パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
上 下
128 / 130

128.重大な過失

しおりを挟む

 一瞬だった。手足がバラバラになり、鮮血とともに宙を舞うのが見えた……。

「よっしゃああああっ! クソセクトを仕留めたああああっ!」

「またしても作戦勝ちだねっ!」

「おう、ラキル。でもまだとどめは刺してねえし、これからじっくり生きたまま解剖――」

「――誰が生きたまま解剖だって……?」

「「……へ?」」

 俺は無傷だった。そりゃそうだろう。地中のオランドと《反転》で入れ替わってたんだからな。その効果が切れて俺が地上に戻り、今や髪と耳だけでなく手足もないオランドが土の中に戻ったってわけだ。さすがに可哀想なので地上に出してやろうか。

「……あ、あ、ありがとぅ。シェクト……だいしゅき……はぁ、はぁ……」

「……」

 オランド、喜んでるな。相変わらず寒気がするほど気持ち悪いけど、ここまでしぶといと賞賛に値する。もうとっくに死んでてもおかしくないのに……。

「クソ……いや、セクト……参ったよ――」

「僕も――」

「――おっと……」

「「くっ……」」

 そう言いつつ二人ともどうせ攻撃してくるだろうと思って《ワープ》で回避したら、やっぱり予想が的中した。

 本当に油断ならないやつらだが、そういう風に思っていたからこそ、咄嗟に機転が利いて俺はあのとき《反転》という手段を選べたんだと思う。《人形化》とかだと動けないし、視点が限定されてしまうから、もっと慌ててしまった可能性がある。そうなるとミスがミスを産んで重大な失敗につながったかもしれない。

「――ぐはっ! セッ、セクト、俺が悪かった、だから許して……ぐほっ!?」

「うごっ! セクト、ぼ、僕が悪かった……ぬがっ!」

「か、カチュアぁ――」

「――意識回復しないでくださいぃぃ! てか早く死ねってんだよキモ男ぉ!」

「ぶぎっ……」

「……ククッ……おでは……自由、なのだ……」

「……」

 俺の視界には様々な絶望が見世物のように並んでおり、最早それを他人事のように眺めるだけの作業になってきた。一方的に《ハンドクラブ》で甚振られるルベックとラキル、不細工になったカチュアに再び迫るもやはり足蹴にされるグレス、弱り切った顔で満月を見上げるオランド……。

 だが、本当の地獄はこれからだ。決して楽に死なせはしない。

「「――ぶはっ!?」」

 芝居でなく、本当に気絶していた様子のルベックとラキルが、《恵みの手》と《エアクラップ》の乱れうちで目覚める。

「どうした、赤い稲妻、クールデビル。もうかかってこないのか?」

「……ゆ、許してくれ……頼む……」

「……僕たちが悪かった……」

「……グレス、カチュア、オランド、お前たちも何か俺に言うことがあるんじゃないのか?」

「……ゴ……セ、セクトしゃまぁ……許してぇぇ……」

「……セクトさん……私、みんなにそそのかされてたんです……。悪く言えって……。本当はこんなこと、したくなかったのに……」

「「「「黒いビッチ……」」」」

「……な、何を言うんですか。みんなひどーぃ……」

「……」

 追い詰められて、今度は最もバカにしてたはずの俺に媚び始めるなんて、さすが黒いオアシスと呼ばれていただけはある……いや、黒いビッチか……。

「……シェクト……ウスノロは……おでだった……。だかるぁ……許してくで……」

 オランドのやつ、今頃気付いたのか。もっと早くその台詞が言えてれば、もしかしたら俺の気が変わったのかもしれないのに。もう、何もかも遅いが……。

「何弱気になってんだ。祭りはまだまだこれからだぞ? お前ら、存分に楽しもうじゃないか!」

「「「「「……」」」」」

 俺は努めて明るく振る舞ったつもりだったが、みんな元気がなかった。

「おいおい、どうしたんだ? ノリが悪いぞ。そんなに死にたくないんだったら、これから俺に誠意のある謝罪を言えたやつだけ生かしてやろうかと思う。謝罪大会開催ってわけだ。だから元気出せっ!」

 この言葉をきっかけに、周囲から一斉にごめんなさいの呪文が飛び出し始めたので、俺は唾を飛ばしながら大いに笑った。どれだけ謝ろうと、誰一人生還なんてさせるわけないのにな……。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

処理中です...