」

 ブンブンとエリンの声がした場所で杖を振り回すマガレット。まもなく息切れした様子で下を向いてしまった。

「……ぜぇ、ぜぇ……な、なんで……当たらないのさ――」
「――今なのだー!」
「ぎっ!?」

 その前方に現れたエリンから頭突きを食らい、マガレットは頭を抱えながら倒れた。まさに頭蓋骨の恨みってわけか。さあ、あとは愛しのシルウを残すのみだ……。
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