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38話
しおりを挟む『カケル・・・《飯テロリスト》らしく、俺たちを本気で殺しにきてるな・・・』
『いい加減、無慈悲なテロ行為やめいw』
『これはもう、立派な犯罪ですわ。。。』
「ちょっ……!?」
僕が今発したこの驚きの声は、視聴者たちのコメントに対する反応だけじゃなく、今食べてるものに対する率直な感想でもあった。
あれから、犯人を警察に引き渡した僕たちはカエデちゃんを含めて『死霊のレストラン』ダンジョンで焼肉を囲んでいるところだった。もうね、美味しすぎて驚きしかない。
闇鍋を食べてから時間はそんなに経ってないんだけど、手に入れたばかりの【大食漢】スキルがあるのでいくら食べても平気なんだ。美味しいものを好きなだけ食べたいときには本当に便利なスキルだね。それで胸やけしたり太ったりするわけでもないし。
「焼肉おいちぃ!」
「きゃう~!」
リサとミリル(人型)も、ボスとユニークモンスターなだけあって消化能力も高いのかもう普通に美味しそうにお肉を頬張ってる。凄い。
この焼肉っていうのが、これがまた絶品中の絶品で、その名も『燃える漢の半端じゃねえ俺のカルビのスタミナ定食』なんだ。『燃えカル』とも略されるこのメニューは、A級モンスターのミノタウロスを倒さない限り食べられないってことで、低級ハンターたちの間じゃ憧れの焼肉として知られているんだとか。
そういう僕も掲示板とかで聞いてたけど、まさかこうして食べられるなんて思わなかった。
「いやー、カケル氏。助けてもらった上に、こうして『燃えカル』までご馳走してもらえるなんて、光栄であります!」
「いやいや、注文したのはカエ――じゃなくて、仮面の人だから……」
危うく『注文したのはカエデちゃん』と口走ろうとして、ちょっとヒヤッとしちゃった。ロードしようかと思ったくらいだ。
『てか、燃えカルを食ってるだけでも羨ましいのに、ユメさんとアオイさんの次はカエデちゃんとデートかよお!』
『カケルのやつ、死神ちゃんまでゲットして、受付嬢を制覇するつもりか!?』
『カケルちゃん、俺たち底辺同士の仲間だって思ってたのに、抜け駆けは酷いぜ・・・』
「ははっ……」
嫉妬のコメの嵐に戸惑いそうになる。まあでも、カエデちゃんにとってカケルは命の恩人なんだから当然だってフォローしてくれる人も中にはいた。
そう。掲示板でも話題になってたけど、《テロリスト》の板城十史郎と共犯の仮面の人物が注文したミノタウロスを僕が倒して、その場に居合わせたカエデちゃんを助けたってことになったんだ。
なんで受付から離れてたのかっていう指摘もあったものの、怪しい人がいたから監視しようと思ったというカエデちゃんの言い訳が通用していた。それについては、視聴者たちに仮面の人もばっちり見られてるので問題ない。
「カケル氏、改めて本当にありがとうなのであります。あと、例のことは……」
「いや、大丈夫。仮面の人と同一人物だってことは絶対黙ってるから」
顔を近づけて小声で話しかけてきたカエデちゃんに対して、僕は同じように返した。
「ところで、カエデちゃんはどうして受付嬢とハンターの二刀流を……?」
「それが……わたくしにとって、ハンターというのは休憩時間等にダンジョンへ寄るだけの単なる息抜きなのでありましたが、ひょんなことからレアスキルをゲットしたことで、運命がコロッと変わったのでありまして……」
「なるほど……」
それがあの【死神】スキルだったわけだね。
「それ以降、レアスキルに頼っているだけなのに、わたくしというやつは調子に乗ってどんどんランクを上げてしまって、気づけばもう二刀流が当たり前になっているという事態に……」
「まあ、仕方ないよ。Aランクまで上がるような激レアスキルなら」
「そう言っていただけると、ありがたい……。とはいえ、あと少しのところでやられそうになったことで、目が覚めました。これからは受付嬢に専念しようかと。カケル氏には一生頭が上がらないのであります。敬礼っ!」
「ははっ、カエデちゃんは大袈裟だなあ――」
【――この幼女ハーレム野郎が!もってけ泥棒!】
「……あ、どうも……」
なんかやたらと荒っぽいコメントが来たなあと思ったら、まさかのスパチャだった! 赤紫色の文字で5000円だけど助かる……って、幼女ハーレム野郎!? なんか嫌な予感がして、僕はスキルボードを確認することに。
名前:時田翔
ハンターランク:E★★★
所持スキル:(9/21)
LRスキル【セーブ&ロード】
URスキル【開眼】【殲滅】【異次元開拓】
SSRスキル【神速】【魔物使い】【大食漢】
SRスキル【フェイク】【料理】
称号:《幼女ハーレム野郎》
おお……テロ事件を未然に防いだ上に犯人を突き出したってことで、またしても警察から表彰された影響か、一気に星を二つ貰って三ツ星になってた。★があと一個で低級の中では最上位のDランクとか、いくらなんでも出世するの早すぎ。
ん、所持スキルの横にある(9/21)ってのは何かなって思ったら、【大食漢】スキルの効果で、スキルの枠が20から21に増えたから表示されたっぽいね。
称号は……あははっ……これはもう笑うしかないか。また掲示板でいつもの連中が騒いでそうだ。
「それにしても、動画を見ておりましたが、カケル氏が闇鍋を食べたあとレストランに残るとは夢にも思わなくて。いや、それで助かったのでありますがっ」
「それは……なんか予兆みたいなのがあったからだね。嫌なことが起きる気がして」
まあ嘘はついてないから。
「おおおお、なるほど……。カケル氏のずば抜けた直観力には、頭が下がる思いであります。それにしても、お恥ずかしいところをお見せしてしまい、なんとも……」
「ま、まあ、多分ああやって倒してたんだろうから?」
「それが、その通りで……。まさに、運次第のスキルでありまして。上手くいくときは一瞬で倒せるので、相手がA級モンスターであっても。どうしても、欲が出てしまい……」
「でも、欲望センサーに引っかかったのか中々倒せなかったってやつかな」
「そうそれ! まさに的を得たり、であります! こういうときに限って、当たりそうで当たらなかったのであります。トホホ。しかし今回、新たなターゲットを発見した次第でありまして。げふんげふん……」
「ま、まさか、ターゲットってリサ?」
「HAHAHA! もちろんリサどのも大好物なのでありますが、わたくしは異性というものにも、生意気ながら少し興味が出てきたのであります……」
「そ、それって……」
「……こ、こんなガキみてえな容姿でありますが、今週末、よかったらデートでもどうでありましょうか……!?」
「んー、今週末は予定があるし、来週末なら?」
「おおおっ! さすがカケル氏、掲示板での噂通り、モテモテであります。それでは是非、来週末にご指導のほどを賜りたく!」
「ははっ……」
また掲示板でロリコン扱いされそうだけど、カエデちゃんって結構可愛いところあるし別にいいかな。彼女って【死神】スキルもあるし、怒らせたら魂とか抜かれそうだから怖いけど、僕には何がああろうと【セーブ&ロード】スキルがあるから大丈夫だ。
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