パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

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117.刻まれた決意

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「殺す、殺す殺す。殺す殺す殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すっ……」

「ルベック……」

「殺す、殺す……殺す殺す殺す殺す、殺す殺す殺す……」

「ルベック、もうすぐだよ。オモチャのセクトのところまで――」

「――殺す……ころ……あ、あ……?」

 ルベックはそれまで、白目を剥いた状態でブツブツと呟きながら歩いていたが、ラキルの台詞によって我に返った様子で周囲を見渡し始めた。既に『ウェイカーズ』の前方には幾つもの墓標が見えてきており、夕陽に燦々と照らされていた。

「もう着いたのかよ……」

「あれから結構歩いたんだよ、ルベック。怒りでかなり正気を失ってたみたいだね。無理もないけど……」

 ちらっと後方を一瞥するラキル。

「……おでの耳があ……ひぐぅ……」

 ルベックに切り取られた右耳付近を痛そうに押さえるオランドのさらに後ろには、カチュアと腕を組んで仲睦まじく歩くグレスの誇らしげな姿があった。

「ラキル、今度は……今度こそはもう絶対に失敗しねえ……。これ以上の屈辱をあのクソ野郎から受けるくらいなら、俺は……玉砕覚悟で突っ込んでやるってんだよう……」

 嵐渦剣を小刻みに震わせながら再び白目を剥くルベック。

「そのときは僕も協力するよ。けど、今度の計画は完璧だしさすがに大丈夫だと思う……」

「……」

 無言でうなずくルベック。ラキルが今回熟慮の末に発表したという計画は、正気を失いかけたルベックだけでなく、怒り心頭の様子だったグレスでさえ異論を一切挟まないほど穴のない完璧なものであった。

 その内容とは、グレスが図書室で提案したように一斉に襲撃した場合、セクトにワープゾーンを出されて逃げられる可能性が高いため、今までのようにある程度接近したところで立ち止まり、ルベックが《電光石火》を使って一人だけで突撃すると見せかけ、あらかじめワープゾーンを二つ出させてから、そのタイミングで全員が一斉に色んな方向からスピカを狙うというものだ。

 セクトがワープゾーンを二つしか出せないのはわかっている上、それらはつながっているため逃げ場がなくなり、こちら側の動きによって相手が墓穴を掘る形になるのだ。

 今までは早く捕まえたいがために猪突猛進だったのが災いしたが、まずルベックを囮にしてセクトに《ワープ》を使用させ、残りのメンバー――グレス、ラキル、カチュア、オランド――が一気に突撃してワープゾーンを回避することさえできれば、セクト側は対処できずに混乱状態に陥り、確実に潰れるというのがラキルの考えだったのである。

「唯一心配なのがよお……あの槍女が意外と強くて、ボスが倒されちまう可能性があるってことなんだが……」

「それも大丈夫。あのボスは中級以上のパーティーが対策した上で戦っても討伐に丸一日かかるくらいタフらしいし、《反発》だってあるから迂闊に大ダメージも与えられない。確かにあの子のカウンターアタックは見事だったけど、それを狙うにはいちいち溜めが必要だし、それだけですぐに倒せるほど甘くはないよ」

「……そうか。それなら今から楽しみだぜ。クソセクト……やつのせいで、俺たちがどれだけ酷い目に遭ってきたか……。頭の天辺から爪先まで、やつに自分がオモチャなんだってことを死ぬほど刻みつけてやる……」

「あはっ。この仕打ちに比べれば地獄なんて生温いんじゃないかって、あのゴミムシに思わせられるくらい、たーっぷり時間をかけて弄らなきゃねっ」

「ク、クククッ……そうだ。ウスノロセクト……ついにお前は俺の救世主となるのだ……ヌガッ!?」

 残った耳をルベックに切り取られ、笑い声とともに地面を転げ回るオランド。

「……お、おにょれ……シェ……セクト……お前が全て悪いのだ……。お前がいないから俺がこんな目に……。早くここへ来て、俺を助けるのだ……お願いだからぁ、しゅぐ来てくりぇっ。たしゅけてええ。ぶぎっ――」

「――今ぁ、なんか踏んだかあぁぁ?」

「気のせいじゃないですかぁ?」

「「ちゅうぅ……」」

 オランドを踏み越えたあとで唇を重ね合うグレスとカチュア。

「……シェッ、セクトオ……お、俺だけの……セクト……上手に、巧みに……それはもう見事に弄ってやるから、早く来るのだぁ……」

 地面を這うオランドの両目は真っ赤になり、涎と血と泥にまみれた口元には笑みが浮かんでいた……。
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