幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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18話 曇りのち晴れ

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 101階層のボス部屋にて、錬金術師レビーナの投げた劇薬によって視界不良になるほどもくもくと煙が充満する中、ウォーレンたちの表情はいずれも勝利を確信したかのように晴れやかだった。

「さすがレビーナだ、あの無能なんかとは全然違う」

「もう倒したっぽいわね。新記録じゃないかい!?」

「レビーナすごっ……!」

「かー、もっと早くあの無能を捨ててりゃなあ!」

「くすくすっ。私はみなさんのサポートをしたまで――」

『――グルルル……』

「「「「「えっ……?」」」」」

 煙が薄れていく中、不気味に揺らめく影が徐々にその正体を露にしていく。それは紛れもなくボスモンスターのハーティーであった。

「た、倒したはずじゃ……?」

「あ、あれだよウォーレン、首の皮一枚で繋がったんじゃないかい?」

「あっ、そっかあ! 私も、セシアさんの言う通りだと思う!」

「なんだ、そういうことならしょうがねえな。とっとととどめを刺しちまおうぜ!」

「で、ですね。みなさんに勘違いさせてしまい、申し訳ありません……」

 微妙な雰囲気になりつつも、ウォーレン、セシア、アリーシャ、カイル、レビーナの5人がそれぞれ前向きな台詞を吐いてみせた。

『――グルルルァッ……!』

「「「「「はぁ、はぁ……」」」」」

 しかし、あれからかなりの時間が経過したが未だにボスのハーティーは健在であり、ウォーレンたちは心身ともに酷く疲れている様子だった。それもそのはずで、彼らはボスにとどめを刺そうと幾度も攻撃を仕掛けたものの、何度やっても倒すことができずにいたからである。

 パーティーメンバー全員、どんどん重くなっていく空気の中で一言も喋ることはなく、困惑した表情で時折深い溜息を零しながら、ボスへの単調な攻撃と回避行動を繰り返すのみであった。

『グガアアアアァァァッ……!』

「「「「「……」」」」」

 やがてボスの体が崩れ落ち、周囲の景色が徐々に明るくなっていくが、誰一人として喜びの色を見せる者はこの場にいなかった……。



 ◇◇◇



 2階層のボス、スラッシュハーブを討伐した俺たちだったが、元に戻っていく景色の中でなんとも微妙な空気が広がっていた。まあクリアしたのに俺が浮かない顔をしてるからだとは思うが。みんなちらちらとこっちの顔色を窺ってるのがわかる。

 仲間に気を遣わせたくないが、どうにも納得できなかったから仕方ない。1階層のボスに対して35発の『アンチストロング』を投げて倒せたわけだし、それより強い2階層のボスだからもっと減るだろうと予想してたのに50発も要したからだ。

「みんな、悪いな。調子が悪かったみたいだ」

「いや、リューイ氏が謝るなんてとんでもないです。むしろダメージは少しですが上がってましたよ!」

「えっ……じゃあ、どうして50発もかかったんだろうな……」

 俺は首を捻る。2階層のボスのほうが実は弱かった、とか? そんなわけないか……。

「あうう、きっと私のバフが切れていたんですぅ。お詫びに、脱ぎますっ……」

「じゃあ、サラもー」

「い、いや、二人とも脱がんでいい! それにアシュリーのバフは途切れてないよ」

「「えぇっ?」」

 何故か残念そうなアシュリーとサラ。嘘は言ってないが、じゃあ一体何が原因なんだろう? ん、ワドルが何か言いたそうにおずおずと近寄ってきた。

「あ、あのぉ、リューイさん、おで、わかった気がする……」

「「「「教えて!」」」」

「ひ、ひぃっ! そんなにみんなから注目されたら、おで、おで――」

「「「「――ウスノローッ!」」」」

「お……おいおいおいおい、誰がウスノロだ!? ハッハッハ! 無知な貴様らに教えてやろう! 俺様に無尽蔵の体力があるように、あのボスにも立派なタフさがあるに決まっているだろう! それが原因というわけだっ!」

「「「「あっ……」」」」

 なるほどなるほど、ボスが上にいけばいくほど徐々に強くなるのは間違いないとして、体力の違いで使う回数も変わるってことか。

 おまけにここまで浅い階層だとボスの強さなんてあまり変わらないだろうし、体力の違いのほうがものをいうってわけだ。たしかにスラッシュハーブはタフで有名なボスだからな。単純すぎる解答だからこそ灯台下暗しのようなもので気付けなかったらしい。

 100階層のメモリアルなボスもタフで知られてるのにすぐ倒した記憶があるが、あれは強さが段違いだからこそ『アンチストロング』の威力の高さが体力の高さを凌駕した格好なんだろう。ただ、今回50発かかったとはいえ、間髪入れずに連発できたし充分最速記録だと思う。

 俺もそうだろうが、みんな大いに納得したらしく晴れやかな顔をしていた。
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