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119.再会と勘違い
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なんということだ……。
『ウェイカーズ』の憎い面々がすぐ近くにあるというのに、俺の胸がほとんど痛まなかった。
「……ク、ククッ、ウスノロ……まさか、逃げるのをあきらめるとは……」
「……」
正視するのが辛くなるくらい満面の笑みを浮かべるオランド。
ってか、ちょっと見ない間に随分様変わりしたな。髪の毛はおろか両耳もないし歯も何本か抜けちゃってる。一瞬、これがゾンビに変化した姿なのかと勘違いするほどだった。
「へっ、予想外だぜ、クソセクト。お前のほうから降参してくるなんてな……」
ルベック、相変わらず凄まじい眼光だ。前よりずっと人相が悪くなってる気がする。それだけ人を殺してきたからだろうか。
「セクト、久しぶりだね……」
「……ラキル……」
ラキルが涼し気な笑みを向けてくる。こいつだけは昔とまったく変わらない。
「僕たちのオモチャになる決心がついたのなら好判断だよ。これは推測なんだけど、仲間を失いたくないっていう君のお人よしさが生んだ決断なんだろうねぇ。実際は誰からも信頼されてないゴミムシでしかないっていうのに、昔とまったく変わってなくて安心しちゃった……」
クールな顔してズバズバ言うなあ。でも、何故か裏切られたときほど心に突き刺さらない。
「おいクソセクト。お前ハーレムしてたみたいだけどよ、それってお前が勝手にそう思って勘違いしてただけだってちゃんとわかってるのか? 実際はラキルの言う通り、コケにされてただけなのによー」
「ク、ククッ。ウスノロらしい――いぎっ!?」
ルベックに肘打ちされて痛そうにこめかみ付近を押さえるオランド。
「いいとこなのに、腐ったみかんは引っ込んでろよ。新しいオモチャが来たから、もうてめえはいらねーんだよ」
「……ククッ……か、感謝する……」
「……」
オランド、めっちゃ痛そうなのにルベックにお礼なんか返して、狂ってるんじゃないか? それに、俺を見る目つきがなんかおかしい。苦しみながらもこっちのほうを見て舌なめずりしてるし……。
「――ぷはぁっ……。私にも言わせてくださいっ……」
それまでグレスと唇を重ねていたカチュアが俺の前に出てきた。
「また会いましたね。えっと……名前、なんでしたっけ。存在感がその辺に転がってる石ころみたいに薄すぎて、すぐ忘れてしまいます……」
カチュアが上目遣いでおどけるように言って笑い声が上がる。
「そいつはよー、クソセクトっていうんだよ。黒いオアシス」
「あっ! そうでしたそうでした。ルベック、わざわざ教えてくれてありがとうです。そういえばぁ、そういう変なのもいましたねっ。私、カチュアっていいます。あの……セクトさん、あなたの存在……正直迷惑でした。存在感が薄いのは許せるんですが、時々視界に入るゴミみたいな感じなんですよね。なので今日から人間自体を辞めてもらうことになりますけど……覚悟はできてます?」
「……」
なんの覚悟なんだか。みんな凄く嬉しそうだったが、俺には狭い箱の中で小動物が動き回ってるくらいにしか見えなかった。
「ひひっ……ゴミセクトぉ、今まで散々手を焼かせてきたからには、それなりに楽しませてもらうぞおぉぉ……」
グレスの言葉を皮切りに、なんとも粘っこい視線が俺にまとわりついてきた。こいつら、なんか勘違いしてるみたいだな。みんなの知ってるセクトはもう、どこにもいないっていうのに。
「おいクソセクト、お前さっきから何黙ってんだよ。まず裸になれ。それで手足を切って、イモムシにしてハーレムメンバーのところまで運んでやるから感謝しろ」
「あはっ。彼女たちの百年の恋も一気に冷めちゃうね。恋っていうか、一方的にこのオモチャをからかってただけだろうから、俄然冷たい視線を浴びちゃうんだろうけど。可哀想に……」
「……ク、ククッ。ウスノロの全裸、楽しみだ……」
「……」
オランドの股間が盛り上がってるのは何故だ? 正直ちょっと怖いんだが。
「見てくださいっ。青くなってますよ、オモチャのセクトさんがっ」
「ひひっ。まあ無理もないぃ。これからぁ、いつ狂ってもおかしくない生き地獄が始まるんだからなあぁぁ……」
また勘違いされてしまった。もう飽きてきたし、きりがないみたいだからそろそろネタバラシといこうか。俺がこれから心ゆくまでぶっ壊す予定のオモチャたちに……。
『ウェイカーズ』の憎い面々がすぐ近くにあるというのに、俺の胸がほとんど痛まなかった。
「……ク、ククッ、ウスノロ……まさか、逃げるのをあきらめるとは……」
「……」
正視するのが辛くなるくらい満面の笑みを浮かべるオランド。
ってか、ちょっと見ない間に随分様変わりしたな。髪の毛はおろか両耳もないし歯も何本か抜けちゃってる。一瞬、これがゾンビに変化した姿なのかと勘違いするほどだった。
「へっ、予想外だぜ、クソセクト。お前のほうから降参してくるなんてな……」
ルベック、相変わらず凄まじい眼光だ。前よりずっと人相が悪くなってる気がする。それだけ人を殺してきたからだろうか。
「セクト、久しぶりだね……」
「……ラキル……」
ラキルが涼し気な笑みを向けてくる。こいつだけは昔とまったく変わらない。
「僕たちのオモチャになる決心がついたのなら好判断だよ。これは推測なんだけど、仲間を失いたくないっていう君のお人よしさが生んだ決断なんだろうねぇ。実際は誰からも信頼されてないゴミムシでしかないっていうのに、昔とまったく変わってなくて安心しちゃった……」
クールな顔してズバズバ言うなあ。でも、何故か裏切られたときほど心に突き刺さらない。
「おいクソセクト。お前ハーレムしてたみたいだけどよ、それってお前が勝手にそう思って勘違いしてただけだってちゃんとわかってるのか? 実際はラキルの言う通り、コケにされてただけなのによー」
「ク、ククッ。ウスノロらしい――いぎっ!?」
ルベックに肘打ちされて痛そうにこめかみ付近を押さえるオランド。
「いいとこなのに、腐ったみかんは引っ込んでろよ。新しいオモチャが来たから、もうてめえはいらねーんだよ」
「……ククッ……か、感謝する……」
「……」
オランド、めっちゃ痛そうなのにルベックにお礼なんか返して、狂ってるんじゃないか? それに、俺を見る目つきがなんかおかしい。苦しみながらもこっちのほうを見て舌なめずりしてるし……。
「――ぷはぁっ……。私にも言わせてくださいっ……」
それまでグレスと唇を重ねていたカチュアが俺の前に出てきた。
「また会いましたね。えっと……名前、なんでしたっけ。存在感がその辺に転がってる石ころみたいに薄すぎて、すぐ忘れてしまいます……」
カチュアが上目遣いでおどけるように言って笑い声が上がる。
「そいつはよー、クソセクトっていうんだよ。黒いオアシス」
「あっ! そうでしたそうでした。ルベック、わざわざ教えてくれてありがとうです。そういえばぁ、そういう変なのもいましたねっ。私、カチュアっていいます。あの……セクトさん、あなたの存在……正直迷惑でした。存在感が薄いのは許せるんですが、時々視界に入るゴミみたいな感じなんですよね。なので今日から人間自体を辞めてもらうことになりますけど……覚悟はできてます?」
「……」
なんの覚悟なんだか。みんな凄く嬉しそうだったが、俺には狭い箱の中で小動物が動き回ってるくらいにしか見えなかった。
「ひひっ……ゴミセクトぉ、今まで散々手を焼かせてきたからには、それなりに楽しませてもらうぞおぉぉ……」
グレスの言葉を皮切りに、なんとも粘っこい視線が俺にまとわりついてきた。こいつら、なんか勘違いしてるみたいだな。みんなの知ってるセクトはもう、どこにもいないっていうのに。
「おいクソセクト、お前さっきから何黙ってんだよ。まず裸になれ。それで手足を切って、イモムシにしてハーレムメンバーのところまで運んでやるから感謝しろ」
「あはっ。彼女たちの百年の恋も一気に冷めちゃうね。恋っていうか、一方的にこのオモチャをからかってただけだろうから、俄然冷たい視線を浴びちゃうんだろうけど。可哀想に……」
「……ク、ククッ。ウスノロの全裸、楽しみだ……」
「……」
オランドの股間が盛り上がってるのは何故だ? 正直ちょっと怖いんだが。
「見てくださいっ。青くなってますよ、オモチャのセクトさんがっ」
「ひひっ。まあ無理もないぃ。これからぁ、いつ狂ってもおかしくない生き地獄が始まるんだからなあぁぁ……」
また勘違いされてしまった。もう飽きてきたし、きりがないみたいだからそろそろネタバラシといこうか。俺がこれから心ゆくまでぶっ壊す予定のオモチャたちに……。
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