パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

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83.消失と隠蔽

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「いなかった、じゃねえよ!」

「ふざけてるのかな?」

「うごぉ! ぎげえぇ! もぎゃっ!」

 弱々しい暖炉の火だけが頼りの仄暗い小部屋の中、痛ましい音や声がしばらく響き渡る。

「ぐぎゃっ! ぶびゃあっ!」

 殴られ、蹴られるたびにオランドの腐った肉が削げ落ち、血が飛び散り、骨が曲がって醜く変形していく。ゾンビとなった彼に対するルベックとラキルの暴力は凄まじく、彼の体が元に戻ったあとも、ピンク色の泡を吹きながら失禁、失神してもまだなお続いていた。

「――ふうぅ。ひひっ、もうやめとけぇ……」

 それまで軋むベッド上でカチュアと唇を重ねていたグレスが眠そうな顔で口を開く。

「「は、はいっ」」

「無能でも一応オモチャだからなぁ。ゴミセクトを捕えたら生かしておく必要もないがあぁ」

「グレス様、私早くオモチャが欲しいですぅ」

「ひひっ……もうすぐ手に入るはずだったのにごめんなぁ、カチュアぁ」

「グレス様ぁ」

「「ちゅうぅ……」」

 グレスはカチュアと唇を重ねたあと、ラキルを睨みつけた。

「ラキルぅ……お前がここにセクトがいると嘘をついたんだろぉ……?」

「え……?」

 その場に、俄かに緊張の糸が張り巡らされていく。

「ぼ、僕は嘘なんて……」

「グレス様、ラキルは嘘なんてつかねえよ。それこそ、オモチャのクソセクトを弄るときくらい――」

「――黙れよぉ、このクソ無能どもがぁ……」

「「……」」

「グ、グレス様ぁ、仲間同士で争うのはおやめくだ――」

「――ちゅうぅっ」

「ん……んんっ!?」

 グレスに唇を重ねられ、まもなく目を見開いたカチュアの顎から血が滴り落ちる。

「それ以上何も言うなぁ……」

「……」

「ラキルぅ、ルベックぅ……ここでどっちが正しいか喧嘩で決めるかぁ? お前たちの得意技だろうぅ」

「仕方ねえ、ラキル、やるか……?」

「待って、ルベック。今わかったよ。なんでセクトが急にいなくなったのか」

 ラキルはうつむくと、ほんの少しだけ口元を綻ばせて薄暗い笑みを浮かべた。



 ◇ ◇ ◇



「セクトたちの気配が消えた、だと? どういうことなんだ……」

 足元だけ霧が漂う古城の回廊、小部屋に通じたL字通路前、パーティー『ソルジャーボーンズ』のリーダー、カルバネが目を見開く。彼にはBランクまで磨かれた高い気配察知能力があるため、中にいたはずのセクトたちの気配が忽然と消えたことに面食らっていたのだ。

「カルバネさん、セクトはあいつらにやられちまったんじゃ?」

「タイミング的にもその可能性が高いですよね。でも、これでよかったんですよ」

「……合掌……」

「いや、お前たち早まるな。そんなはずはない。『ウェイカーズ』はこっちの要求をあっさり跳ねのけたやつらだぞ」

「じゃ、じゃあ自決とか?」

「それはありえそうですね。あんな恐ろしい連中に捕まるくらいなら死んだほうがマシでしょうし……」

「……んだ……」

「どっちかといえばその可能性のほうが高そうだな。気になるのはセクトの傍らにスピカしかいなかったことだ。いずれにせよ、やつは死んだ。あとはバニルたちを見つけ――」

 小部屋から『ウェイカーズ』の面々が出てきたことがわかり、はっとした表情を浮かべるカルバネ。

「――急げ。ここから隠れるぞ……」

『ソルジャーボーンズ』の四人は通路からなるべく遠く離れると、壁に変化したザッハの後ろに並ぶようにして隠れ、さらに用心深くアデロが《幻視》によってそこに誰も存在しないという偽りの景色を作り出し、こちらの方向に気が向かないよう、ピエールの《呪言》によって運さえも味方にするという徹底ぶりだった。

 まもなく通路の前にラキル、ルベック、オランドの三人が現れ、しきりに周囲を見渡していた。

「この辺をさがせば必ず見つかるはず。急ごう」

「おう。いいかオランド、頼りにしてやるから必ずさがし出せよ。じゃなきゃ……わかってるよな?」

「わ、わわっ、わかったからぁ、髪を放してぇ……」

「はぁ? 知るかよハゲ。まあでも、そんなにお前が望むんだったら……叶えてやってもいいぜ?」

「ぎょええぇっ!」

 ブチブチという痛々しい音とオランドの悲鳴が周囲に響く。

「――まずいな……。やつらはおそらくバニルたちをさがしてるんだろうが、セクトを始末したことで俺たちも標的になってるかもしれない。慎重にここから離れるぞ」

「「「はいっ」」」
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