幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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27話 余韻

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「クローズバリア! レッドウォール――ダブルッ……くっ、ト、トリプルッ……!」

「「「「おおおっ!」」」」

 102階層のボス部屋にて、魔術師ウォーレンが見せた渾身のスキル、トリプルキャスティングに仲間たちから驚愕の声が上がる。

 通常、同じ魔法を重ねがけする場合はそれが終わってからでないと発動するのが難しく、三重同時ともなれば尋常ではないレベルの精神的負荷により強制的に魔法が途絶えるため、選び抜かれたエリートでなければ到底できないことであった。

『オオォッ……』

 しかし、ボスのドッペルゲンガーは早くも一枚目の赤い壁を潜り抜けようとしていた。

「ウォーレン――あんたみたいに三重は無理だけど、あたしの全身全霊のバフ、かけてあげるよっ……!」

 補助術師セシアが負けじとウォーレンに対して魔力上昇のバフを重ねがけしてみせると、ドッペルゲンガーが強化された一枚目の壁から押し出される格好になる。

「俺も見せてやるぜ! 男気ってやつをなああぁぁっ!」

「私も女気ってやつを見せてやるんだから! ヒーリングッ!」

 盗賊カイルが炎の短剣を惜しげもなく投擲し、物理における反射ダメージを回復術師アリーシャが透かさず癒していく。

「ふふふ……みなさん、とても頑張っていらっしゃいますね。では、私も一切手加減なしで行かせていただきます。新型劇薬――『スペシャルアシッドボトルEX』――の威力、どうかご覧遊ばせっ……!」

 最後の仕上げとばかり錬金術師レビーナがボスに投薬し、強烈な爆音と黒煙、衝撃波が発生した……。

『――コオオォ……』

「「「「「……」」」」」

 あれから30分ほど経過したボス部屋には、時折嘆息や呻き声が漏れる程度で誰もが無言だった。ウォーレンたちとドッペルゲンガーの戦いはまさに死闘と呼ぶに相応しく、傍から見れた者がいれば例外なしに固唾を呑むような一進一退の互角の攻防だったのだ。

 だが、それはどう贔屓目に見ても『トゥルーボスキラー』でもなければ『ボスキラー』ですらない、一生懸命にボス討伐をしている普通の冒険者パーティーであった。

『グオオォォォォッ……!』

 ドッペルゲンガーの断末魔の叫び声が響き渡り、周囲がたちまち明るいものになっていくがウォーレンたちの表情は一様に沈み、うつむいていた……。



 ◇◇◇



「――『アンチストロング』、投薬準備完了っ!」

「「「「おおぉっ……!」」」」

 さて、これであいつを一体何発で倒せるのやら。シグたち以外にも観衆が大勢いるし少し緊張するが、倒せるのなら幾らでも注ぎ込んでやろうと、俺は3階層のボス、スーパースターフィッシュめがけて作ったばかりの劇薬を投げ始めた。

「……え……?」

 なんてこった。信じられない……。たった一発投げただけでボスが跡形もなく砕け散り、周りの景色が見る見る変わり始めたんだ。

 これは……紛れもなく新記録だ。そうか、なるほど。やつは防御力そのものは極めて高いが、その代わりのように体力が著しく低いボスモンスターだったのか……。

「さすがリューイ氏、サービスステージとはいえボスをたった一発でっ!」

「リューイさん、凄すぎてサラの頭がおかしくなっちゃうよお……」

「ハッハッハ! リューイよ、中々やるな! 俺様が褒めてやるんだからありがたく思え!」

「ああ!? 一人だけ目立ちやがってふざけんじゃねえです! 凄いのはわかったからとっとと抱いてみやがれですううぅぅ!」

「……」

 かなり不穏な誉め言葉があったが、今はまったく気にならなかった。体力の低いボス相手とはいえ、一発で倒せたわけだからな。もちろん周りからの助力のおかげでもあるが、まさに『ボスキラー』の本領発揮ってわけだ。

 周囲から波のように歓声が押し寄せる中、俺は伝説的な勝利の余韻にじっくりと浸りつつ、最高の仲間たちとともに変わりゆく景色を眺めていた……。
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