幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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15話 魔法の言葉

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「……」

 気が付くと、そこは柔らかい日差しが射し込む広間だった。もう朝になったみたいだな。太陽自体は幻だが、現実と同じく朝の時間帯が来ると昇るようにしてあるのでそれなりに時間が経過したことは間違いない。

 それにしても……窓から見る景色を見ればわかるが、普通にどっかの山の中で暮らしてるみたいだ。実際は自分の作った薬で小人化して、サラの作った箱庭の中にいるんだよなあ。宿泊するには虫やモンスターがいない分、普段よりもずっと快適なんじゃないか。

「あ……」

 寝息が幾つも聞こえてくると思ったら、みんな入り乱れる格好で寝ていた。まさに雑魚寝だな、こりゃ……。いずれも起きる気配は微塵もなく、心底気持ちよさそうに眠ってる様子。

 既に100階層まで攻略したことのある俺はともかく、シグたちは初めてダンジョンタワーに挑戦するだけじゃなくてボス部屋まで経験したってことで、みんな相当疲れが溜まってたんだろう。ルディやクレアもボス部屋の話を聞くことで自分たちまで体験したかのように興奮してたし――

「――うっ……?」

 否応なく俺の目を刺激してきたのは、サラのおへそとともに露出した純白の下着や、アシュリーのこれでもかとはだけた胸元、ルディのなんとも傲慢なまでに露出した臀部、クレアの捲れたエプロンドレスから覗く淫靡な太腿だった。

 これは……目に薬、いや毒だな。これ以上こんな強敵を相手にしてたら理性がおかしくなりそうだし、早急に退治するべく俺は例の便利な呪文を唱えることにした。

「ウスノロワドルッ! アシュリー追放っ……!」

「う、うおおおおぉぉぉぉっ! 誰がウスノロだ! ハッハッハ! 俺様はワドル様だぞおおおっ!」

「ざっけんじゃねえですううぅぅ! 追放だあぁ!? 逆にあの世に追放しちまうですうぅぅぅっ!」

「ぬぁっ……!? 一体何事ですかね!?」

「ふえぇっ!?」

「な、なんなのよ!?」

「て、敵襲でしょうかっ!?」

「……」

 次々と飛び起きる仲間たち。まさかここまで大混乱になるとは。ちょっと罪悪感を覚えてきたが、今からダンジョンに行くんだしこれくらいでちょうどいいはず……。



 ◇◇◇



 薄暗いボス部屋にて、まもなく出現した魔法陣の光によって照らされるウォーレンたちの顔には、いずれも充実した笑みが浮かび、今か今かと目を輝かせていた。

「これから、歴史が変わる。僕たちの手によって……。『ボスキラー』という古い通称だけでなく、101階層以降からボスルームパネルを占拠している『スピードスター』という異名を持つパーティーでさえ過去のものになる。リューイという足枷を取り除いた僕たちは、『トゥルーボスキラー』として名を残すんだ……!」

「いい響きだねぇ。無能もいなくなってくれて、その代わりに比較できないくらい有能なレビーナが入ってさ……以前とは生まれ変わったわけだし、あたしたちが歴史をどんどん塗り替えていくんだからぴったりだよ」

「へへっ、セシアちゃんの言う通り、あんな無能と比べるのも失礼なくらいレビーナは有能だしなあ。上位互換の錬金術師と一緒ならどれくらい早く倒せるか、本当に楽しみだぜ!」

「ほんと、楽しみー。お荷物がいなくなったから、一瞬でやっつけちゃうかも……?」

「くすくすっ、アリーシャさん、それはさすがに……。でも、前よりはずっと早いと思いますけどっ」

 魔術師ウォーレン、補助術師セシア、盗賊カイル、回復術師アリーシャ、錬金術師レビーナ……心身を奮い立たせる魔法であるかのように前任の錬金術師を罵り、自信をみなぎらせるパーティーの前に、まもなく強烈な冷気とともに101階層のボス、甚大な巨躯を誇る氷の狼ハーティーが登場する。

『――グルルルルッ……』

「さあ、僕らで新しい歴史を作ろう!」

「「「「おおっ!」」」」

 ウォーレンたちの威勢のいい大声がボスルームに響き渡った。
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