パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
上 下
126 / 130

126.お人よしの一途さ

しおりを挟む

 状況は俺にとって良くなるばかりだった。オランドは地中から手を出した状態で衰弱してるし、カチュアは不細工になったせいで戦意を喪失してうずくまっている。

 今や俺を攻撃してくる敵はグレス、ルベック、ラキルの三人のみ。その彼らも明らかに動きの質が劣化し続けている。グレスとラキルはそれぞれ【聖蛇化】【悪魔化】することが減ったし、ルベックも【神速】に頼り過ぎたのか露骨にへばっている。

 疲労、損傷、出血、激痛、空腹……体に様々な負担が重なって、心の部分でも乱れているのが目に見えてわかった。とはいえ、ルベックとラキルは昔からとにかく喧嘩が強くて、負けそうになったら手段を選ばないタイプだから油断は禁物だ。

 よし、この辺で少し挑発してやるか。言われてばっかりでも大したダメージはないと思ってたが、塵も積もればなんとやらで結構ストレスになってたしな。

「ゴミグレス、クソルベック、ゴミムシラキル、まだやるのか?」

「ひ、ひひっ。怖くてやめてほしいのかぁ……?」

「……クソクソクソッ! クソセクトの分際で……!」

「あ……あははっ……ゴミムシのくせに言うねえ……。セクト君、よっぽど悔しかったのかな?」

 子供っぽい悪口だとは思うが、やっぱり結構効いてるっぽいな。特にルベックは顔真っ赤で、怒りを隠そうともしない。こんなもんだ。シンプルな言葉って割と響くんだと気付いた。しかもオモチャだと思ってた俺から言われるんだから、苛立ちも二倍増しのはずだ。

「でも……セクト……一緒だよね? それってさ……」

「……ん?」

 ラキルが妙なことを言い出した。

「俺がお前らと一緒? 笑わせるな」

「だって……君の台詞はどう聞いても、聖人が言うものじゃないよ……。その行動だってそう。僕たちを皆殺しにしようっていうんだよねぇ? 散々苦しめて……」

「何が言いたい? 命乞いでもする気か?」

「ク……クソセクトオオオオオッ! てめえ今なんて言いやがったああっ! 命乞いだとおおおおぉぉ!?」

 俺の台詞が逆鱗に触れたらしく、ルベック様が目を剥いて怒ってらっしゃる。

「黙ってて、ルベック……お願い」

「け、けどよお――」

「――だから黙れってんだよおおおおおおおおぉぉぉっ!」

「……」

 ラキルの憤怒した様子は、激怒していたルベックが黙り込むほどの迫力だった。まだまだ力が有り余っていたようだな。面白い。何をしようっていうのか見極めさせてもらおう。

「……セクト、ごめん。命乞いだと思ってもらっても一向にかまわない。実際、死にたくないしね。ただ、僕が言いたいのは、君もクズだってことなんだよ」

「……悪党を成敗するやつがクズだっていうなら、この世に正義は存在しないってことになるが?」

「手段が問題なのさ。冷静になってよく聞いてほしい。君は、僕たちがやったように苦しめて残虐に殺そうとしてるんだよね。いや、それ以上に……。果たして、これが正義の味方のすることかい……?」

「……」

 よく喋るやつだ。その間にもこいつらは俺を殺そうと体を動かしてるっていうのに。話術で動揺させて、あわよくば隙ができたらラッキーっていう下心もあるんだろうな。クズであることは認めてるわけだし。

「お前らの仲間になれとでも?」

「……簡単に言うとそうだね。クズ同士、気が合うと思うんだ。もう君はオモチャのセクトなんかじゃない。『ウェイカーズ』の新リーダーに相応しいよ……」

「……はあ」

 思わず溜息が出てしまった。寒気がする。

「残念ながら、俺はお前らとは違う」

「心の中は違うってことかい? まさか、僕たちを残虐に殺そうとしてる君が聖人だとでも……?」

「俺は聖人じゃなくて普通の人間だよ。……けど、お前らは人じゃない。心を喰われた悪魔だ。だから人を傷つけることも裏切ることも平然とできるんだろ。つまり、モンスターよりも性質が悪い。そんなやつらを殺すことに躊躇なんてない」

 人の姿をしたモンスター、それを討伐するのが悪だというなら、その汚名はいくらでも受けよう。

「セクト……僕たちを信じて……うぅっ……」

 ラキルの目から一滴の雫が零れ落ちた。

「俺が信じるのは人の涙だ。お前らみたいなモンスターの流す液体じゃない」

「モンスターじゃないよ、人だよ……」

「お前らを人だと思っていたセクトは、お前ら自身が崖から突き落として殺したじゃないか。ここにいるのは、お前らが生み出した別人だ。だから、無理なんだよもう……」

「そんなの嘘だ……。覚えてるかい? 故郷のイラルサ生誕祭で、君はよくタダ同然のガラクタを買い漁ってただろう。それを上手く細工して新しいものを作って、僕にプレゼントしてくれたよね。ほら、足で踏むと蓋が開く小さなゴミ箱だよ。今でも宿舎の自室に置いて使ってるよ……」

「確かに、その記憶は残ってる。でも、あの頃の俺には戻れない。情熱っていうか、ひたむきさだけは失ってないけどな。今の夢は、お前らを残さずこの世から消し去ってやることだ……」

「……く、狂ってるよ、そんなの。ね? お願いだから、あの頃の優しいセクトに戻って……」

「だからもう別人だって言ってんだろゴミムシがっ!」

「「「……」」」

 やつらの顔、ラキルを筆頭にぽかんとしちゃってるな。《エアクラップ》なんて使ってないのに。俺が吐くとは思えない台詞だったからか? とりあえずこれで俺はもう昔のセクトとは違うことがわかったはずだ。おそらく、今一番脅威だと思われているであろう頑固な点を除いて。

「なあに、狂うことには狂戦士症で慣れてるから心配しなくて結構。これが終わったら正常に戻るだけだ。それまで盛大に前夜祭を楽しむとしようじゃないか。今はモンスターでも、死ねば人になれる。安心しろ……」

 俺はクールデビル顔負けの静かな笑みを作ってみせた。あのときの野次馬の代わりは、この膨大にある墓場だ。静かではあるが、呪いのような不気味な空気を放ちながらこいつらの死を待つことだろう……。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

処理中です...