パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

文字の大きさ
上 下
80 / 130

80.急転する事態

しおりを挟む
 ……あれからかなり経ったように思う。《ステータス》で確認すると、やはり夜の刻から朝の刻に切り替わっていた。

 俺は小部屋の中でしばらくの間、《夢椅子》を繰り返し使うことで、立ったまま半分寝てるような状態で待っていたわけだが、ミルウはとうとう戻ってこなかった。一体どういうことなんだ……?

 Aランクの気配察知能力を使ってみたものの、周辺には誰もいない。ってことは割と遠くまで行ったってことだろうが、トイレならすぐ終わらせて帰ってこられるはず。しかし、妙なことが立て続けに起こるな。例のパーティーが急に現れたことと何か関係してるんだろうか……。

「――きっとミルウに何かあったのよ。あたしが様子を見てくる!」

「私も一緒に……」

 ルシアとバニルがたまらずといった様子で立ち上がった。

「俺も……」

「セクトはスピカと一緒にいなさい! ……ムラムラしても、我慢しなさいよねっ!」

「俺は動物かよ……」

 病気のスピカを襲うわけないだろ……。

「ここで少しだけ待っててね、セクト。……私、信じてるから」

「……おいおい、バニルまで……」

「じょ、冗談っ……」

 まだ冗談が言えるうちは大丈夫なのかな。みんな内心不安なんだろうし、それを打ち消したいってのもあるのかもしれない。俺も一緒に行きたいっていうのが本音だが、ここにスピカだけ置いていくわけにもいかないし仕方ないか。彼女を背負って行く方法もあるがそれはとんでもない話で、自ずと起きるまではそっとしておいてやりたい。

 バニルとルシアならモンスターが出ても上手く立ち回ってくれるはずだし、ミルウが行きそうなところも見当がつくだろう。もし二人でも見つかりそうにないなら、そのときは俺が行けばいい。

「……」

 俺はスピカのおでこに手を当てた。大分下がったな。まだ微熱はあるけど……。それでも、この様子なら回復までもう少しのはずだ。



 ルシアとバニルの気配が周囲から消えてしばらく経っても、彼女たちは戻ってこなかった。一体何が起こったっていうんだ。まるでミイラ取りがミイラになってしまったかのようだ。

 ……これは絶対おかしい。彼女たちの身に何か起こったに違いない。早く助けてやりたいが、スピカが起きないと始まらない。彼女さえ起きれば、《招集》によってここにパーティーメンバーを呼ぶことができるんだ。もう少し経てばスピカの容体が回復するかもしれないし、焦らず待つことにしよう。

「――うっ……?」

 ゾワッと全身の毛が逆立つような嫌な予感がした。まただ。またパーティーが近付いてくるのがわかる。ただ、今度はいきなりではなく、やや遠くから徐々にこっちのほうに迫ってくる感じだ。

 大丈夫だ。例のパーティーだって、『ウェイカーズ』かと思ったが全然違っていた。こんなにマップが広いのに、そんなに簡単にやつらに出会うわけもない。

 って、また男四人に女一人か。いやいや、ここまではよくあるパターンだろう。

 一人は赤い髪を逆立てた吊り目の男で、頬に短剣のタトゥーがあり……二人目は……青い前髪の一部で片方の目が隠れた男……三人目……灰色の長髪をした、みすぼらしい格好の男……四人目……オレンジ色の短髪の……筋肉質な男……。ご……五人目……とても長い黒髪の……俺の初恋の女性……カチュア……。

「……」

 信じたくなかった。こんな最悪の状況でやつらと対峙することになるなんて……。紛れもなく、こっちに近付いてきているのは『ウェイカーズ』だった……。

 というか、どうしてここに俺がいることがわかったんだ。やつらのうち、誰かが探知スキルでも持ってるのか……? 俺はこれから、病気で寝込んでいるスピカを守りながらやつらと一人で戦わないといけないということか。

 ……ダメだ、どう考えたって無謀すぎる……。

「スピカ、頼む。起きてくれ……」

「……ん、んぅ……」

 無理だ。しばらく起きそうにない。こうしている間にもどんどんやつらが迫ってきているのがわかる。スピカを無理矢理起こして《招集》してもらったとしても、みんな戦う準備とかできてないだろうし下手したら全滅することだってありうる。

 俺が『ウェイカーズ』の連中に勝てる確率を《成否率》で占うと、まだ何も出なかった。そりゃそうか。熟練度がFからEに上がっているとはいっても、戦う直前でもなきゃ判断はできないんだろう。

 一か八かで封印のペンダントを外して狂戦士症になるという手もあるが……実行する気にはなれない。もし失敗したらどうするんだ? スピカを死なせてしまったら……? 嫌なイメージが次々と脳裏に浮かんでくる。どうする。どうしたらいい。もう、やつらの足音が聞こえてきそうなところまで迫ってきている……。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...