幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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19話 揉め事

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 102階層への石板と螺旋階段に挟まれた狭い空間にて、一組のパーティーが現れたものの、それがクリアしたばかりの冒険者たちとは思えないほど陰鬱な空気に包まれていた。

「こんな……こんなはずじゃなかった。調子が悪かったんだ、きっと……」

「そ、そうだね。ウォーレン、あたしもそんな気がしてきたわ。あの無能を追い払ったことでさ、ちょっと気が緩んでたかもねえ」

「へっ? 俺はいつもと変わりなかったような――」

「私も――」

「「――……」」

「い、いや、よく考えりゃやっぱり俺も調子悪かったかな……!?」

「私も、ちょっと浮ついてたかも……?」

 いかにもバツが悪そうに、ウォーレンとセシアの調子に合わせるカイルとアリーシャ。それで一旦重い空気は取り払われたかに思われたが、一人だけ無言を貫くメンバーがおり、微妙な雰囲気は変わらなかった。

「……」

「何黙ってるの、レビーナ?」

「あ、いえ、別に。私も調子が悪かったかもしれない、です……」

 セシアに怪訝そうに話を振られ、レビーナがややぎこちない口調で返した。

「やっぱりみんな調子がおかしかったみたいだね。無意識のうちに気が緩んでたところがあったのかも。今度は僕も気合入れていくよ」

「そうだね、ウォーレン。あたし、すぐにでも取り返さないと気が済まなくなってきたよ」

「お、おうっ」

「うん、リベンジしなきゃね――」

「――あの……」

 石板のほうへ近づいたウォーレンたちだったが、レビーナだけその場を動こうとはしなかった。

「「「「レビーナ……?」」」」

「私たち、101階層をクリアしたばかりですよね。疲れたので少し休憩させてください」

 レビーナはうつむいており声も少し震えていたが、口調は強く訴えかけるものだった。

 ウォーレンたちは驚いた顔をしばらく見合わせていたが、まもなくセシアが見る見る顔を赤くしてレビーナを睨みつけた。

「レビーナ、あなたね……そんなこと言える権利あるの?」

「は? 私が悪いんですか?」

「何口答えしてるの。あたしに文句あるわけ……?」

「いえ、別に?」

「その口の利き方、何よ! 喧嘩売ってるの――」

「――ね、姉さん、やめなって」

「おいおい、セシアさん、冷静になろうぜ、な?」

「うんうん、二人とも冷静にっ」

 慌てた様子でセシアとレビーナの間に入るウォーレン、カイル、アリーシャの三人。

「私が全部悪かったです。みなさん。行きましょう」

「わ、わかればいいのよ。わかれば……」

 ウォーレンらの仲裁もあり、ひとまず仲直りした様子のセシアとレビーナだったが、その作ったような笑顔にはお互いへのわだかまりがありありと見られるのだった。



 ◇◇◇



「サラ、あれはできた?」

「うん、できたよ。ほらっ」

「「「「おおっ……」」」」

 3階層の石板前、サラの掌の上に乗った小さな草原を見せてもらったんだが、俺たちの感嘆の声が被るくらい本当によくできていた。

 あの腰高の草原も忠実に再現されてるな。人差し指の腹でそっと草原を撫でてやるとなんともくすぐったく、鼻を近付けると微かに青臭い香りが漂ってきて、本当に憎たらしいくらい精巧にできてると感じた。

「小さいだけで本物より本物っぽい草原だ。さすが、天才商人サラだな」

「ですねぇ、サラちゃん偉いですう」

「サラさん、尊敬……」

「あぁん、そんなに褒められたらサラ照れちゃうよぉ……」

「それじゃあ、ただの愚妹ということでいいですかね!」

「うー、折角気分よかったのに、お兄ちゃんのバカッ! オタンコナスッ! 全然盗賊らしくない盗賊っ!」

「そ、そりゃ、確かにお人よしの盗賊に見えるでしょうがねえ。あんまり僕を怒らせると、サラの絶対に知られたくない秘密を盗賊らしくみんなと山分けということに……」

「そ、それだけはやめてえぇっ」

「「「あはは……」」」

 サラとシグのシュバルト兄妹の天然な喧嘩漫才を楽しんだあと、俺たちは草原を異次元ホールの山の横に設置し、早速小人化の薬を使って休憩の意味合いも兼ねて箱庭全体の様子を見に行くことにした。
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