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33話 的

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 洞窟シリーズがやっと終わったこともあって、俺たちは三日ぶりにルディたちのいる異次元ホールの箱庭へ帰還することになった。

「あんっ、リューイ様おかえりなの!」

「おかえりなさいませ、ご主人様ー!」

「うっ……?」

 玄関から飛び出してきたルディとクレアにいきなり抱き付かれてしまった。

「あたし、泣くほど寂しかったんだからね……! ふんっ!」

「大丈夫でしたか? お怪我はしてないですか……?」

「あ、ああ、寂しい思いをさせちゃったな。俺もみんなも大丈夫だったよ……」

「「よかった……」」

「「「「じー……」」」」

「う……」

 周りからの視線が凄く痛い。シグ、サラ、ワドル、アシュリーたちは置いてけぼりを食らった感じの表情でどこか寂し気だ。なのにルディとクレアはうっとりとした顔で俺に抱き付いたままという異様な状況。は、早くこのヤバい空気を変えなくては。

「そ、そうだ、新しいマップを持ってきたよ」

「ホント!? 今すぐ見たいわ!」

「それはわたくしめも是非見たいのですっ!」

 というわけで、例の洞窟をサラに作ってもらった上に山に設置済みなこともあって、そこまでルディたちを連れていくことになった。ようやく変な雰囲気から解放されたな。喜ばれるかどうかは微妙だが。

「――わぁ、これはいい冒険ができそうね。クレア!」

「そうですねっ、お嬢様!」

「そ、それはよかった……」

 普通に喜ばれてしまった。まあ洞窟シリーズを嫌というほど味わってきた俺たちからすると食傷気味だが、ルディたちはずっとここにいるわけだしそれだけ新鮮に見えるってことだろう。

「モンスターがいないのが残念だけど……そうだ、クレア、中でモンスター役をしなさい!」

「そ、そんなぁ、お嬢様あぁぁっ……!」

「……」

 ルディに連れられて行くクレアの悲鳴が遠ざかっていく。まあどんな形であれ楽しんでくれるならいいか……。

「リューイ氏も行くべきではないですかねえ?」

「えぇ?」

 な、何を言い出すんだ、シグは。

「折角だから、リューイさんの道具で臨場感を出してあげないとっ」

「あ……」

 なるほど、サラの台詞でようやく理解できた。ルディたちのために何かモンスターっぽいのを出してやれってことか……って、それなら簡単な方法があるな。

「おいウスノロワドル、モンスター役をやれ! アシュリー、お前もそうしないと追放する!」

「な、なんだと!? 俺様を誰だと心得るかああぁぁぁっ!」

「はあぁ!? お望み通り肉塊に変えてやるですううぅぅっ!」

「……」

 物凄い勢いで中に入っていったな。洞窟であの二人と遭遇したら、普通にモンスターに見えることだろう……。



 ◇◇◇



「「「「「――すげー……」」」」」

「あ、あれは……」

 カイルに連れられてウォーレンが辿り着いた場所、それはボスルームパネルの前であり、1から10までのパネルに彼のメンバーを含む冒険者たちが集まり、挙って驚嘆の声を上げているところだった。

「……妙だな。カイル、なんであんな浅い階層のボス部屋がここまで注目されてるんだ……?」

「いいから自分で見てみろって! ほら、今は1階層のパネル前が空いてるからよ!」

「……」

 不機嫌そうなカイルに言われるがまま、訝し気な表情でパネルを見やるウォーレンの顔色が見る見る青ざめていく。

「……こ、これは……バカな。う、嘘だ、嘘に決まってる……」

 後ずさりしながら声を震わせるウォーレン。そこには、かつて自分たちが追放した錬金術師リューイを擁するパーティーが映し出されていたのだ。

「残念だけどよ……嘘じゃねえ。紛れもねえ事実なんだよ……」

「うん、ウォーレン。カイルの言う通りだよ……ひっく……」

「はあ。あたしらの目は節穴だったんだよ。無能なのはこっちのほうだったねえ……」

「ですね……ぐすっ……」

 カイル、アリーシャ、セシア、レビーナの声はいずれも深く沈んでいた。

「い、いや待て! ただの偶然っていう可能性はないのか!? ほかのメンバーが強かっただけじゃないのか……!?」

 それでも充血した目を見開いて食い下がるウォーレンだったが、メンバーはいずれも首を横に振ってみせた。

「いや、ほかのもよく見ろよ、ウォーレン! 1から10まで全部リューイのやつが映ってるし、どれもほぼあいつだけで倒してるのは丸わかりだ。俺だって認めたくねえが、やつこそ『ボスキラー』だったんだよ……」

「ぐ、ぐぐっ……」

 その場にがっくりと膝を落とすウォーレン。

「……は、ははっ……僕たちが逃した……いや、放流した魚は大きすぎたってわけか……ちくしょう……ちくしょおおおおおおぉっ……!」

 狂ったように叫びながら床を殴り始めるウォーレンだったが、それすらもパネルを見る冒険者たちの歓声に掻き消されてしまう始末であった……。
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