パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

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120.不謹慎の極み

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「……」

 ここは本当に墓地なのか? そう疑いたくなるほど、暗くなってきた周囲に笑い声がこだましていた。

 どうやら俺の一言がきっかけになったらしい。俺がここに来たのは、お前たちを殺すためだと正直に包み隠すことなく言ったんだけどなあ。何がそんなにおかしかったのやら……。

「しっ、死ぬっ……。腹いでえぇ……」

 ルベック、地面を転がりながら大袈裟に笑っていたが、ようやく落ち着いてきたらしい。

「……ぼ、僕も……死ぬかと……」

 腹を抱えて座り込みつつ笑っていたラキルがようやく起き上がる。こんなところで死なれちゃったら困るんだよなあ。

「……ク、クククッ。こんのウスノロめっ……きゃ、きゃわいいっ。きゃわいいよっ。はぁ、はぁぁっ……」

「……」

 オランドがウィンクしてきて全身がゾワッとなった。一体どうしちゃったんだ、いくらなんでも気持ち悪すぎる。まさか、本当に狂ってしまったんだろうか? それでも殺すけどな。

「きゃははっ……もーダメ、ひー、苦しー……」

 涙目でゲラゲラ笑いつつ、四つん這いになって地面を叩いていたカチュア。ようやくそれも落ち着いてきたらしく、立ち上がって俺を思いっ切り睨みつけてきたあと、よく見ないとわからない程度に薄く笑った。

「殺せたらいいでちゅねー。期待してまちゅよー? 弱虫で無能でノロマでおまけに気持ちの悪いゴミムシさんに、それができればの話ですけどっ」

 ありがとう。俺のこと心からバカにしてくれて本当にありがとう。これで一切心置きなく苦しめて殺すことができる。初恋の女性……いや、畜生カチュア……。

「ひひっ……中々面白かったぞぉ、ゴミセクトおぉ……」

 グレスはさすがというか、ニヤニヤと笑う程度だった。陰気すぎて笑いのほうが逃げ出すレベルだろうからな。

「さて、誰から死にたい?」

 俺の言葉でまた火がついたのか、グレスを除いてまたしても不謹慎な笑い声が墓場に降り注いだ。

「……ひ、ひー……か、帰ってきたな、ラキル……くー……」

「ぷくく……だ、だねっ。僕たちのオモチャが、ついに……あははっ!」

「いいぞ、ウスノロ、その調子だ……しゅき、だいしゅきっ……プククッ……」

「はぁ、はぁ……もーダメッ。やめてくださ……きゃははっ!」

「ひひっ……ゴミセクトぉ、お前がナンバーワンだあぁぁ……」

 やっぱりグレスだけは笑いに強くて、すぐ元の陰気な男に戻った。それにしても、最初は正直むかついていたが、今ではみんなの笑い声やバカにした視線が本当に心地よい。

 別に俺が変態だからってわけじゃなくて、怒りを通り越して血や肉の中にすーっと入ってくる感覚があるんだ。それが得体の知れない力を生み出して、酒に酔うようななんとも言えない夢見心地になる感じだ。早速頭がぼーっとしてきた……。

「おい、見ろよこいつ。顔赤くなってるぜ。少し寝ぼけてんじゃねえの?」

「……だねぇ。白昼夢みたいな感じで、幻でも見ちゃってたのかも。それか、恐怖のあまり頭がおかしくなったとか……」

「ククッ……ありうる……。俺の……俺だけの可愛いセクト……はぁ、はぁ……」

「ホント気持ち悪いですよね、このセクトとかいう残念な人。変な妄想とか、勝手にするのは仕方ないにしても、外にばら撒かないでもらえます?」

「ひひっ……惨めだなぁ、哀れだなぁ、ゴミセクトぉ……。カチュアぁ、おいでえぇ。俺たちの仲の良さをこいつに見せつけてやろうぅぅ……」

「はいっ」

「「……ちゅー……」」

「……」

 一瞬、視界の何もかもが真っ暗だった。

 きっと頭に血が上りすぎて意識が少し途切れていたんだろう。凄まじいまでの怒りがいつの間にか体中に循環した結果、強力なパワーを生み出すとともに焦げという不純物も生じたようなものか。それでも、不思議と嫌な気持ちはなかった。全身で怒っているのに、呼吸も心も妙に落ち着いていた。暗くて静かで、それでいてとても熱い……。

「……お、おいこいつ、目がイッてね……? まさか、狂戦士症なのか……?」

「いや、違うと思うよ。頭が本当に変になったのかな?」

「……こ、こわれにゃいで、俺だけのセクト……」

「……キモ。もしかしたら、あれじゃないです? キチガイの振りをして逃れようとか……」

「ひひっ、それはありえるうぅ――」

「――もう、終わりだ。お前たちは……」

 俺は、復讐の準備が全て整ったのだと確信していた。
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