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20話 行方不明
しおりを挟む「これは……気持ちいいもんだな……」
「いやー、いいですねぇ……」
「サラもたまんない……」
「あうぅ、凄いですぅ……」
「お、おでも……」
箱庭の山中から見下ろせる草原が、夕陽で黄金色に変化しててなんとも神秘的で、しばらく見惚れてしまうほどだった。この素晴らしい景色を一刻も早くルディたちにも見せたくなってくるな……。
というわけでみんなで家の中に入ったわけだが、ルディとクレアの姿が一向に見当たらない。広間、風呂、トイレ、台所等、色々探ったがいなかった。まさか、山の中を探検とかして迷子になってるんじゃ? この山も作り物とはいえ細部まで徹底的に作り込んであるし、もし迷い込んだら自力で戻るのは難しそうだ。
「――あ、みんな、見つけた?」
広間でみんなと顔を合わせたわけだが、一様に首を横に振られてしまった。これだけ探したんだし家の中にいないのは間違いなさそうだ。となるとやっぱり、山の中で迷子になって戻れなくなった可能性が高そうだな……。
「シグ、索敵スキルを頼むよ」
「いやー、リューイ氏、あれはモンスター相手に限るんですよ」
「そうなのか……」
そういや、気配を察知し手繰り寄せる能力が暗殺者にはあるというが、それに関してはクレアがいないとどうしようもないしなあ。かといってみんなで山の中を探し回るってのも効率が悪すぎるし、俺が探知できる道具を発明するとしよう。
「みんな、ちょっと待っててくれ。俺が探知できる道具を作ってみる」
「「「「おおっ」」」」
まず、探している物や人の姿を思い浮かべると、次にお馴染みの夢想種に息を吹きかけ、手の平サイズの土壌に植えたら間を置かずに成長促進剤と水を少量かける。まもなく見る見る伸びてきた思念草を針金に巻きつけ、矢印マークを先端に括りつけるだけで完成だ。
「――できた……」
「「「「はやっ!」」」」
ちなみに大雑把な方向しかわからないが、これを頼りに歩いていけば、いずれはルディたちの元へ辿り着くはず……。
「――な、なんだこりゃ……」
だが、しばらくして俺たちは否応なしに立ち往生する羽目になった。
「な、なんなんですかねえ」
「サラもわかんない……」
「はうー、私もですうぅ」
「お、おでも……め、目が回る……」
最後に発言したワドルの台詞が全てを物語っていた。風もないのに矢印がグルグルと回り始めてしまったんだ。
迷子なら散々歩いてて疲れてるはずで、これはルディたちがゆっくりじゃなく元気に走り回ってることを意味しているように思う。奇妙だな。一体どういうことだ……?
「「「「「あっ……」」」」」
しばらくして、矢印が一つの方向を指したあと動かなくなった。これは、ルディたちとの距離を詰める千載一遇のチャンスじゃないか? よし、あの手でいこう。
「みんな、ワドルの体に掴まるんだ」
「「「えっ……?」」」
「いいから早く!」
「「「ラジャー!」」」
「お、おで、わけわかんね……」
きょとんとした様子のワドルの体に、俺はみんなとともにしがみついた。ガタイが凄くいいので四人くらいなら大丈夫だろう。
「それとアシュリー、バフを頼むよ」
「あ、はいですぅ」
よしよし、力がみなぎってくるのを感じる。それをコーティング薬で維持してやると、俺は大きく息を吸った。相変わらずわけがわからなそうなワドル以外俺の真似してるところを見ると、もうこの時点で何をするつもりなのかみんな察してる感じがするな。
「「「「――矢印が指す方向に走れ、ウスノロー!」」」」
「お、おいおーい! 貴様ら、寄ってたかって俺様をウスノロ扱いか!? ハッハッハ! 命知らずの愚か者どもに忠告しておくがな、俺様を怒らせると命が危ないぜえええええぇぇぇっ!?」
「「「うわっ……!?」」」
まさしくワドルの言う通り、景色が見る見る置き去りにされるほどの驚異的なスピードで、俺たちは一直線に探知機の矢印が指す方向へと突き進んだ。矢印はピタッと止まったままだし、これならすぐにルディたちの元に到着できるはずだ。
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