幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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9話 思わぬ遭遇

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「――あ……あれ見てっ、あそこに小屋があるよ」

「「「「あ……」」」」

 もう少しでボス部屋ってところでモンスターが途切れたので、みんなで探すべく山の中を練り歩いていたところ、サラの言葉をきっかけにして木々の中に埋もれるようにボロ小屋があるのがわかった。

 ここはノンアクティブモンスターしか出現しないということもあって、休憩するためのテントなら何度か遭遇したことがあるが、ああいう小屋を見るのは初めてだ。まさか、あんなところで生活してる冒険者でもいるんだろうか……? でも、一体なんのために? 考えれば考えるほどわからなくなる。

「とりあえず行ってみようか?」

「「「「えっ……?」」」」

 みんな俺の台詞にびっくりした様子。まあただでさえ初ダンジョンで緊張してるところで、いかにも怪し気な小屋に近付こうっていうんだから当然っちゃ当然の反応か。でもどうしても気になるんだ。俺はちらりとワドルのほうを一瞥してみたんだが、向こうも察知したのか勢いよく目を逸らされてしまった。

「お、おで、怖い――」

「――怖い? そうか……わかった。ま、ウスノロならしょうがないな」

「お、おいおーいっ! リューイ、誰がウスノロだって? てんめえ……俺様はなあ、あのワドル様だぞ!? 怖いものなんぞこの世にあるものか! ハッハッハ!」

 高笑いを響かせながら小屋まで勢いよく突っ込んでいくワドル。ウスノロと罵倒するだけでこれだから本当に便利……いや、頼りになる。それまでビクビクしていたみんなも彼のおかげで今じゃニコニコだ。

「いやー、ワドル君のあの元気さ、タフさがあれば、多少問題が起きても大丈夫ですからね」

「うん……ワドルならズタボロになっても死なないから安心だもんっ」

「ですねぇ。ワドルさんなら血まみれでも笑ってそうですう……」

「……」

 ただ、よく考えたら冒険者殺しとかそういう物騒なのもいる可能性だってあるし、いくら尋常じゃなくタフとはいえもうちょっと心配してあげたほうがいいかもしれないな。

「ぐわああぁぁっ!」

「「「「――ッ!?」」」」

 ワドルの悲鳴が聞こえてきて、俺たちも急いで小屋へ向かうことに。おいおい、一体何があったんだ? まさか本当に冒険者殺しがあそこに住んでたとか……?

「そこまでです!」

 小屋の入り口前、ワドルが後ろにいるメイドさんから羽交い絞めにされていた。な、何者なんだこの少女、体格にかなり差があるというのに完全にワドルの動きを封じている……。

「ぬ、ぬおぉぉぉ、俺様が小娘如きに動けなくされているだと……!?」

「いくらあがこうと無駄なことです! どうせ盗賊たちでしょうけど、仲間の命が惜しいならとっととここから去りなさいっ!」

 俺たちが盗賊だって……? さてはワドルがテンション高く突っ込んでいったもんだから誤解されちゃったか。しかし、仲間の命が惜しくばって、なんか向こうが言ってることのほうが盗賊っぽいじゃないか。

「――ふわあ、クレア、朝っぱらから一体どうしたっていうのよ……」

「えっ……?」

 小屋のドアが開いたかと思うと、そこからいかにも気の強そうな、腰布と胸当てだけという露出の多い格好の少女が出てくるなり、俺のほうを見てはっとした顔になった。

「あ、あなた、あの『ボスキラー』のリューイ様じゃない……!? どうしてこんなところに……」

「お、お嬢様、盗賊たちはわたくしめが――」

「――んもー、クレアのバカッ! リューイ様が盗賊なわけないじゃない! それに、よく知らないけどその人は仲間なんでしょ!? とっとと放してあげなさいっ!」

「えっ、しかし……」

「早くしなさい! クビにするわよ!」

「も、申し訳ありませんっ!」

 よくわからないが、なんとか誤解を解くことができたようだ。

 しかし、俺が『ボスキラー』の一人で一応有名人だったからよかったものの、そうじゃなかったらと思うとクレアっていうメイドさんが滅法強そうなだけに面倒なことになってそうだな……。
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