幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった

名無し

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6話 紙一重

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 次に俺が開発するのは、なんとも特殊なタイプの回復ポーションだ。

 これに関しては今まで毒系は得意でも、回復系のポーションを作るのが苦手だったこともあり今まで挑戦してこなかったが、俺の劇薬の威力が高いということがシグのおかげでわかったこともあり、それをきっかけにして回復量も上げられるんじゃないかと思ったんだ。

 そもそも、昔から毒は人体の回復のためにも使われていたものだ。強い毒は当然体に悪いが、その分体内に入り込んだ邪気を消してくれるからである。これを応用していけば、人によっては物凄い回復量を得られるはずだ。

 というわけで、毒の成分を多めにして回復ポーションを作っていく。この薬はまさに劇薬ともいえるもので、体力が少ない者に使えば逆効果で死んでしまう可能性が高いが、タフな者に使えばやがて毒が体内で耐性を生み出すとともに回復成分を強く吸収し、逆に高い回復量に繋がっていくという計算だ。

 ……よし、完成だ。試験管から漂う腐敗臭からしてもう、頭がクラクラするほどの毒の量だ。あとはこれをあの人に使うだけでいい。

「――はぁ、はぁ……リューイさん、おで、お腹、空いたあぁ……」

「うおっ……!?」

 げっそりとやつれて目をギョロつかせたワドルがすぐ背後にいたので心臓に悪かった。ポーションの効果を試すべく、一日中何も食べないように指示してたんだ。

 ちゃんと俺の言うことを聞いてくれたんだな。これくらい弱ってると試し甲斐があるというもの。ダンジョンの外に出て暴行してダメージを負わせるよりは飢餓状態にさせるほうが色んな意味で楽だった。

「もうすぐ回復できるからじっとしててくれ」

「うっ……?」

 早速ワドルに向かって特製回復ポーションを投げつけると、瓶が割れて煙がもくもくと舞い上がった。一見乱暴なやり方だが、瓶は極めて柔らかい成分で作られてるので怪我をすることはなく、服を貫通して体内に吸収されていくので濡れることもない。

「う……うがああああああぁぁぁぁぁっ!」

「ど、どうしたんですか!?」

「どうしたの!?」

「どうしましたぁ……?」

 ワドルの絶叫がテント内に響き渡って、寝ていたシグ、サラ、アシュリーが心配そうに集まってきた。

「ポーションを投げつけただけだから大丈夫」

「「「なるほど……」」」

「う、うごごごご……」

「……」

 ワドルのやつ、顔を紫色にしてやたらと呻いちゃってるが、大丈夫だよな。かなり計算したし心配ないとは思うが、反応がヤバすぎて不安になってきた……。

「ごっ……」

 やがてワドルは白目を剥き、口から魂のような白い息を吐きだしたあと微動だにしなくなった。おいおい、まさか弱った体が毒に耐えられなかったんじゃ……って、よく見ると右の口角が微妙に吊り上がってる。これは……毒、すなわち苦痛が快感に変わったことの証明なんじゃないか? よーし……。

「ウスノロー!」

「ウ……ウスノロだと!? ふざけんじゃねえよリューイ、おい、俺様はなー、今最高にハイな状態なんだから邪魔すんじゃねえ! う……うおおおおおぉぉぉっ! 体中に力が湧いてきて、みなぎってるぜえええぇぇえっ!」

「……」

 なんだ、気持ちよさのあまり放心状態になってただけか。

「あのー、リューイ氏、僕も試してみてもいいですかね?」

「サラも浴びてみたいー」

「はわわ、私も是非飲んでみたいですうぅ」

「いやいや、普通は死ぬから!」

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」

 これだけワドルが元気よく叫ぶところを見たら試したくなる気持ちもわかるが、これはあくまでもタフな彼だからこそ耐えられる、猛毒に近いタイプの超特製回復ポーションだからな。とにかくこれさえあれば、ダンジョンでのタンク役も今まで以上にはかどることだろう……。
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